第259話 黄金の槍 - 最強の覚醒聖槍を放て!! -
俺が思っている以上にこの世界は複雑らしい。
けれど、超絶面倒臭がりな俺は……とりあえず、考えるのを止めた。
「はい、あ~ん♡」
トーチカが激甘そうな生クリームたっぷり、いちご&チョコたっぷりのクロワッサンを俺の口元に持ってきた。甘いイイ匂いが食欲を刺激してきた。俺は、甘いものに弱かった……。
「はむっ……うまぁぁぁッ」
感動するほど美味かった。
今までの疲れが吹っ飛ぶくらいに美味かった。
「あ、ヘデラ。口元にクリームついてる」
顔を近づけてくるトーチカは、舌を出し……俺の頬をペロッと舐めた。いや、舐め続けている。おいおい! いつまでやるんだ!?
「…………あの、トーチカさん。ペロペロしすぎー!!」
「だって~、ヘデラ美味しいんだもん」
「その発言はチョット……いやかなり危ないぞ」
「ちゅーしていい~?」
デフォルトで虚ろな瞳が誘惑してきた。
悪い気はしないけど、人の視線があるからな。すげぇ目立ってるし……。
「また今度な。それより、ネメシアはどこへ行ったんだよ」
きょろきょとネメシアを探すと、ちょうど現れた。
「ごっめーん!」
「ごっめーんじゃない。どこへ行っていたんだ。危うく禁断の百合展開になるところだったぞ」
「は?」
意味不明とネメシアは怪訝な顔をした。
……ま、そうですよね。
「そんなことより、すっごい情報を手に入れたわ!」
「情報ォ~?」
「そ。情報。この近くにね、超有名な情報屋さんがあるの。私、そこの常連だからタダでいろいろ教えてもらえるんだ。えっとね~」
ネメシアが何かを話そうとした瞬間だった――
===== !!!DANGER!!! =====
【国の存亡を懸けた討伐】
【ブラスターボス『カオスデーモン』 1体 を 討伐せよ!】
【報酬期待度:☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆】
===== !!!DANGER!!! =====
『緊急! 緊急!! 国外にブラスターボスの『カオスデーモン』が召喚された!!! 自信のある冒険者たちは大至急――オバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!!!!』
「アナウンスが滅びた!!!」
てか、オバアアンってなんだよ……。
「え……国外にブラスターボス? うそ……」
「ネメシアよ、ポカンとしてないで状況を整理しよう。ロドスはあらゆる意味で処刑した……だから、モンスターは襲ってこないじゃなかったのかよ!?」
「ダ、ダメだったみたいね。ていうか、秘密結社……いえ、スターゲイザーがいるんだもの。そう簡単には平和にならないわ」
ですよねええええええええ!!
ちくしょー。少しはまったり出来ると思ったんだがな。
ん、まてよ。
「……ふぅ」
「ん、どしたのヘデラ。深呼吸なんてして」
「おう、トーチカ。なんかな、アレ倒せそうな気がするんだよ」
「え、ほんと? あたしは無理だなー。あんなデカイの」
そう、カオスデーモンは城の十倍はある巨人悪魔だった。
いくらなんでもデカすぎる。今にもビーム撃ってきそうだ。
「呼びました?」
俺の心を読んだかのように、エコが頭上に現れた。
「呼んでねーよ」
「ヘデラさま。どうやら、あなた様には特別な力が眠っているようですね」
「分かるのか」
「いや、あの……先の大会で出していたではありませんか。【オートスキル】ですよ」
「ん、ああ。すまん、覚えていない!」
ヘニャっとエコは脱力した。
「そ、そうでしたか。……いいですか、多分、ヘデラ様はまっとうな聖女ではないのですよ。もっとあなた様に適したスキルがあるのです。それがあの――」
【オートスキル】というわけか。
うろ覚えではあるが、確かに手に馴染んでいるが如く使い慣れていた――ような気がする。すまん、正直曖昧すぎて分からんかった。でも、次こそは感覚を掴んでやる。
「よし、試してみるか。ネメシア、俺にやらせてくれ」
「……ヘデラ。……あんまり無茶はして欲しくないけど、でも、どのみちこのままじゃ、国が滅んじゃうものね。分かった。でも、その代わり配信させてよね!」
ピシっと人差し指を向けてくるネメシア。
「ああ、俺でどんどん稼いでくれ! その金はレメディオス復興資金に充てる。いいな!」
「えー、少しくらい贅沢したっていいじゃなーい」
「分かった。少しな。少しだけな」
交渉成立だ。
なんとやっとると――
カオスデーモンの口から、ヤバすぎるレーザーが飛んで来ていた。
でけぇ!!!
だが、今こそ【オートスキル】の出番だ。
「いけよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!!」
すると、
黄金に輝く『覚醒聖槍・ロンゴミニアド』なる槍が射出された。
「まじ!?」
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