第325話 快適な船旅 - 聖女とお風呂!? イイ旅夢気分 -
船旅は続いた。
太陽島『サンデシマ』を目指しているワケだが、思ったよりは距離があるみたいだな。メサイア曰く、あと三日は掛かるんじゃな~いと適当に返事を貰った。
そんな掛かるのかよ!!
「にしても、黄金龍のシュトラールか」
「あのドラゴンが気になるのですか」
俺の膝の上に跨り、青桃のオッドアイで見つめてくる聖女・フォルトゥナ。銀髪も光で反射して神々しい事この上ない。
そうそう、各々自室があった。
メサイアの建築スキルは万能で、そういう細かい設定も可能なのだ。おかげで快適すぎる船内環境なのだが、今はフォルがピッタリくっ付いている状況だった。
「気にならんと言えば嘘になるな。まあ、可愛い子だったな……金髪だったし。リースみたいな柔らかさはあったよなあ。ちょっとイイ匂いもしたし」
「む……。今から、あのドラゴンの事を忘れてしまうほどに、わたくしを感じて戴きますよ、兄様」
どうしてか、あのシュトラールの一件以来、フォルはムキになっていた。そういえば、聖女がどうとか――。あれの所為だろうか?
「なんだ、珍しく妬いたか?」
「そ……そんな事……」
この動揺っぷり。珍しいなあ。
「まあ、なんだ。たまには一緒に風呂でも入って、落ち着くか」
「お、お風呂ですか。……うぅ、兄様とお風呂」
「顔を赤くしているところ申し訳ないが、ヘンな事はするなよ」
普通は逆なのだが、フォルは俺の腹筋を狙ってくるのだ。ヘンタイ注意報だ。
「分かっていますよ~、たぶん」
……たぶんって。
◆
この船・ロイヤルフォーチュンには、お風呂もあった。なんだか、昔の小屋時代を思い出す作り。思い出補正もあったかもな。
浴槽は二人なら、なんとか余裕だった。
シャワーまで備え付けられているので、身体を清め、木造の風呂へ肩まで浸かった。
「……ふう」
「あ……兄様ずるいです」
フォルはまだ椅子に座って、頭をガシガシ洗っていた。あの長い銀髪はトリートメントとか大変だよな。まあ、後ろ姿も眺めていて飽きないな。
「フォル、背中も綺麗だなあ」
「どうせなら前も」
「いや、前は危険すぎるわ。って、向こうとすんな」
そのまま頭を洗うフォル。
「その、兄様……」
「ん」
「兄様に、わたくしを洗って欲しいのです」
「どこを?」
「ぜんぶ」
「――――ぜんぶ?」
「ええ、ぜんぶです」
「ぜんぶねぇ……って、全部!? そりゃあ、隅々までって事だよな」
「ええ、隅々まで」
「……いいねぇ、フォルの全部――って、出来るかーい!!」
さすがにそこまでは出来ない。
そもそも。
「まあなんだ、言ってはなんだが……俺、聖女の姿で長い事過ごしていたから、特にフォルの身体には反応し辛いっていうか……慣れちゃった」
「……え。ええ~~~っ!!」
驚くフォル。
振り向こうとしたので止めた。
「そ、そんな……それでは、わたくしでは興奮しないと!?」
「そういう事になるかもな。だってほら、ヘデラのモデルは、フォルだったし。毎日、フォルを見ているようなものだったからな」
「……わたくしを毎日」
「ああ、だから傍にいてくれているみたいで、嬉しかったよ」
「そ、そういう事でしたら許しましょう。寛容な精神で許すことも聖女の務めですから」
なんだか照れくさそうに頭を洗い続けるフォル。どうやら、全部洗うのは諦めてくれたようだ。とはいえ、せっかくの二人きりの機会だ。
「フォル、いつもありがとう」
「…………」
シャンプーのせいで顔がよく見えないが、すっと涙が零れているように見えた。それを誤魔化すようにシャワーを強めに出していた。
◆
風呂から出ると、フォルは離れようとしなかった。
「……兄様、わたくし今日は一緒がいいのです♡」
「仕方ないな。この甘えん坊め」
「ええ、兄様がカッコよすぎるのイケないのです。全部、兄様の所為ですからね。責任を取って戴きます♡」
そんな笑顔で言われると断れない。
自室に戻って、今晩はフォルと一緒に寝た――。
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