第334話 呪われし赤い手袋 - ヘンタイ貴族から守り切れ!! -
神聖国ネポムセイノの警告文を突き付けてくるアレクサンドリアの息子、アレクサンダー。コイツは、屋敷とサイネリアを取り戻すために、わざわざ他国の力を借りて戻って来たのか。
「そうか。けど、お前の親父は世界支配者に協力していた男。敵だからな、その事実は曲げられないし……この屋敷を引き渡す気も、大切な仲間であるサイネリアも、はいどうぞと渡すワケねぇだろ」
俺は、アレクサンダーが手に持っている紙を奪った。それから――
「こんなものォ!!」
ビリビリビリビリっと破り捨てた。
「ああああああああああああああああッ!!! きききき貴様、なにを!! これは宣戦布告と受けとてもいいだぞ!!」
「好きにしろ。神聖国ネポムセイノだか何だか知らんけどな、第9998代皇帝はありえんだろ。そんなアホはいねぇよ」
「……やってしまったな。貴様はやってはならん事をやってしまった」
「なんだと」
「まあいい。精々あと三日の余生を過ごせばいい。三日後だ……三日後に神聖国ネポムセイノから総攻撃が始まるぞ。最新兵器でこのレメディオスは焼き尽くされるのだ……」
ニヒヒと不気味に笑うアレクサンダー。マジなのか? 三日後にその神聖国ネポムセイノから本当に攻撃が?
「……分かった」
「ほう、潔いのだな。その潔さに免じて、今ならサイネリアの居場所を吐けば、お前たちの命くらいは助けてやらんでもない」
「そうだな、じゃあ――」
俺は拳を握り締め……
「出ていけええええええ、このクソ貴族!!」
アレクサンダーの顔面に怒りの鉄拳をお見舞いした。
「げふぉふぉふぉおおふぉおふぉふぉふぉ!?」
ごろごろ転がっていくアホ。
誰が居場所を吐くか。
てか、居場所知らねぇし。
「ちなみに、わたくしは知っていますよ」
フォルは知っているらしい。それでフォルを訪ねて来たってところかね。ま、俺がいたから情報漏洩は防がれたワケだ。とはいえ、フォルも居場所を吐くとは思えんがね。
「もちろん、サイネリアの居場所は言いません。仲間を売る真似なんて絶対に出来ませんよ。……でも、神聖国ネポムセイノの攻撃は本当だと思います……兄様、これからどうされるのですか?」
不安気に俺を見つめるフォル。
「……」
もちろん俺は……
なにも考えていなかったワケだが。
「……ま、まさか、なんの考えも無しに彼をぶっ飛ばしたのですか……」
「……あははは」
「う~ん、仕方ありませんね。でも、それでこそ兄様なんです。わたくしは、そういう仲間思いな兄様が大好きなんです」
「そりゃ嬉しいが、どさくさに紛れて俺の腹筋をペタペタ触るなよ~、ヘンタイ聖女」
「えへへ……♡」
えへへって……。
「……くっ、おのれぇ……」
あ、アレクサンダーが立ち上がった。一応手加減していたとはいえ、あの短期間でよく意識を戻したな。
「もう許さん! せめて呪いを掛けてやる……!!!」
「呪いだと……!」
アレクサンダーは懐から『赤い手袋』を取り出した。……なんだあの不気味な装備。どうやら、武器類に属するアイテムらしい。千里眼で分かった。
それを手に嵌めて、アレクサンダーは驚くほど素早い動きで、俺の方へ――違う。フォルの方か!
彼はフォルの胸にタッチしようとして――って、そこを触れるな!! そこに触れていいのは、この俺だけだ!!
「ふざけんなああああああああッ!!」
俺が阻止しようとしたが、フォルも自分が狙われている事に気づいて即座に回避した。そうか、俺が出るまでもなかったか。
「ちょ、どこを触ろうとしているんですか、このヘンタイ貴族!」
「フフフ……これは、相手の心臓に呪いを掛ける魔道具でね。当然、胸に触れなきゃならんのだ」
下衆のように笑うアレクサンダーの表情はヤバかった。てか、コイツ、単にフォルの胸に触れたいだけじゃねぇか!?
「オラオラオラオラオラ!!」
と、手を伸ばしてくるクソ貴族。
こいつう!!
いやだが、なんて俊敏な動き……あの赤い手袋の効力か!? けれども、フォルは武闘派聖女。接近物理最強の彼女は、貴族の攻撃を簡単に躱す。
「……遅いですね。それでは、わたくしの胸には触れられませんよ。と、いいますか……触れていいのは世界でただ一人、兄様だけなのです!」
修道服越しでも分かる豊満な胸。あれを自由にしていいのは、この俺だけ!! ……ってそうだったのか、知らなかったぞ!
華麗にバックステップするフォルは、噴水を飛び越えて着地。距離を取っていた。俺も追いかける。
「くっ、聖女フォルトゥナ……なんという動きだ。噂に違わぬ聖女だな」
ギリッと歯ぎしりするアレクサンダーは、フォルの強さを認めた。まあ、彼女が反撃しないのも、ヤツを殺しちまうからだろう。
「くそう、諦めるしかないか」
どうやら諦めたようだな――と、思われたその時。
「サトルー!」
「サトルさぁぁん~♪」
でろでろに酔ったメサイアとリースがこちらに接近していた。……しかも、あのアレクサンダーの近くに! まずい!!
その声にアレクサンダーは、顔を振り向かせ……ニヤリ笑った。しまった!!
「あの二人だな……」
「てめええええええええ!! その二人に手を出したらぶち殺すぞ!!」
「もう遅い……フハハハハ!!!」
ヤローは、赤い手袋を嵌めた状態でメサイアとリースに接近していく。まずい、あの手袋の効果で素早さがアップしているらしい。なんて移動速度だ。
「この野郎ォ!!」
なんとしても二人を守る……!
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