第337話 ギガントゴーレムMARK85、襲来
神聖国ネポムセイノの兵器襲来。
まさかのまさか、本当に最新兵器を向けて来やがった。いやいや、あのたかだかアレクサンダーひとりの為に大袈裟すぎやしないか!
そんな価値があの貴族にあったのか……?
そして、その兵器の名は――
【ギガントゴーレムMARK85】である。
大事な事なので、敢えてもう一度言おう。
【ギガントゴーレムMARK85】である。
「100体か……」
国の周辺を囲むように進軍してくるバカでけぇゴーレム。まるでどこかの世界を滅ぼしかけたという巨神兵器だな。あんなモンに踏み潰されたら、レメディオスはひとたまりもない。てか、眼とか口からビームを放つのではなかろうな……。
なんて危惧していれば――映し出されている映像に乱れが生じ始めて来た。
「ま、まさか……」
「高エネルギー反応です!!」
モニタリングしてくれている忍者の女の子、アゲハが慌しく叫ぶ。因みに彼女はポニーテールで可愛い! いや、それはいいか。
おいおい、高エネルギー反応ってそりゃ――確かに、あのゴーレム達の眼が赤く、不気味に輝き始めていた。
「サトル、まずいわ……」
「メサイア、分かるのか」
「ええ……あのゴーレム、撃ってくるわよ!」
余裕のない顔でメサイアは断言した。その深刻すぎる表情からして、マジらしい。こんな顔の彼女は初めて見た。……やべぇな。世界が終わる。
「……っ」
フォルでさえ歯ぎしりして、状況を見守っていた。
「…………」
目を瞑って強く祈るリース。
このままじゃ、ダメだ。
全てを焼き尽くされてしまう。レメディオスは荒野と化すだろう。大切な人さえ失う。……させるわけねぇ!! そんな事、この俺が絶対に許さん!! 俺はもう誰も失うワケにはいかない。誰一人欠けさせやしない。
だったら――。
「…………フフ、フハハハハ」
「あ、兄様……?」
「クハハハハハハハハハッ!!」
「どうしちゃったのよ、サトル」
「ウハハハハハハハハハハッ!!!!」
「サトルさんが壊れちゃったのです……」
フォル、メサイア、リースから心配されるが、俺は正気だ。ノープロブレム、問題ない。
「みんな、このクソみたいな絶望的状況だけどな……覆してやるよ!! この俺がな!」
「おおおおおおお!」「さすがサトルさんだ……」「こんなゴーレムだらけなのに!?」「すげぇ、本当に出来るのか?」「これを撃退すれば、彼はもう神だろ」「いや、聖者の彼なら出来る。今までも数々の奇跡を我々に見せてくれたのだからな」「そうだそうだ!」「こっちには女神と聖女とエルフもいるんだぜ」「ああ、サイネリア様も今頃……」「気合上げていこうぜぇ!!」「っしゃぁぁぁらぁぁぁ!!!」
ざわざわと、ギルドメンバー達の士気も猛烈に上がった。ああ、勝ってやるさ、この戦いにな!
「フォル、聖域展開だ。このレメディオス全体に張り巡らせるんだ」
「なるほど! 物理も魔法を無力化する聖域を使うのですね! さすが兄様です。わたくし、恐怖で全然気づきませんでした」
そうだろうな。
恐怖もあっただろうが、フォルは普段、物理スキルばかり使うから忘れがちだが、聖女スキルの支援補助系魔法も使えるのだ。
「頼む」
「うけたまわりです! いきますよ~!」
フォーチュンへ祈りを捧げ、それを展開した。
『グロリアスサンクチュアリ!!』
一気に広がる白い靄。バリアのようなモノが駆け巡っていく。壁さえ突き抜けてな。
この靄が聖域そのもの。頼りなく見えるが、確実にバリアの類なのだ。強固で決して破れない絶対聖域。
やがて聖域は国全体に広がった。
「すげぇぞ、映像で見てもレメディオス全体が白く包まれているのが分かる。これが聖女の、幸運の力……さすがだぜ、フォル」
「いえいえ!」
ただし、グロリアスサンクチュアリ発動中、フォルは一切動けなくなる。それが少々のネックではあるが今は問題ないだろう。
それから、
ギガントゴーレムMARK85から一斉に赤い業火が放たれた。100体の眼と口から超魔導砲。……ちょっとマテ。両方から出るのかよ。地味に怖ェ。
眼からも口からも撃つのかよ、あのゴーレム共!
飛んでくる赤い波動は、フォルの展開したグロリアスサンクチュアリに激突、聖なる壁が完全防御して敵のビームを無力化していく。
しゅるしゅると赤い光が飲み込まれていく。こりゃスゲェ。さすが聖女の力は万能だな。これなら――!
「フォル、このままを維持!」
「はいっ!」
今も尚、波動砲は撃ち続けられている。
防御だけじゃダメだ。
次の作戦を考えねば……。
「なんて激しい揺れだ……巨大地震レベルだぞ、これは」
ぼむぼむが汗を垂らしながら机を押さえる。カタカタ家具やら何やら振動しまくって、如何にヤベェ、ヤバすぎる攻撃が加えられているか分かる。
もしも『グロリアスサンクチュアリ』がなければ、レメディオスは壊滅していただろう。
ああ、クソ。こんなレメディオス全体がガタガタ状態になるとは、状況を知らんヤツからしたら恐怖でしかないな。
――とにかく。
クソビームは、聖域で真剣白刃取り。
この先は……!
どうするべきか頭をフル回転させていると――
「……その先は安心して」
そんな凛とした声がした。
こ、この声――まさか!!
いつも応援ありがとうございます。
もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ぜひブックマーク・評価をお願いします。感想もお気軽に書いて戴けると嬉しいです。




