第341話 貴族に囚われている娘を奪還せよ!!
目を覚ますと息苦しくて死にそうだった。
「~~~~~~!?」
目玉をグリグリ動かし、状況を把握する。薄暗いが、なるほど。これは俺の長年の経験で分かった。というか、聖女特有の匂いで分かった。
俺の顔面は、どうやらフォルのむっちむっちのフトモモの上にいるらしい。逆膝枕されていた。更に言えば、修道服のスカート部分で顔面を覆われている、というか突っ込んでいる状況なので、息苦しいという状況だった。
何故こうなった……思い出せん。
「あ~にぃ~さぁ~まぁ~ん♡」
「~~~~~~!!」
いやだから声が出せねえって!
ジタバタ暴れると、悟ったフォルは離れてくれた。
「……お、お前な……」
「兄様っ♡」
抱きついてくる聖女・フォルトゥナ。
長い銀髪が揺れる。
ついでに青と桃の瞳も。
「どうした、今日は甘えん坊だな」
彼女の小さな頭を撫でながら構ってやった。銀髪がフワフワのモコモコだ。気持ちよさそうに目を細め、しかもゴロゴロとしやがって、お前は猫か。
「だって今日は、姉様もリースも出かけているんですよ。二人きり! 二人きりです! ですからですよ~。やりたい放題ってワケなのですっ」
「お前の言い方だと何だかイヤらしく感じるな」
「というわけですから、貴族に囚われているという娘さんを助けに行きましょう」
「はい?」
俺は首を傾げた。
フォルが何を言っているのか理解できなかったからだ。貴族に囚われている娘さん?
「なんのクエストだよ」
「ええ、実は『緊急クエスト』なのです」
★★★ ★★★ ★★★ ★★★
【緊急クエスト】
【詳細】
アドミラル家の当主
『ラグラス・アドミラル』から
少女セルリアを取り戻せ!
通常報酬:エロス通行証
特別報酬:1,000,000セル
★★★ ★★★ ★★★ ★★★
「うぉ、なんか出て来たな。緊急クエストか……む、特別報酬付きじゃないか、これ」
「そうなのですよ。しかもこれって通常報酬では『エロス通行証』が手に入るのです」
「マジかよ……。なんかエロそうな国だな」
なんとなくそう思った。
勝手なイメージだけどな!
「わたくし自身、一度も行ったことがないので分かりませんけれど、世界ギルドの方からの噂によれば、多分、そのような国ではありませんね。真面目な国だとは思いますよ」
「なんだ、ロマンがないなー」
「もぉ、兄様。そういうのをお求めになるのでしたら、わたくしが兄様を骨抜きにして差し上げますよぉ~♡」
修道服のスリット部分をヒラヒラとさせるフォル。悪魔の誘惑……いや、ヘンタイ聖女の誘惑だな。
「おい、ヘンタイ。とりあえず、その緊急クエストとやらを受けるぞ」
「本当ですか? いつもの兄様なら超絶面倒臭いの一言ですのに……どういう風の吹き回しなのです?」
子供の様な目で見られ、俺はちょっと照れた。
「金だよ。……最近いろいろ使いすぎちゃってさ、丁度お金が欲しかったんだ」
「そうでしたか。因みに、このクエストは世界ギルドから発行されているものですから、少なからず『スターゲイザー』に繋がるものとなっております。つまり、ラグラス・アドミラルが何かしらの情報を持っている疑いがあるのです」
「なるほどな。敵であるスターゲイザーの情報ともなれば、そりゃ宝石以上の価値がある。しかも、クエストを達成すれば報酬も貰えるのか。最高だな」
うんうんとフォルはご機嫌に頷き、腕に絡みついて来た。いろいろ感触がっ。
「さあ、善は急げですよ、兄様」
そんな極上の上目遣いで見られると、こそばゆい。だが、これはこれで悪くない。ていうか、このまま時が止まってしまえばいい。
「そうだな、たまにはフォルと二人きりで冒険も悪くない。寧ろ天国だ」
「嬉しいです……♡ ですから、わたくし、あわよくば兄様と…………」
語尾が弱々しくて聞き取り辛かったけど、その意図は理解できた。
「……ば、ばかっ。朝っぱらから何を言っているんだよ、お前は……そんなモンとっくだろ」
「えへへ♡」
更に上機嫌になったフォルを連れ、俺は外へ出た。さあ、行こうか【レメディオス】の何処かへ! ……って、何処へ行けば良いんだ?!
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