第293話 死者復活 - シュピネダンジョン③ -
力の限りスキルを飛ばし続けた。
煮え滾る炎は、クモだけを集中的に狙い、キレイすぎるほどに始末した。そして、入れ替わるようにして落とすドロップアイテム。謎の『クモの液体(糸)』。触れるともれなく服が溶ける。
「イラネ」
地面に散らばる液体はスルーし、俺は戦闘を続けようとした。いやだが、そろそろ仲間が気掛かりだ。あまり先行はせず、冷静に戦況を判断した方が得策だろう。
俺は仲間の元へ戻った。
「ネメシア! 無事か!?」
「え、ええ……ヘデラがゲロスパイダーを倒してくれたし、もうこの周辺に生息していたのは全滅したようね。でも、この森ダンジョンはまだまだ距離があるし、深い森だから気を付けて」
半裸ながらもそう気遣いをしてくれるネメシアだが、裸が気になって仕方ないな。うーん。俺も服を溶かされちまって水着だしなぁ。
「誰か服を持ってないのか?」
「ああ、それなら平気。わたしには『ホワイト』があるもの」
得意気に胸を張るネメシアは、例の白い靄に手を突っ込んだ。これは、女神専用スキルなのである。詳細は以下の通りだ。
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
【SKill:ホワイト】 Lv.10(最大)
【Effect】
対象:自分/全体
女神専用スキル。
アイテムストレージとして
利用可能。保管個数は無限大。
スキルレベルが最大値の場合、
ホワイトの中へ侵入可能。
建築権限が付与される。
種族[人間]を住まわせる
事も可能になる。
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
――これはいくらなんでも便利すぎるな。
おかげで荷物持ちは、ネメシアにしてもらっていて、ほとんど手ぶらで済んでいる。女神スキルは万能ということだな。
攻撃系もあるようだけど、また見せてくれる機会もあるだろう。
で、ネメシアは着替えた。
「……え、おい。それ……」
その姿に俺は度肝を抜かれてしまった。
まず目に入る、あの黒いヒラヒラとしたミニスカ。これまた青春時代を彷彿とさせる黒い服。
「えへへ……」
細く白い足をクロスさせ、恥ずかしそうに照れるネメシアは、女神以上の存在になっていた。なにこれ、欲しい。
彼女は『セーラー服』に着替えていた。
すっごく似合っている。神がかり的に!
「ネメシア、可愛いぞ」
あまりに神々しくて本音が出てしまった。
「本当? やったあ、ヘデラの心掴んじゃった♪」
隣にやってくるなり、腕に手を絡めてくるネメシアは上目遣いで俺を見た。……ちょ、それたまらん!! 俺的青春ポイント3000億差し上げたい。
ああ、出来ることならこのまま彼女の頭を撫でたい。でも、嫌がるだろうしなぁ。……とはいえ、女同士。多少のスキンシップは問題あるまい。こんな時、聖女で良かったと心底思った。
「ネ、ネメシア……あのな」
自然と手を伸ばそうとするが――
しゅっ――と、例のクモの液体(糸)が飛来していた。まずい、あの白濁液に触れてしまうと服が溶けてしまうし、臭くなる!
「うわぁっ!!!」
俺はネメシアをそのまま抱き寄せた。
小さな頭が俺の胸に沈む。ふわっと柑橘系のイイ匂いもして、俺は心を奪われそうになった。……これって青春かも。
そう感じ始めている間にも【オートスキル】が反応し、敵の攻撃に対しカウンターを決めた。なんと珍しくも『オーディール』が出てしまい、超眩しい光がクモの大群に目掛けて突っ込んだ。
『ギョォォォォォォォォ……!!』
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
【SKill:オーディール】 Lv.10(最大)
【Effect】
対象:敵/超広範囲
聖者専用スキル。
神を代行し、聖光を放つ。
その閃光が敵を慈悲なく浄化する。
魔法ダメージ300000%。
ノックバック効果も任意で付与できる。
味方に対し、少量のHP回復。
★★★ ★★★ ★★★ ★★★ ★★★
「さすがヘデラ様。無自覚でスキルを発動なされるとは、お見事です」
頭上の黒猫が毛繕いしながらも、脱帽した。
猫に褒められても嬉しか――嬉しいね!
とりあえず、留まるのは危険だ。
森ダンジョンを早々に脱出せねばな。
服をこれ以上、溶かされてたまるかってーの!
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