第330話 頂点の力 - 魔法スキルを超えるスキル!? -
ドラゴン聖女の相手は、フォルに任せて俺とメサイア、リースは先を進んだ。どんどん地下へ潜っていく。
なんて地下帝国だよ。
通路も中々に広いし……迷宮だな、こりゃ。
迷わず済んでいるのは、誘われているせいだ。矢印が点滅して案内されている。明らかな罠なのだが――気にしない。
走って降りていけば、ついに果てへ。
こんな地下深くに部屋があろうとはな。
「……メサイア、こんなピラミッドといい、地下といい……おかしくねか」
「……ええ、普通ここまでのモノを作れないし、ここまでの力は引き出せない。それは例え、女神でも死神でも……聖者や聖女だとしても、不可能」
「不可能って。でも、これは一体」
これは下手をすると、天帝以上に厄介な存在かもしれないぞ。そのせいか、俺は久方ぶりに恐怖を感じ始めていた。
「サトルさん。あたし、ちょっとだけ覚えがあるんです」
「リース?」
「あたしは魔法使いですから、神話とか伝承とか聞いた事あるんです。ある書物の中で『原初』を目にしたことがあるんです。
「原初……」
「もしかしたら、神の御業ではないかと――」
ごうっと大きな扉が開く。
リースの『原初』を確かめようとしたが、そんな暇は与えてくれないらしい。入るしかない。
ゆっくり巨大扉を抜けていく。
「メサイア、リースを頼む」
「……ええ、もう同じ轍は踏まない。皆を失うわけにはいかないの。絶対にバラバラになんてさせない」
「ああ。これで――」
巨大な扉が閉まっていく。
もう二度と外には出さんというつもりか? いいさ、あんな扉くらい破壊してやる。こっちには奇跡の力【スターダスト】だってあるんだぜ。
怖いモノなんて、何もないんだ。
コツコツと足音がした。
闇の向こうから誰かが来る。
『…………』
確かな気配。
俺を見ている。
これは昔に感じた事のある気配。
まさに俺を生贄にした張本人のもの。当時は顔がよく見えなかったけど、今はハッキリと分かる。
「お前が……オプファ!」
『――かつて、この世界はひとつだった。それから七つに派生し、今があるのだろう。我々、スターダストはその七つの世界の住人だった――』
黒髪の…………少女!?
馬鹿な。
あれが……俺を生贄にした張本人だっていうのかよ!!
背は低く、リースと同じくらいだろうか。
だが、頭には神々しくも豪華なティアラを乗せている。
「お前はいったい……」
「はじめまして、サトル。自分はオプファと呼ばれているけど、そうではない。それは異名のようなものでね。真名は『ジェネシス』という」
「なんだって……」
「まあでもいいよ、自分の事はオプファで。その方が呼びやすいだろう。あー、ちなみに自分は男でも女でもないよ。性別なんてない」
「なっ……」
少女のような顔立ちだが、それは単に中性的なだけか。それにしても、顔がほぼ女の子だけどな。それから、あのエメラルドグリーンの瞳。
なんて輝き。
いや……惑わされるな俺。
「サトル、あの子は……やばいわよ」
「だろうな、メサイア。あのオプファは『神』に近い存在だ」
「ええ、女神でも死神でもない……第三の存在、原神かも」
「原神か……」
そうだとしても、俺はヤツを――倒す。
「オプファ!! よくも俺を生贄に捧げてくれたなァ!!!」
「……ふふ、そうだね。あの時、君を生贄に捧げたのはこの自分で間違いない。けれど、今回はきちんと対策して来ているようだね」
「当たり前だろ。お前のスキルは恐ろしすぎるからな……」
「自分はあれから【レッドウォー】のせいで、一度は消滅しかけてね……。天帝のヤツは、自分が生き残った事には気づかなかったようだけど、それは違う。自分は身体の構造が違うから、血も流さないし、首が吹き飛んでも無事さ。けど、あるエネルギーを一定数下回ると消滅しちゃう。それだけの話だった――だから、自分は時間をかけて回復し、生きている」
くすくすと不気味に笑うオプファ。
俺に向けて手を翳してくる。
なにを、する気だ?
『ソウルテレキネシス!!』
ヤツがそうつぶやいただけで、俺はぶっ飛ばされた。
「――――――ぐあああああああああああッ!!!」
一気に壁に叩きつけられた。
な……何も見えなかったぞ。
しかも【オートスキル】は不発か。
「サトル! 今のはかなりのダメージよ、回復ポーション」
「せんきゅ!」
メサイアから『ウルトラスリムポーション』を受け取って、飲み干した。これは体力を全回復させる高額アイテム。持ってきて良かったぜ。
今はフォルがいないから、ヒール役がいない。気を付けないとな。
こうなりゃ、任意発動でいく。
「たぁぁぁぁッ!!!」
黄金の槍・ロンゴミニアドを生成、突進していく。
オプファは一歩も動かず、俺を見据える。
「……綺麗な槍だ。でも、それだけだ」
「んだとォ!! これでも喰らいやがれ……」
距離を取り、俺は全力で投球した。
『真・覚醒聖槍・ロンゴミニアド――――――!!!!!!!!』
真っすぐ向かって行く槍。
これで決まったろうと、確信したその時。
ヤツは、やはり手を翳し――
『ソウルテレキネシス……!!』
――止めやがった。
俺の最強の槍を……何かの力で……!!
「…………バカな! 一度も止められたことは無かったぞ……どうしてだ!!」
「所詮は、魔法スキル。我が万物の力……『ソウルフォース』には敵わんのだよ」
「ソウルフォース!?」
「万物は、魔法すらも超越するヒエラルキー、つまり頂点に立つ存在。それは、もっと端的に言えば『宇宙』そのものだ」
「……な」
宇宙、そのもの……そりゃ、ただのスキルが勝てるワケねぇ……。
だが、
俺は懐から、スッ、とそれを出した。
「なら、これ使うしかねぇよな……」
「き、貴様!! それは【スターダスト】ではないか!!」
さすがのオプファも驚く。
それから、メサイアとリースが駆け寄ってくる。
「サトル! 使うのね!?」
「サトルさん! やるのですね!」
「……ああ、卑怯と罵られようが……勝つためには手段は厭わない!! 俺は、お前に復讐する為にここに来たのだからな!! 俺の大切なモノを奪ったお前たちを許さん!!!」
強く握り締め、
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
俺は、
――――願った。
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