第317話 聖女の服が溶けちゃった件
聖女ヘデラに意識を向ければ、いきなりオーク。
いかんな、メサイアのフトモモに熱中するあまり、こちらの記憶が怪しくなった。混線したかな……まあ、没入しすぎてこういう混乱もしばしばある。
「――で、なんでこうなったけ」
「大幹部・カントの動きがあったから」
淡白に答えるトーチカさん。
今日もメイド服がばっちり決まっていた。桃色の髪も風に揺れてカッコいいぜ。
ああ、そうか。
そういえば『死の要塞国・デイ』に向かっていたっけな。テレポートで。
ちなみに『デイ』は、要塞国と呼ばれているだけあり、完全要塞化がなされている。まず、攻略不可能な大いなる壁が立ちはだかる。
それは、城をも超える巨大な壁と聞く。
そこへ向かっていたとはな。これでは、温泉どころじゃないぞ!
「にゃー、ヘデラ様。ブラックオークの持つ斧は、状態異常[致命傷]を与えてきます。もし発症すれば、3分後に体力の半分を失うという、最悪な事態に」
「なんだと……それは本当なのか、エコ」
黒猫が肩に乗っていた。
いつものセクシーボイスで、答える。
「ええ、ですから回避力を必要とします。この場合、完全回避かと!」
完全回避。
通常の冒険者でも高めるのは難しいステータスのひとつ。俺はまあ、限界突破して『30000』くらいあるけどな。
「なら余裕だろ!!」
俺はスキルを発動して、黄金の槍・ロンゴミニアドを構えた。
だが、
「待ってくださいですにゃ!」
「なんだ、エコ!」
「ちゅ~るぅは!?」
「こんな時にちゅ~るぅかよ! 帰ったらな!」
「分かりましたですにゃ!!」
なんてウソだ。
あとでサーモンを大量に食わせてやる!!
「くらええええええええええッ!!」
「まって、ヘデラ」
今度はトーチカに止められた!!
良いところで!
「どうした、トーチカ!」
「ヘデラ、気づいてないけど……パンツ丸出し」
「へ……」
よ~~く体を見ると、俺は何故か下着姿だった。
「うああああ!! 俺なんでぇ!?」
「ここへ来る前にブラックスライムの体液を浴びて、服が溶けた」
マジかよ。
ここら一帯は何でもかんでもブラックかよ。そういえば、聞いた事がある。色によっては、モンスターの強さがパワーアップするってな。
だから、ブラックは相当強い。
噂によると『窮極の闇』を浴びているとか何とか。
だから、俺レベルでも液体を浴びてしまったのだ。……なんて、こった。俺こんな、はしたない姿だったとはな。
「くそ、よくも俺のお気にのスチームパンクを!!」
あれ、何気に『150万セル』もしたんだぞぉ……!(血涙)
何故そんな高価かというと、かなりの効果が付いていたんだよな。今となっては確認のしようがないがな。
「くそぉぉぉぉぉぉぉ!! 今度こそぶっ倒す!!」
次こそはと槍を投げようとするが――
「まって!!」
今度は、ネメシアに止められた。
「なんだ!? 今度はネメシアか!」
「そ、そんな怒らないでよ……」
しゅんとして、ネメシアは泣きそうに……あ、いかん! ちょっと語気を強め過ぎたな。
「す、すまん……俺が悪かった。そんな顔するな」
「うん。あのね、ヘデラ……」
「おう」
「お財布落としちゃった」
「……は? はあああああああああああああ!? うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおい!!!」
俺は、ロンゴミニアドをブン投げた。
『ズドォォォォォォォォォォォ――――!!!!!!!!!!!』
と、まあ豪快にブラックオーク数百体を跳ね飛ばし、爆散させた。
==RESULT==
【EXP:668,250】
【DROP:斧のカケラ×96】
==RESULT==
お金は、収集品を売って取り戻した!(大泣)
服が欲しいいぃぃぃ……!
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