第266話 感動の再会!? - 二人の男を従える令嬢様 -
まるで、この世の終わりのような雲だった。
紫色に変色しまくる空。遥遠くで激しい雷と嵐。嫌な感じだ。
しかし、今のところ敵の気配らしい気配はない。固く構えていたところで無駄に疲れるだけだ。だから俺たちは気にせず、街へ向かった。
「んん? 人がいないぞ。閑散としすぎだろう。どうなってんだよ……」
「――――」
沈黙するネメシア。顔がいつになく怖いな。
「…………いる」
何かの気配を察知するトーチカ。
「いますね」
エコ、お前もか。
そして、それは現れた。
「…………なんだ、こいつら」
豪華なドレスに身を包んだ華やか女性。
その女性は、二人のゴツイ男を従えていた。……なんだ、貴族? ご令嬢? あれだけ煌びやかに堂々とされていると、それっぽいけどな。
女性は俺を見つめていた。――って、俺? なんで、俺。
そういう趣味はないけどなー。
「…………なるほど、フォルのおっしゃる通りでしたのね」
「あん?」
ドレスの女性が俺を指さす。なんだよ。
「……グースケとパースケ、やっておしまい」
――と、変な名前を口にすると、男たちが動き出した。って、その二人の名前かよ! なんちゅーシュールな名前! 思わず吹き出しそうになったぞ、それ!
てか、ネメシアはともかく、トーチカとエコが腹を抱えて爆笑していた。
「もにょにょにょ……!!」
「にゃはははははは!!!」
だから、トーチカ、お前は笑い方が不気味すぎるっつーの!!
けど、俺も何故だか自然と笑みが零れた。
「ぷっ……。グースケとパースケって――――うわっ!!!」
まて、男がもう俺の目の前に!! ちけぇ!!
いつの間に移動して来ていたんだ……くそ、ならば!!
『――――――覚醒聖槍・ロンゴミニアド!!!』
槍を生成して、盾にした。
急だったので、今はガードが精一杯だ。
「――――ふんっ!!!!!!!!」
グースケとかいうヤツ、槍を殴ってきやがった!! グーだけに!
「……なっ!? ぐぅっ!! なんて威力だ……手足が痺れたっ! まさか、足まで衝撃が伝ってくるとはな……。け、けどな、俺には【オートスキル】があんだよおおおおおおおおお!!」
身を捻り、後退。
そこで【オートスキル】が発動してくれた。
『――――――パーガトリー・チェーン!!!!!!』
つまりそれは――『煉獄の鎖』。
鎖が敵へ向かって、二人を捕縛した。
「ぐお!?」「んじゃこれ!!」
しかも、火属性魔法が発動しかけて、二人を燃やそうとしたが――
「おやめなさい!!」
あの女性が止めて来た。……おっと、あっぶね。グッパーコンビを殺しちまうところだったな。捕縛に留めよう。
「大体、あんたは何者で、いきなり何だよ。この男たちもなんだよ。名前おかしいし」
「…………力は衰えていませんのね。……ねぇ、ネメシア」
そう女性は、今度はネメシアを見た。
「…………っ!」
ビクっとネメシアは反応し、慌てた。
すごい焦ってる。
「サイネリアさん」
どうやら、ネメシアとは顔見知りらしい。ふーん、あのドレスの女性は『サイネリア』というのか。……ん? サイネリア……なんだ、心がざわつくぞ。
「おい、ネメシア。すげぇ美女と知り合いなんだな」
「ま、まあね……。ていうか、サイネリアさん、何しに来たんですか! 聖地奪還作戦はいいの?」
「まずは自己紹介ですわね。『サイネリア・ヘールボップ』です。よろしく。
ネメシア、あなたの力が必要だから迎えに来たのですよ。ハッキリ言いましょう。女神の力が世界を救うのです」
「…………」
「え、ネメシアって、女神だったの?」
「やはり……」
事情を知らないトーチカはポカンと、エコは察していたみたいだな。俺はまあ、ゴータマ戦で知ったけどな。
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