第336話 神聖国ネポムセイノの最新兵器
「でも長くなるからまた今度」
なんて言われて、俺はコケそうになった。
話さないんかいっ。
「いや話せって。気になって眠れないじゃないか」
「まだ起きたばかり」
「地味な揚げ足を取ってくれるな。まあいい、更なる未来と過去の話はまた今度な」
「うん。ちょっとだけ話すと――」
「結局話すのかよ!」
トーチカの扱い方が難しいな。
こんなんだっけな?
「あたしとネメシアは、この時代の人間ではない」
「なんだって……」
「よく考えてみて。【レッドウォー】以前から一年しか経過していない。そんな短期間で成長したネメシアとあたしが現れる筈がない」
確かに、そう言われてみれば。てか、一年しか経過していなかったのかよ。……なるほど、ネメシアもトーチカも成長しすぎているなと思ったが、別の時代から飛んで来たってところかね。
「お察しの通り、あたしは未来からやって来た。多分、ネメシアも」
「そうか」
今のところそんな短い返事でしか答えられなかった。いきなり未来人と告白されても、リアクションが難しいって。ただでさえ、今未来に生きているんだからな、俺。
「ごめん、変な話をして。でもこれ重要。……スターゲイザーと戦うなら必要な情報」
「話してくれてありがとうな、トーチカ。だが、今は神聖国ネポムセイノが攻めてくるそうでな。スターゲイザーは後回しだ」
なんの話? と、トーチカは首を傾げた。
「これも話すと長いんだがな――」
◆
「――理解した。あたしは、ネメシアとエコを守る。だから戻るね」
「おう、向こうに聖女もいるけどな」
「うん、知ってる。でも今日は本当の貴方に逢いたかったから」
席を立つトーチカは、俺の方へ。
俺も立ち上がる。
「行くのか」
「行く。……その、あたし、ヘデラが好き」
ぼそっと言われて、俺は不意打ちを食らった。……ま、まさかトーチカがそんな言葉を発するとはな。思わず顔が熱くなっちまったぜ。これまた油断していると、トーチカの方から抱きついて来た。
「どうした、今日は妙に甘えん坊だな。いつもならやらんだろ」
「今日は特別」
ネコミミを撫でてあげると、トーチカは気持ちよさそうに目を細めた。……こりゃ、ぼむぼむが娘を溺愛する気持ちも分かるかも。昨晩の酒の席で、アイツは娘の自慢ばかりだった。……って、そうか、アイツもトーチカが未来から来たって知っているんだよな。
ぼむぼむが俺の所にすんなり来れたのも、それが理由だろう。ずっと前から分かっていたのかも。過去や未来が。
「……またね」
「おう」
名残惜しそうにトーチカは、窓から飛び去った。
――って、窓から去るなよ!
◆
会議室へ入ると、物々しい雰囲気に包まれていた。
「どうした、ぼむぼむ」
俺は、トーチカの親父、無駄にマッチョ男に話しかけた。険しい顔で俺を見る彼は、腕を組み唐突に笑った。
「ガハハハハハハハ……」
「なぜ笑う、ぼむぼむよ」
「いや、笑うしかないだろう。神聖国ネポムセイノだ。昨晩、アレクサンダーがこの屋敷を訪ねたそうだな」
「ああ、事実だよ。屋敷とサイネリアを取り戻しに来てな。俺とメサイア達は呪いに掛けられそうになったぞ。危うく俺の仲間の胸を触られそうになったしな、許せん」
「……ああ、おかげでレメディオスは壊滅危機だ」
「まさか」
「そのまさかさ、神聖国ネポムセイノが本当に攻めて来ているそうだ」
遠い目でどこかを見つめるぼむぼむ。
世界ギルド・フリージアの仲間が慌しく報告する。
「報告します!! 神聖国ネポムセイノの最新兵器と思しき物体を捉えました! 映像、出ます!」
ふわっと画面が現れた。
なんぞ、この最新技術!
聞くところによると、報告してくれた忍者風の彼女の『偵察衛星スキル』らしい。宇宙空間に使い魔を放っているらしく、日々スターゲイザーの動向を探っているのだとか。有能すぎだろ。
そして現れる映像。
――そこには、
レメディオスを囲むように大量の兵器が。
「……これは」
おいおい、ウソだろ……!
ありえんだろ。
思えば……アレは、そういう事だったのかよ。
焦っていると、ぼむぼむが怪訝な表情で言った。
「サトル、アレを見覚えが?」
「あんな巨大なの、忘れるワケがない」
一緒に映像を見守っていたメサイア達も頷く。
「これはアレね」
眉を顰める女神。
「ええ、アレですね」
面倒臭そうにする聖女。
「ひゃー…」
驚嘆するエルフ。
世界最高峰の霊山『アヴェレスト』にいたアイツじゃねぇか!!! 間違いなくアイツだよ、アイツ!!
いや、ちょっと形状とか違うけど!
更に大きくなっていますけど!!
【ギガントゴーレムMARK85】
「……マーク85ォ!?」
どんだけ改良されてるんだよ。
「サトル、あれはな、元々は炭鉱ボスモンスター【SHEEPシープ-RX87-2】が初期型なのだよ。それが進化してギガントゴーレムとして改良されまくった結果がアレだ」
「……マジかよ」
黒いゴツゴツのロボットのようなゴーレム。岩ってか、鋼っていうか……もしかして、あのボディは世界最強の硬度を誇る【エクサダイト】ではなかろうか。
なんなら自爆可能かもな……。
「何体いるんだよ……世界を滅ぼせるレベルで侵攻してないか、これ」
「――ざっと100体ね」
メサイアが答えた。
女神のスキルで数を把握したらしい。
……100体か。
どんだけ作ったんだよ!!
ていうか……ここまでやるか普通!
神聖国ネポムセイノ、ガチだったのか。
超絶面倒臭がりの俺は、参っていた。
頭を押さえて、これをどう対処すべきか悩む。
フォルが俺に気づいて、
「兄様、大丈夫ですか?」
と優しく声を掛けてくれる。
この声が唯一の癒しだ。
そして、この状況に物申したい。
いや、言わせてくれ。
「めんどくせぇ……」
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