第265話 世界大変動 - 動き出す強大な力・星戦の予兆 -
アレクサンドリアを倒した俺とエコは、邸宅へ戻った。
「戻ったぞー。トーチカ、ネメシアはどうした」
「寝たよ。でも魘されてる。あの貴族の衣装がよほどショックだったみたい」
そんなにかよ!
ネメシアのヤツ、割と繊細なところあるからなー。誰に似たんだか。
「一応、平和になったし寝るか。結界とか頼めるか、エコ」
「え、喜んで引き受けますよ。分かりました、守りを固めておきます」
「さすが、エコ。ビームだけじゃなかったんだな」
「ヘデラ様は、私を何だと思っているのですか! 私はか弱い猫ちゃんですよ」
「冗談はよしてくれ、化け猫め」
「む。もう一緒にお風呂入ってあげませんにょ~」
あげません『にょ』って。
それはちょっと困るな。
「分かった。じゃあ、頼む」
「了解です」
エコは走ってどこかへ向かった。
「トーチカ、一緒に寝るか?」
「うん。一緒がいい」
コクコクと頷くネコミミメイド。
瞼重そうで、すでに眠たそうだ。
★
――――翌朝。
あれから何事もなく朝を迎えた……はずだった。
「ん、ネメシアがぶつぶつ独り言を……こわっ」
でも、どれ……と、俺は陰から息を潜めて見守ってみた。
するとその内容が聞こえてきた。
「そうなのよ。昨日、バレリーナのヘンタイね……。うん、そうなの……ショックで寝込んでいたの。……わぁ、【ウルチャ】ありがとう!!」
ネメシアのやつ、朝っぱらから『配信』か。しっかし、泣いたり笑ったり感情の起伏が激しいな。あの感じだと、多分こういう事だろう。
昨日のシーンを配信していた → ネメシア、ショックで倒れる → 今日また配信、同情を集めて【ウルチャ】の嵐 → 大儲け!!
――そんなところだろう。
というか、そんな楽して稼げるものなのか~?
「おーい、ネメシア」
「!? ――――ヘ、ヘデラ、いたの」
「まあな、なにしてんだ。配信かぁ?」
「え、ええ……。今は停止してるけど、でもね、すっごく稼げたの!」
すっごい笑顔だ。
目がセルになっていないか、これ。
「で、いくらになったんだ」
「30万セル」
「――――へ?」
「30万セルよ……」
「さささ、30万も!? あのたった一瞬で!?」
「この世界は、そういうものよ。みんなとっても優しいの」
――と、ネメシアは嬉しそうに話すが、おいおい、いいのかそれ。というか、【ウルチャ】を投げる連中も正気なのか!?
でもまあ、実際、ネメシアは最強に可愛いしなぁ。うん、世界一可愛い。だから、お金を投げちゃうヤツの気持ちも分かる!
爺さんや婆さんが、かわいい孫にお小遣いをあげるのと一緒さ。
あと、以前に教えてもらった事があるが、『コメント』を読んで貰えることもあるそうな。だから、それが嬉しくて借金をしてまで【ウルチャ】しまくる連中もいるのだとか。
実際、超絶可愛いネメシアに笑顔で振り向いて貰えるのなら、大金は惜しくないわな。俺だって性別が『男』だったのなら、必死だったかもしれない。残念ながら今は聖女であり『女』だからな。そんな気が起きないけど。
「うんうん」
「ヘデラ、なにを勝手に納得してるの。それより、朝食よ。奢ってあげる」
「お、さっそくか。いいね、トーチカとエコも起こして外へ行こう」
★
邸宅を出ると、そこはいつもの日常が――――。
なかった。
「え…………どうなってんたよ、あの濁った空」
「…………ヘデラ」
「ど、どうした顔が怖いぞ、ネメシア」
「わたしの後ろに」
「?」
なんだ、ネメシアのヤツ……急に。
「ついに動き出したのよ、天帝が」
「て、天帝? なんだそれ。美味いのか?」
「食べ物じゃないわよ。この世界の言ってしまえば『神様』ね。けど、わたしは認めない。ていうか、あれは神ではないわ」
どうやら、訳ありらしい。
天帝って言うくらいだ、スターゲイザーの親玉ってところだろうか。
「そいつを倒せば、世界は平和になるのか、ネメシア」
「なる。世界は正しい方向へ戻るわ。ママだってきっと帰って来る」
「ママ? ちょっと待て。それは、フォルのことか?」
「……ええ、そうね。ヘデラには言ってなかったかな。わたし、お母さんたくさんいるの。フォルトゥナお母さん、リースママ、ベル母様――そして、ママ」
ママ多いな! 四人もいるのかよ。って、前にも聞いたことがあったかな。どちらにせよ、父親はとんでもねぇヤツだな。
一度、父親の顔を見てみたいな。
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