第257話 世界一の聖女 - ついでに悪を懲らしめて神聖度超アップ -
意識を失っていたらしい。
見覚えのある寝室は、俺の部屋だった。……ああ、【貴族邸宅】に戻っていたのか。道理で静かだと思ったよ。
「……俺はどうなっちまったんだ」
顔を横に向けると――
「うおっ、ネメシアが白目剥いて倒れてる――――!!?」
「ぷしゅ――――――――――」
「ぷしゅーって!! うわっ、お見せできないほどにお尻が真っ赤っか!! あー…、あれか、ネメシアの母さん……フォルトゥナさんにお仕置きされたのか」
こりゃあ惨い。痛々しい。
ドン引きしていると、コンフォーターがモゾモゾしはじめた。
「うわっ、掛け布団の中に誰かいる!?」
「……ぷはっ、あたしだよ~♡」
「な、なんだ、トーチカだったか。って、んなとこに……」
トーチカが上から圧し掛かってきた。
体重はないので重くはないけど、顔がかなり近い。
「ヘデラ~♡」
「うわぁぁぁっ……!」
キスできそうな距離……!
てか、なんで、そんなベタベタしてくるのやら。てか、肌ツルツルだな、トーチカ。桜色の唇もたいへん柔らかそうである――っていかん。
聖女とメイドがベッドの上で、こりゃ危険すぎる!
「ちょっと、ヘデラとトーチカなにしてるの!」
急に復活したネメシアが俺とトーチカを引き離した。
助かった(?)
「それでネメシア。お尻、平気か」
「平気なわけないでしょ……。身も心もズタボロよ……これじゃ、お嫁に行けないわぁ……」
ぴえんと泣き崩れるネメシアは、哀愁漂っていた。なんかすっごく可哀想なので、同情くらいはしておいてあげよう。
「ネメシア、ところで俺はどうなった? 大会は? ロドスは?」
そう、俺の目的は大会の優勝だった。
それと同時にロドスの悪事を公表しようと思っていたのだが。
「聖女コンテスト――もとい『聖女世界大会・コメット』は幕を閉じたわ」
「そうか」
「ヘデラの優勝でね」
「そうか……やっぱり、はいぼ…………へ?」
今、ネメシアのヤツなんて言った??
優勝??
「マジ!?!?!?」
めっちゃ驚いた。
うそでしょ……俺確か、ネメシアの母さんにかなり追い詰められて、ボコボコにされていたような気がするけど――。
「あんた、最後にスキルを発動したじゃない。あれ、なんだったの? 見たことも聞いたこともないスキルだった。ていうか、聖女のスキルではないわよね」
なぜか疑いの眼差しが向けられる。なんだ、そのセクハラ親父を睨むような目。
おいおい、俺は聖女だっつーの。おっさんじゃないっつーの。
「スキルはともかくとして……俺が優勝……ってことは、世界一の聖女ってことでいいんだよな!?」
「そうね。そういうことになるわね。おめでとう、ヘデラ」
……やった。
「やったあああああああああああああああああッ!!!」
俺は嬉しさのあまり、ベッドの上で飛び跳ねた!!
ネメシアたちも同じように、泣いたり笑ったりして喜んだ!!
「ヘデラ、あんたが最強よ。だから、優勝賞品として【スターダスト】が贈られるわ。近日、ミケネコヤマトの宅配便で送られてくるみたい!」
「まじ!? てか、宅配便で送られてくるって……まあいいか!」
そや、【スターダスト】が貰えるなんてそんな話、あったな!
大会参加前くらいにそんな話があった気がした。
すっかり忘れていた!
なんだろう、ちょっと得した感じで嬉しい。
「じゃあ、あと二個集めれば……」
「願いが叶う」
……ニヤっとネメシアが言葉に続いた。
おぉ……あと二個かよ。
そのうちの一個は、この国の城のどこかにあるという。
「な、なんだ、【スターダスト】って案外、この国に集中していたんだな」
「そうみたいね。あ、そうそう! ロドスの件だけどね、トーチカ」
ネメシアがトーチカに話を振った。
「うん。ヘデラあのね。ロドスの悪事はね、あたしが代わりに公表しておいた。大会が終わったあと、全観客に真実を話した。そしたら、みんな怒り狂ってロドスを捕まえにいったの」
トーチカによればその当時、真実を知った観客が全員修羅と化したとか何とか。その場面だけ教えてもらうとこうだった。
『ふざけんじゃねええロドォォォォオス!!!!』『殺せ殺せぶち殺せええええええええ!!!』『ロドスロドスロドスはどこだあああああああああああああああッ!!!』『あのクソジジイ、ウチの娘にも手を出しておった!!!』『モンスターを国に入れていたとか、ふざけんなよ!! おかげで家はメチャクチャだ!』『国を何だと思っているんだあのゴミめ!!』『国中を探し回れ!!!』『うおおおおおおおおおおお!!!』『ヤツは噂の秘密結社の仲間だろ!? ぶっ潰せ!!』
……シーンが目に浮かぶ。
「そ、それで……どうなった?」
トーチカはいつもの虚ろな瞳ではなく、希望に満ちた瞳で外を見た。
……外?
俺は起き上がって窓辺へ。
「……外が騒がしいな…………え、えぇ!?」
外を見ると――
『聖女ヘデラさまぁぁぁ!!』『世界一の聖女はあなたさまです!!』『大会優勝おめでとう!!』『ロドスの悪事を暴いてくれてありがとう!!』『ロドスはこの通り、公開処刑だ!!』『これで国は平和になったぞ!!』『ヘデラさま最高!!』『ずっとこの国にいてください!!』『栄光あれ!!』『お姉様ああああ!!』『ヘデラ! ヘデラ! ヘデラ!』
邸宅の前に数百……いや、数千人規模が群がっていた。
なんだこりゃー!?
「……お、おいおい。すげぇ事になってるな」
よく見ると、ロドスは十字に磔にされ、ロープでグルグル巻きに。国の人たちの恨みだろうか、ボコボコのギタギタにされていた。顔面の原形がなかった……。こわっ……!!
「ま……ロドスは今までレメディオスにモンスターを突っ込ませ、襲わせていたんだ。当然の報いだ。死刑にされないだけマシだろう」
そうだ。俺はこの為にずっと頑張ってきた。
これでもう、レメディオスにモンスターは現れないはずだ。
……そうだろ?
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