第298話 死者復活 - シュピネダンジョン⑧ -
底の見えない崖に落ちれば……普通は死ぬだろう。けれど俺たちは死ななかった。奇跡的にも生きていたのだ。その理由は簡単だった。
落下中、俺の【オートスキル】が勝手に発動したらしい。こういう死の直面には、俺のスキルは特に発動率が高くなる。つまり、ピンチになればなるほど激しい反撃や補助・支援を自動で行う場合があるのだ! で、今回のスキルは『ニトロ』という爆発系のもの。
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
【Skill:ニトロ】Lv.10(最大)
【Effect】
対象:敵/自分
爆発効果を持つ。自爆も可能。
但し自身のHPを1%削る。
爆発の推進を得て浮遊もできる。
物理ダメージ100000%。(固定)
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
――というわけで、ニトロ爆発が超連鎖し、その反動で俺たちは軟着陸したわけだ。尚、この爆破ダメージは、パーティやギルドを組んでさえいれば、敵にだけ有効なので、固定パーティを組んでいる俺たちにケガもなければピンピンしていた。幸い、水着の紐が伸びたくらいだな。
ていうか……
俺はまだ胸丸出しだった。
肩紐を直し、周囲を確認する。
「ネメシア」
「きゃ……ちょっと、どこ触ってるの!」
「すまん、暗くてな。これは……ネメシアのどの部分だ?」
掌で触れると、フニフニした感触が伝わって来た。う~ん、胸なのか尻なのか……分からん。真っ暗闇なのでマジで分からない。明かりがあればなぁ。なにか良い方法はないものか。
「ヘ~デ~ラ! わざとじゃないでしょうねっ」
やべ、グーで殴られそう。
残念ながらどの部位かは教えてくれなかった。まあ、あの感触からして、恐らく胸か尻だろう。暗くて分からん。とはいえ、わざとではない。闇すぎて本当に見えないのだ。
「そういえば、俺の目の前が行き止まりなんだよな。この柔らかいモノはなんだ~?」
顔面がこれまたフニフニしたものに衝突した。今日はよく柔らかいモノにブツかるなぁ。ラッキースケベモード投入かな。でも、俺は聖女だけどなっ!
「…………ヘデラ、そこダメっ」
なんだか甘い声を出すトーチカ。
ん??
なんも見えないが、顔を突き出してみる。
やはりその感触は柔らかく、これまたトーチカの胸か尻だろうと俺は思っていた。けれど、トーチカは明らかにおかしな反応をしていた。
「ヘンな感じが……」
「へ……」
そういえば、なんか布っぽいものが鼻に当たっているような気がしないでもない。――って、これはまさか!! いやそんなワケないな。だって、見えないもん。ありえんありえん。俺がそう思っているだけで、実際は違うかもしれない。そう、これは言わばシュレディンガーの猫。その蓋を開けてみるまでは結果は分からんのだ!
これは、トーチカのどこかの部位かもしれないし、実はエコ(猫)のお尻というオチもある。そう、観測できず証明できない以上これは『わからん』のだ。悪魔の証明だ。
って、何を真面目に言ってんだ俺。
「すまんすまん。この闇じゃ分からなくてな。わざとじゃないんだぞ。まあ、女同士だし……女体なんぞフォルで骨の髄までしゃぶりつくしたし、今更だがなっ」
「……そう。でもヘデラの息とかくすぐったい」
本当にトーチカだったのか。やれやれと俺は顔を放した。そして、俺はスキルがある事を思い出し『血の煉獄』を使い火を焚いた。
これで視界は良好に。
「みんな、平気か……って、そんなわけないか」
「うぅ……腰打ったぁ」
腰を擦るネメシアは辛そうだ。尻餅をついたのだろうな。顔を顰め痛そうだ。あとで帰ったらマッサージでもしてやろう。
「うにゅー」
股間を押さえ、顔を真っ赤にするトーチカは心なしか俺を睨んでいるようにも見えた。いや、どちらかといえば恍惚? ――って、まさかな。俺さっきの闇でトーチカの股間にダイブしていていたのか!? だとしたら、やべーな。その真実は闇の中だけどなっ。
「にゃー」
だるーんと俺の頭の上で倒れているエコ。こいつにはもう寝てもらっておこう。結局、あの肉球は役に立たなかったな。未来の技術には敵わなかったわけだ。残念。
「……さて、ここからどう脱出したものか」
そう考える間にも、俺は違和感を感じていた。
なんだこの……嫌な気配――。
ザザザザと足音が複数すると、人影が現れた。
「きゃああああ!!」
ネメシアとトーチカが人質に取られてしまっていた! なんだ、この男たち! どこから現れやがった……岩場に隠れていたのか!?
「……こいつらは一体なんだ!?」
いつも応援ありがとうございます。
もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ぜひブックマーク・評価をお願いします。感想もお気軽に書いて戴けると嬉しいです。




