第276話 ガチャを回しまくれ - レアアイテムを入手し、強化せよ!! -
新衣装・スチームパンクに身を包み、俺は、ネメシアたちと共に外へ。
「ねぇ、ヘデラ。どこへ行くの?」
「良い質問だ、ネメシア。まずは『ガチャ』をしに噴水へ向かう」
「え、ガチャを回すの? いいわね、面白いじゃない! 最近は装備も消耗しているし、たまにはレアアイテムも欲しいものね」
「幸い、レッドスターも結構溜まってるんだよね」
「あたしもグリーンスターとかある」
トーチカの小さな掌に緑色の星があった。キラキラしていて美しい。トーチカの手が。ま、あんまり『スター』を溜め込んでいても仕方ないからな。
★
久しぶりに噴水にやって来た。
あの隣国【クリスピア】の王子・ラナンの一件以来だろうか。久しく会っていないけど、最近はハリボテで活躍中だな。
ほとんど原型のないへのへのラナンだけどな!
――さて、噴水だが。
近所の爺ちゃんや婆ちゃん。小さな子供や少年少女が遊んでいたり、散歩していたりしている。……お、ペットモンスターもいるじゃん。なんのモンスターだろうな。キモカワ~☆彡
何にしても、ほのぼのしているな~。
――あ、そっか。
あの不穏な空が消えたからだ。
今や雲一つない青空がまぶしいほどだ。きっと、『シニガミ』と大幹部の『コウシ』をぶっ飛ばしたから、平和が戻ったに違いない。けれど、それでも、まだ大幹部はあと何人か健在だろうし、なにより『天帝』というラスボスが控えているらしいからな。
油断ならん。
でも、ずっと警戒していても疲れちゃうし、装備を整えるのも大事な戦略のひとつだ。だから、俺は息抜きに『ガチャ』をしに来た。
備えあればなんとやら。ネメシアの言うように消耗している装備も多いから、ここでレアアイテムをゲットしまくって強化しておこう。
――しかし。
「わぁ……ホンモノのヘデラ様!?」「なんとお美しい……女神のような肌だ」「あの女性ってあんな麗しいカッコだったか!?」「うわぁ……惚れ惚れするな。一瞬で恋に落ちそう」「背小さい……息を呑むほど美しいなぁ」「やっぱり、聖女様だなぁ。結婚したい」
などと、男どもの嬉しくない視線を浴びていた。
俺は、本質的には男なので、あまり嬉しくはないが――なんだろう、この圧倒的な優越感。ちょっとクセになりそう……。衣装チェンジして正解だったか!
「さ、さすがヘデラね。衣装を変えた途端、注目度抜群じゃない」
「ネメシアよ、ちなみにライブ配信の反応はどうなんだ?」
「あ~…、教えた方がいいわよね?」
なんだか、ソワソワと落ち着かないネメシア。
涎を垂らし、両目が『セル』になっとるぞ。実に分かりやすい。――これ、明らかに稼ぎまくっているだろう。もれなく【ウルチャ】一色に違いない。いよいよ俺も配信者の仲間入りかな。
「いくら儲かった」
「え…………」
「え、じゃない。俺でいくら稼いだ?」
「……う、うぅ……」
「ネメシアよ、だ~~~れのおかげで稼げてると思ってるんだァ!?」
「こ、怖いって……ヘデラ、顔が怖いわよ。せっかくの美人が台無しよ! ね、落ち着いて。ちゃんと教えるから」
「トーチカ、この守銭奴のネメシアを拘束だ」
「了解」
さっとトーチカは軽快に動き、ネメシアを一瞬で確保した。
「ひ、ひどーい! ちゃんと言うってば! だから、放して……トーチカ」
「ダメ。ヘデラの命令は絶対。あたしはヘデラのことしか聞けない」
さすがトーチカ。俺の愛人(仮)。
「分かったって……えーっとね。前の戦闘の配信は『13,555,910セル』よ……」
「――――は? い……いっせんさんびゃく!?」
コクっとネメシアは頷いた。
しかも、それだけじゃない。もうひとつ。俺の新衣装による【ウルチャ】も大量にあったはずだ。自分で言うのもなんだが、かなり可愛いと思うし!
「――で、ヘデラの衣装披露なんだけどね」
きた。
これが一番知りたい情報だ。
「なんとね……『30,000,000セル』よ」
「――――――」
あまりの金額に言葉を失う俺。
さ…………さんぜんセル?
いや、違う。
3000万だ。
「そんなピッタリ!?」
「うん、ピッタリ」
そんなピッタリもすごいけど、金額もスゲェ。
合計4000万超えか。すご!
「俺ってそんな注目度あったんだ」
「みんなヘデラの衣装にメロメロよ~。大盛り上がりで、大好評よ!」
「マジ……」
服を変えただけでこれとは……どんだけチョロいんだよ、その連中。ま、まあいいか……おかげで大金持ちだ!!
ま、でも今はそれはいい。ガチャ優先だ。
「ヘデラ、これ出た」
もうトーチカが噴水に【グリーンスター】を投げて、回していた。
その結果……
『たわし』、『たわし』、『たわし』、『たわし』、『たわし』……『たわし』、『たわし』、『たわし』……と、やたら『たわし』が出た。
ってうぉぉぉぉい!!
「たわし出すぎだろ……ビッグチャレンジじゃあるめぇし」
「びっぐちゃれんじ?」
「なんでもないよ。それより、こんな量の『たわし』どうしたものか……捨てるのもなぁ」
「ウチのお風呂掃除用に使うとかどうですか」
頭に乗ってるエコが提案するが、どう考えても『たわし』では効率が悪すぎる。あの大浴場を磨きあげるのに、三日は要するぞ。
「却下だ。まあ、この『たわし』の用途は、また別の機会に考えておく。さあ、ネメシアよ、レッドスターでガチャってみ」
「え、わたし?」
「うん、たまには楽しめって、ほら」
俺は、ネメシアの傍に近づき、その手に【レッドスター】を握り込ませた。
「……あ、ありがと」
「ん、どした。顔が赤いぞ」
「……ぅぅ、ヘデラってば、優しいから……」
「当然だろ。なぜなら――そりゃいいな。ネメシア、いいから回せって」
「――? うん、そうね、ガチャを回しましょう」
ネメシアは【レッドスター】を噴水に投げ入れた。
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