第248話 秘密結社の男 - 暗躍するものたち -
俺はひとり人混みを抜け、モンスター襲来の原因を作っているジジイ『ロドス』を尾行した。……人目を避けていったいどこへ行くんだ。
しかもなんだ、あの面白くなさそうな不貞腐れた顔。
バレないよう進んでいくと、街からかなり離れた普段は通らないような裏路地へ着いた。……ここは、なんだ。……ん、倉庫?
「なんであんな倉庫に。しかも一人で? いや、誰かいるな」
息を潜めて俺は、ヤツの会話を盗み聞きすることにした。
「……なに、失敗しただと? それでは我ら【秘密結社】の悲願――いつ成就できようか。貴様の数々の失敗は目に余るものがある。いいか、これ以上の失敗は許されぬ。あの御方の寛容なお心も、いつまで大らかでいて下さるか分からんぞ」
――な。【秘密結社】だって!? あの女王様が言っていた……謎の組織のことか。まさか、こんなところに居たとはな。
「そ、それは……。どうかお待ちください。このロドス。今度こそこの王国を徹底的に破壊し、【スターダスト】を手に入れてご覧にいれましょう。
ですが最近、『聖女』なる女が著しい活躍を見せているのです。あの女をなんとかせねば……」
しかもあのロドス……関係者だったのか!! そうか、それで大量のモンスターを国に襲わせて……やっと点と点が線で繋がった。
これは間違いない。
ロドス、あいつは【秘密結社】の一員だ。
しかし、ロドスが話している相手の顔はまったく見えない……どうなってんだ。俺は更に耳を傾けた。
――が、そんな重要な時に
『ぐぅ~~~~~~……!!!!!!』
俺のお腹が爆撃の如く鳴った。
……あ、昼からなんも食ってないや。って、まずい! 今ので向こうがかなり不審に思っている。どうする……誤魔化すか! よ、よし。
『にゃぁ……』
「なんだ猫か……」
「えぇ! ゴータマ様。今の猫なのでしょうか!?」
なに、『ゴータマ』? それが相手の名前か。俺の咄嗟の行動がまさか相手の名前を引き出すキッカケになるとはな。
「どう聞いても猫だったろう。猫が腹を空かせていた。それだけのこと」
「そ……そうなんですかねえ。このロドスにはそうは聞こえませんでしたが……」
「なんだと!? 貴様、吾輩を疑うというのか!?」
「いえいえ! そんな恐れ多い……失礼を」
あのロドスが『ゴータマ』だとかいう奴に恐れをなしていた。それほどの相手なのか。だけど、これでロドスを追いつめられれば【秘密結社】にも繋がる。
「では、ロドス。期限は三日だ。それまでにこの国あるという【スターダスト】を探し出し、奪うのだ。吾輩は他の王国へ赴き、貴様と同じ【七人の暗躍者】のひとり――『ハリカルナッソス』に命令を下しにいかねばらん。任せたぞ」
「う、承りました。ゴータマ様」
「ところで、ロドス」
「は、はい……なんでしょう」
「貴様、この国……街の住人、特に若い娘に手を出しているそうだな。いいか、そのような無知蒙昧は許されぬ。【秘密結社】の情報漏洩は死へと直結するのだ。それは貴様も重々承知しているはずだ。分かったか」
「は……弁明する余地もございません。軽率な行動、大変申し訳ございませんでした。以降は『熟女』に切替を――」
「バカモノ!! 吾輩の話を聞いていたのか、貴様!!」
おいおい、ロドスのやつまるで懲りてないじゃないか。つーか、あいつの守備範囲どうなってんだよ。女なら誰でもいいのか。サイテーだな。
「まあいい。大目には見てやるがな、あの御方の気分次第では貴様は葬られるかもしれん。精々気をつけるのだな。ではさらばだ」
とゴータマとかいうヤツは……忽然と消え去った。
なんだ……姿がまったく見えなくなったぞ!
スキルか何かだろうか?
まあいい、収穫は十分にあった。これでロドスを追いつめてやる。――と、その前に街を復興してからな。それからでも遅くはないだろう。
さて、そろそろ皆戻ってくる頃合いだ。
俺はひっそりこの場から去った。
『ぐぅ~~~~~~……』
あ、だめだ。その前に腹が減った。なにか食べようっと!
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