第310話 魔弾使いのメイド - レメディオス防衛録 -
※トーチカ視点です
またスターゲイザーの下っ端が邸宅を狙っていた。
あたしは密かに戦うメイド。
トーチカと呼ばれている防御陣地、掩体壕だ。
大切な仲間、ヘデラとネメシア、そして猫のエコを守る為――あたしは今日もレメディオスを巡回していた。その最中でスターゲイザーの下っ端がヘデラ達を狙っていた。
男はひとり叫んで走っていた。
「ワハハハ!! オレは大幹部になる……! その為に、このレメディオスを壊滅させるぅぅぅぅ~~~~!!」
「させない」
指で銃の形を作り、あたしは魔弾を発射した。
『――――――クリムゾンショット』
赤い魔弾が一瞬で男へ到達し、跳ね飛ばす。
む……致命傷ではない。遠すぎて威力が落ちたらしい。
「ぎゃあああっ!! ……くそっ、誰だ……って、メイド!? なんだてめぇ! この大幹部になる予定の……ソンブル様と戦うっていうのか!!」
ソンブル。
男の名らしい。金髪の不良というかゴロツキというか。それほど強そうには見えない。でも、スターゲイザーの一員だ。
あの腕の『★』の刺青は間違いない。
「倒す」
「倒すぅ!? このオレを? いいか、オレの能力を甘く見ない方がいいぜ……」
と、ソンブルはニヤリを笑い、逆方向に走った。……逃げた?
あたしは追いかけた。
レメディオスの商店街へ出ようとしている。まずい、さっきまでは閑散としていた場所だったから、まだ人間もいなかった。あれ以上は……!
だったら!
『クィックショット!!』
威力はかなり落ちるけど、足止めになる高速ショット。命中すれば、相手を【鈍足】の状態異常にさせる。
魔弾は、ソンブルの足に命中……!
「…………ぐぅ!! だが、遅かったな。この女を人質に取った!! これで形勢逆転だな、メイドォ!!」
なんて事……人質を…………。
……って。
よく見れば、それはヘデラだった。
銀髪と水色の瞳。間違いない。
あの誰が見ても美しいと思う容姿は、世界でただ一人。
あたしの嫁、ヘデラに相違ない。
これはもう終わったな。
わたしは指銃を収めた。
「ほう、さすがに人質は撃てねぇよなァ! これでオレの勝ちだ。メイド、教えろ! この近辺にヘデラとかいうクソブス聖女が住んでいる筈だ。そいつの家を爆破する。居場所を教えろ!!」
と、ソンブルは本人を捕らえている事に気づいていない。……う~ん、どうしたモノかとあたしは腕を組んだ。
すると、ヘデラは目で合図してきた。
なるほど……あれは後は任せろと言っているようだ。
「おい、てめぇ」
「!? な、なんだ人質の女……って、口調こわっ!!」
ヘデラの口調にビビるソンブル。
それからヘデラは【オートスキル】を任意で発動――『ほーりー☆くろす』を放ち、敵を吹っ飛ばしていた。
「あんぎゃあああああああああ!!!!」
ゴロゴロ転がっていくソンブルは、堀に頭をぶつけて気絶した。どうやら、本当に下っ端だったようだ。
「トーチカ、なにを遊んでいるんだ?」
「ん、レメディオスを守っていたの」
「ほ~、そうだったか。トーチカがな。俺たちの為か?」
「うん。一番はそれ。でもみんな守りたい」
ヘデラはあたしの傍に寄って来た。
「成長したな、トーチカ」
ポンポンと頭を撫でられる。
うれしい……。
ヘデラ、ちょっとお父さんみたい。
「ヘデラは散歩?」
「そんな所かな。……断じて、お前を心配したとかじゃあ……」
……良かった。あたしを心配してくれるんだ。
「ヘデラ、デートしよ」
「デートか。そうだな、たまにはいいか」
あたしはヘデラの腕に絡め、街を歩く。
なんでだろう~、やっぱりお父さんみたいな気配がある。謎の安心感とか、守ってくれそうなところとか……なんで落ち着くんだろう。
この瞬間だけ、あたしの瞳を星のように輝かせていた。
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