第34話 雷の騎士 - ポンコツ騎士爆誕 -
快晴の朝――いきなり、落雷。
「なんですとー!?」
小屋の外に雷が落ちたようだが……。
まさか、レイドボスの奇襲か!?
まさかな……?
「ど、どうして雷が落ちてきたのかしら……レイドボスじゃないわよね」
と、メサイアが俺の思ったことを口にしてくれた。
気になったのか、窓から外の様子を伺っている。
「どうだ? 外に何かいるのか?」
「……うん。砂埃のせいでよくは見えないけど、あれは人間ね」
レイドボスではないのか?
いや、アルラトゥは人型だったし、有りえなくはないのか。
ああ、もう勘弁してくれ。
「よし、もう面倒だ。放置しておこう。いいな、みんな! 俺は、フォルが愛情込めて作ってくれたホットケーキ食べたいんだよ」
「嬉しいです、兄様♡ はい、あ~ん♡」
「おう、もぐもぐ……。うめぇ~! 涙が出るぅ~」
「あぁっ、フォルちゃんいつもいつもズルいのです! あたしだって、サトルさんにあ~んしてあげたいです!」
リースからもホットケーキ(本人食べかけ)が向けられた。
なんたる僥倖!
「ありがとう、リース。では、遠慮なく――」
リースの食べかけを戴こうとしたその時、
小屋の扉が勢いよく開いた。
「邪魔させてもらうぞ!!」
玄関口から、金髪ロングの騎士が現れた。
黄金の髪が星のようにキラキラ輝いている。ふつくしい……。
いや、だがまて。
ノックもなしに勝手に入ってくるなよ!?
「リース、美味かったぞ」
「はい~♪」
「そこの男、無視をしないで戴きたい!」
おい……この金髪騎士、勝手にテーブルの前に座ったぞ。
「ほう、これはとても美味しそうなホットケーキ……」
――とか言って、突然、フォルのホットケーキをガツガツ食いだしやがったぞ、この騎士。あぁ、俺の分まで……! こ、この……食べ物の恨みは恐ろしいぞ!!
「おい、あんた。勝手に人の家に上がり込んで、しかも人の朝食横取りしやがって……なんだよ」
「もぎゅれいひま! ふぁたしは……ぼふぼふ」
「飲み込んでから喋れ!」
「ごっくん――失礼。大変、美味しゅうホットケーキだった。ありがとう。そして私は、雷の騎士『カローラ』と申す者。……話は聞いている。あなたがサトルだな」
「雷の騎士だって? そうか、あの炎や氷の騎士の仲間ってところか。……どいつもこいつも、レイドボスのドラゴン討伐はどうしたんだよ!?」
「それがだな、つい最近、ローテーションが変更されて……二週間おきに戦地へ向かうことになった。現在は、『光の騎士』と『闇の騎士』の二名が攻略に向かっているところ。我々が次に戦地へ赴くのは、その後ということだな。それまでは、王の命により、花の都の警護というわけだ」
……そうか。
道理で、炎も氷も現れたワケだ。
あいつら、暇だったんだな!?
「で、カローラだっけ……。あんたは、何しにウチに来たんだよ」
「アーカム家の……炎の騎士を倒したと聞いた」
「またそれか……。そいつなら、二度ほど倒したけどな」
「やはり、あなただったか」
「まさか……氷の騎士のように、結婚してくれとか言わないだろうな。勘弁してくれ」
「いいや違う。それは確認だけだ。
私はただ、リースに会いにきただけ」
「ふーん。リースにね……って、えぇ!? リース?」
「久しぶりだな、リース。
チャルチがリースらしきエルフを見かけたと言っていたので、もしやと思ったが……【アヴァロン】を追放されてから本当に旅をしていたとはな」
「……お姉ちゃん」
お姉ちゃん!?
リースが、あの金髪騎士を残念そうに見つめている。
なんで、残念そうなんだよ。
「お、おい、リース。この金髪ロングの騎士って……」
「はい……あたしの姉です」
「まじ?」
「はい……まじです」
まじだった。
「へえ、リースにお姉さんがいただなんてね。驚いたわ」
全然驚いてないメサイア。
むしろ、ホットケーキをもしゃもしゃ頬張っている。驚く気全くないだろお前。
「そういえば、よく見ると耳が尖っておられますね。あと、このエルフ独特の気配、あの大きな胸……間違いありませんね」
フォルがそう補足を。
ふむ。確かに、あの胸は大きいな。
どうやら全て事実らしい。
「サトルさん。姉はガサツで、大雑把。部屋の片付けもできないし、御淑やかしさの欠片もありません。空気も読めなければ、人の心、家や部屋にズカズカ入るようなタイプです。どうかご寛容にお願いします……ね」
ひでえ言われようだ……!
さすがにそこまでボロクソだと、ちょっと同情しちゃうな。
「お、おい。リース。一応、姉なんだろう。そんな言わなくたって」
「サトルさん残念ですが、全て本当の事なんです……」
あー…あの目。
死んだようなあの目は、これまでの体験を物語っている。
「で、カローラ。あんたリースに会いにきたとか言っていたが、それだけか?」
「ああ……今のところはな。だが、忠告もしに来た。サトル、お前はこれから『ビフロスト』へ向かうのだな。聖者になるために」
「そうだ。さっさとレイドボスをぶっ倒して、ゆっくりするんだよ。それが何か?」
「そうか。だったら、ビフロストへ向かうな。今の生活を保ちたいのならな」
「なんでだよ」
「いいだろう。理由を知りたければ……ホットケーキよこせください」
「あんたな……。おい、フォル。ホットケーキを追加で作ってくれ」
「お任せください~。食べられてしまった兄様分も作っておきますね。ちなみに、兄様のには、わたしくしの愛情を仕込んでおきますね♡」
「おい……。俺をこれ以上にムキムキにする気か!?」
「うふふ~♡」
うふふ~♡ じゃな~い!!
ええい……!
この脳筋聖女には、今度、お尻ペンペン追加で3000回だな。
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