第294話 死者復活 - シュピネダンジョン④ -
まさか深い森の中『シュピネダンジョン』で野宿する羽目になるとはな。でも、仕方がなかった。なぜなら、日が沈んでしまったからだ。
今は俺の『血の煉獄』で焚火をし囲んでいた。
パチパチと燃える薪。
その炎をぼうっと眺め、俺はメサイアの顔を思い出していた。――ああ、そうそう。メサイアとフォル、リースはレメディオスに置いている。
なんだか気を使われているんだよなあ。メサイアからは、ネメシアと大切な時間を過ごしなさい……って、説教ぽく怒られた。
フォルからも『ネメシアを泣かせたら、いくら兄様でも許しませんからねっ』と、ツンデレっぽく釘を刺された。フォルは厳しくなりすぎだよぉ。
でも、リースは優しい。
俺の前に立ち、むんむんのエルフフェロモンを全面に押し出し、誰よりも優しく包み込んでくれた。まさか……聖女姿の俺が、あの爆裂爆乳に埋もれることになるとは。当初は驚いたが、それが次第に心地よくなって、揺り籠のように眠りについていた。
――そして、眠り姫のベル。
彼女は未だに眠ったまま。
起きる気配はまったくない。
メサイアによると、ベル自身が起きることを拒絶しているとか。……どうしてだ。なぜ、俺を、世界を拒絶する。
彼女にいったい何が――。
そこで頬に違和感を感じた。
トーチカだ。
彼女が俺の頬を突いていた。
「ヘデラ、元気ない」
「……いや、ちょっとね。ところで、トーチカはレメディオスが故郷で――あの『ぼむぼむ』が親なんだよな」
「そう。おおおおお父さん」
なぜかそこでガクガク震え、嫌な汗を垂らし動揺しまくるトーチカ。よっぽどあのマッチョ親の存在を認めたくないんだなぁ。
トラウマかな?
「聞いていいか」
「……うん」
「ぼむぼむは、良い親か?」
「……うん。最高のお父さん。でも、自慢の肉体を娘に見せたがるからキライ」
そんな風にハッキリ申すトーチカさん。
なるほどなぁ、褒めつつも貶すか。けれど、確かに風呂に登場ってなぁ……。
俺もハダカを見られたし。
「で、その前から気になっていたけど……瞳」
「これはお父さんのせいじゃない。生まれつき」
「ああ、そうだったのか。でも、そのアクアマリンのような色彩が俺は好きだな。あと左の泣きボクロもポイント高いよな」
そう俺が感想を述べると、トーチカは頬を朱色に染め――視線を外した。……そして、意外すぎることに両手で顔を覆っていた。
「…………はずかしい」
うわ……可愛い。
トーチカがこんな動作を……
感情を露わにするとか!
なんだこの奇跡のシーン!
スクリーンショット機能はないのか! おい!
「トーチカ、そうされると言った本人である俺も照れる。でも本当だよ。つーか、ネコミミメイドの時点でアカデミー主演女優賞級は間違いない」
「ありがとう……」
とうとうトーチカは頭を地面に擦り付け、崩壊していた。イカン、羞恥心が限界突破したらしい。これはもう悶絶というレベルを超えていた。
いやはや、これほど照れるトーチカを見れるとは……この旅の甲斐もあったモノだ。うむ、みんなの新鮮な顔が見れて俺は嬉しいねっ。
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