第243話 筋肉モリモリマッチョマン - レジェンドギガンテス -
邸宅に戻った俺たちは、そのまま大浴場へ向かった。
脱衣所で衣服を脱ぎ捨て、いざ中へ――。
「って……げっ!! 男!?」
なんかマッパの筋肉モリモリマッチョマン……年齢でいえば三十か四十くらいの男が堂々と湯に浸かっていた。体の傷の数すげぇな。歴戦の勇者って感じのゴツイおっさんだ。
「キャアアアアア! ヘンタイ!!」
全裸の男を直視したネメシアが絶叫した。
トーチカはゴミ虫でも見るかのような目線を男に送っていた。目が据わってんなぁ。こわー…。
つーか、俺、あの男に……
裸をガン見されとるじゃないか!
「げぇ! まったく隠してなかった。タオル!」
普段は隠してないから悪い癖がここにきて不運となった。これからはバスタオル巻くクセをつけようか……。この邸宅の風呂はモンスターとか何かと色々出るし!
ちなみに、ネメシアとトーチカはバスタオルをきちんと巻いていた。さすが根っからの乙女は違うな。ということで速攻で脱衣所に戻り、バスタオルを巻いてきた。
――で、また男の方へ。
「おい! おまえ、なに人ん家に勝手にあがりこんでんだ! 住居侵入罪で訴えるぞ!」
「あ~~~~~~~!?」
「あ~~~~~~~!? じゃねぇよ! バカ筋肉」
「これは驚いた。噂の聖女が裸でしかも、ここまで乱暴な言葉遣いだったとはな。腹を抱えて笑ってしまっ……ダハハハハハハッ!」
大男は爆笑していた。
く……ヤロー。俺の秘宝を見た代償は高くつくぞ。
「いいから出ていけ……って、うわ! 立ち上がるな!」
男は湯から出ると腕を組み、堂々と俺の前に立った。おいコラ、下のアルティメットギガンテスが丸見えじゃねーか!! 気色悪い! おえー!!
俺が純粋な乙女だったのなら、泣いて、吐いて、走って逃げだしているところだぞ! だが、幸いにも俺は――いや、それはあえて言うまい。
「…………く」
「ほう。私のレジェンドギガンテス……[ドーン]で[パオーン]の[ズキューン]が気にらないのだな。大抵の女性は逃げ出すか、その一点に注目するのだが。君は後者かね」
「知らねーよ!! つーか、おい! [ドーン]で[パオーン]の[ズキューン]とか言うな! もっと間接的に言えよ!?」
もうネメシアとトーチカが死んだ顔をしている。というか、二人ともよく逃げ出さないな。あ、恐怖で動けないってヤツか。顔面蒼白つーか、顔面蒼黒だしな。
「まあいい。なにはともあれ聖女、君が女で安心したよ。娘をよろしく頼む」
「あ? 娘? なんだ、ネメシアかトーチカの親父さんか?」
だが、筋肉男は答えない。
ただ俺だけを静かに見つめ…………う。すごい眼力だ。なんで、俺をそんな睨む!? しかもレジェンドギガンテスのままだ。ヤメレ! 目が腐る!
「それでは、邪魔したな。私は帰る」
「いや、帰るって……そっちは崖っぷちだぞ」
男は助走をつけ猛スピードで走り出すと、そのまま飛び立った。えー…飛べるの!? 筋肉モリモリマッチョマンが飛行していた……しかも全裸で。
「……なんだったんだ、ありゃ」
意味分からん。
「なあ、ネメシアかトーチカ、あのヘンタイに見覚えはあるのか」
二人とも硬直し、青ざめていた。
だめだこりゃ……立ったまま気絶してら。うーん、とりあえず、温泉に突っ込むか。
俺は二人を温泉に入れた。
「…………はっ、なんかトンデモないヘンタイが」
「おはよ、ネメシア。あれはお前の親父さんか?」
「いえ、そんなわけないでしょ、あんなヘンタイ。ていうか、わたしには母親しかいないし」
「そっか」
そーすっと、トーチカっぽいな。
「なあ、トーチカ」
「ぶくぶくぶく……」
お湯をぶくぶくさせてなんだか不満そうだった。なるほど、あの感じだとトーチカの親父さんだったのかもしれないな。つか、100%そうっぽい。
「はぁ~、それにしてもこの大浴場はなんでいろいろ登場するんだか。呪われてるんじゃねーだろうな。今度、お祓いしてもらおうか」
女王様め、変な邸宅を貸してくれたものだな。
別に恨みはしないけど。
「ねえ、ヘデラ」
すっかり元気を取り戻したネメシアは、俺の肩を指で軽く叩いてきた。
「ん?」
「あー…ほら、さっきのトラブルのせいで体洗ってないじゃない。だから、向こうで一緒に体を流しましょう。もちろんトーチカもね」
「なんだ、ネメシアが清めてくれるのか」
「いいわよ。ヘデラもトーチカもまとめてやってあげる」
「なんだ案外、ネメシアは世話焼きなんだな」
「そうよ。ママの影響なんだけどね」
そっか。ネメシアにもそりゃ家族はいるか。へえ、どんなお母さんなんだろうなあ。きっと、とんでもない母性のある超絶美人なんだろうな。ネメシアがこんな女神のように可愛くて、優しいんだし。
――ん、あれ。
エコはどこいった?
「ぶくぶくぶくぶく…………」
温泉の底からエコが浮いてきた。
まるで水死体――土左衛門のように。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
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