第247話 聖女の建築スキル - 奇跡の力で国を救え!! -
みんな楽しんでいた『カーニバル』は一変し、怪獣大戦争になっていたが、それは程なくして解決した。まさか猫が王国――いや、世界を救ったと言っても誰も信じないだろうな。というか、真の正体はとんでも激カワロリ少女だったけど!
「なにをブツブツ言ってるのよ、ヘデラ」
「おう、悪いな、ネメシア。なんでもないよ」
「そ。それにしても……わたしの【レッドスター】が……はぁ」
「落ち込むな。ほら、【グリーンスター】ならあるぞ」
「嫌よ! 赤がいいの。赤じゃなきゃ嫌!」
「ワガママだなぁ。分かった。ちょっと待ってろ」
「え?」
俺は噴水へ向かい、水中に落ちていた【レッドスター】をつかみ取り、さも当然であるかのように堂々と拾い上げた。
「はい、ネメシア。俺からの素敵なプレゼントだ」
「はぁ!?」
はぁ……って、なんでそんな驚く。
「……あ、ありがと。けど、普通一度落ちた【スター】は拾えないはずなのに……。あ、そっか。ヘデラは『聖女』だから……まさか!」
「え? まさか?」
「う、ううん。なんでもないって。でもありがとね」
まぶしい笑顔を向けられて、俺も嬉しかった。
やっぱりネメシアは笑顔が似合うな。
「でもさ、これってまた入れたら、どうなるのかしら」
「ヤメトケ。またバケモノが出るだけだろ。下手すりゃ爆弾だぞ」
「う……そうね。止めておきましょう。ハズレを引いた時が怖すぎるわ。さて……うーん。カーニバルどころじゃなくなっちゃったわね」
街並みを見渡せば、どこもかしこも絶望的に倒壊している。
半壊どころじゃない、全壊だ。瓦礫の山だ。全部、さっきの『ごつごつのごっついミノタウロス』のせいだ。あれが暴れたせいで、国はまた……人的被害だって出てる。
今は王国のアマゾネスたちが救出作業やら、怪我人の手当てで動いている。けれど……建物はやっぱり元には戻らない。
だから、俺の出番だ。
「ネメシア。俺は【建築スキル】を使う」
「うん。いいと思う。それがヘデラの使命なんでしょ」
「そうだ。俺はなんつったて『聖女』だからな。それにさ、エコがいつしか言っていたんだよ。世の為、人の為――それが私のプライオリティーってな。まったくもってその通りだ」
俺は【パープルスター】をセット。
【極スキル】として変換され、【建築スキル】を覚えた。本来【極スキル】は【スターレベル】を上げないと覚えられないらしいが、こういう近道もあるようだな。
これであと二個は【極スキル】を覚えられるようだが、まあ今はそんな余裕はないな。
「よーし。じゃ、さっそく近所の服屋で、レモネードさんの家を直すぞ。この前、下着でお世話になったからな。特別に優先する!」
「そんな理由で……」
「おいおい、そんな呆れたような顔すんな。優先順位ってものがあるんだよ。それじゃ、建物の再構築開始――『復元』! って、材料が足りないー!? そか、修復するにも大量の『木材』が必要なのか……」
なんてこった。触媒が必要だったとはな!
まあ、そういうスキルもあるわな。
「木材取ってきた」
『ど――――――――――ん!!!!!』
――と、置かれたそれは『木材』に他ならなかった。
「トーチカ! タイミング良すぎだろ……姿が見えないと思ったらどうして」
「ここあたしの国。自分の国を復興する、当然のこと」
そうか、たまに建物が復活していると思ったら、トーチカの仕事だったか。もちろん、アマゾネスたちも奮闘しているとは思うけど。
あの木材の量を見てしまうと、トーチカがほとんどを担っているとしか思えない。
「ありがとう! 使っていいんだな?」
「うん、そのために【建築スキル】を高いお金で勝ち取った。あとはお願いね」
メイドらしく、トーチカは頭を綺麗に下げた。
あんな丁寧なお辞儀されちゃ、その期待に応えるしかないだろう。
「いくぜ! 今度こそ再構築開始――『復元』!」
ピカッと光り、崩れていた建物が一瞬にして『復元』されていく。まるで逆再生を見ているみたいだ。どんどん積みあがっては、家が建っていた。
「「「「「おおぉおおおおおっ!!」」」」」
感心、そして、どよめきとなった。
「うぉ、すげえ!!」「こ、こりゃ奇跡か……」「あの聖女さまがやったのか」「こんなの人生で初めて見たぜ!」「ヘデラさま万歳~~~!!」「元通りになってるよ。うちもやってくんねぇかなぁ」「へえ。大工聖女さまかあ?」「オレっちの家もおねがいっす!」「聖女さま、かっけえ!」「俺、聖女さまに惚れたっ」「レメディオスNo.1の聖女は、ヘデラさまでちげぇねぇ!」
などなど、多数の有難きご声援が。
いやぁ、俺もハッピーだし、みんなもハッピー! なんて気持ちのいい仕事なんだ。よし、続けて他の倒壊した家も直して直しまくるぞ!
「俺が全部、元通りに直してやる。トーチカ、もっと木材を!」
俺がそう要請すると、
「受託した。ただし、あたしのアイテムボックスじゃ限界がある。ネメシアの『ホワイト』のストレージを借りたい。いい?」
ネメシアを透き通った目で見つめるトーチカは、どこか生き生きとしているように感じる。ほー。あんなトーチカを見るのは初めてかもな。なるほど、彼女も世の為、人の為に本気か! いいねぇ。
「あーうん。いいけど、木材を?」
「そ。たくさん持ってきて、たくさんの家を直す。大丈夫、生態系にダメージを与えないほどに伐採する。それと木はすぐに生えてくるように……エコ、なんとか出来る?」
「ええ、私にお任せ下さい。他ならぬトーチカのご要望ですからね。いいですよ」
どうやら話は纏まったようだ。
「じゃ、行ってくるわね、ヘデラ」
「待っててね~」
「少々お待ちください」
「みんな頼んだぜ」
ネメシア、トーチカ、エコは『木材』を入手しに外へ向かった。俺は待つしかなさそうだな。さてと――ん?
「あれ……あの人。確かセクハラジジイの『ロドス』っていったか」
この国【レメディオス】で有名な変人ジジイじゃないか。
そや、前に抱きつかれたっけな。ああ、思い出しただけでゾっとしやがる。それと、どこかのおばちゃんから情報提供を貰ったままそれっきりだった。そうだ、アイツを何とかしなきゃ。
つーか、【クリスピア】にも同じようなのがいたな。――ったく、ジジイはそういうヤツばかりなのか……。まあいい、とにかく今は『ロドス』が問題だ。
すげぇ怪しいし、追ってみるか。
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