第242話 レメディオス帰還 - スターカーニバル -
やっと王国【レメディオス】へ辿り着いた。
ここまで紆余曲折あったけれど、無事に【建築スキル】を手に入れたし、これでやっと王国復興に貢献できる。
久しぶりの王国城門前。
「やっとかぁ。ここまでの道のり、長かったな」
「うん。色々あったけど、やっとね~」
ネメシアは、俺を真似るように深いため息を吐き出した。どこか疲れているようにも見える。うーん、少しは休まないとな。
「ヘデラはこれから【レメディオス】の再建をするの?」
「まてトーチカ。なんでそんなスカートをギリギリでたくしあげて質問するんだ!? パンツが見えちゃうだろ」
「ふふ。ヘデラを誘惑してるの」
「魅力的に感じない事もないけど、女同士じゃそれほどな。……まあ、再建は女王様の仕事だろう。俺はあくまで困ってる人の家を【建築スキル】で直してやりたいだけだ。けどそうだなー。旅でちょっと疲れちゃったし、いったん【貴族邸宅】へ戻らないか」
「わたしは賛成」
「あたしもサンセー」
ネメシアとトーチカは大賛成。
「エコは?」
「私もです。爪を研ぎたいので! ほら。この前の貴族のときです。私はこの爪の偉大な威力に気づいてしまったので、今後は武器として有効活用をしようかと」
「そんな理由かよ! お前には立派でユニークな『ビーム』があるじゃないか」
「それはそれ。これはこれです」
「そうかい。まあいい、じゃあ戻るか」
★ ★ ★
【 レメディオス 】
やっと帰ってこれた!
「って、なんだこりゃー!?」
王国の中は『カーニバル』状態だった。
てっきり俺たちが不在の間に、また大量のモンスターが襲撃してきて今度こそボコボコにやられちまったのかと、凄惨な光景が一瞬、脳裏を過ったのだが――それは杞憂に終わった。
「こりゃ、お祭り騒ぎじゃないか」
倒壊している家は依然として多いものの、みんな楽しそうに出店を回ったり、商人の出す露店でアイテムの売買をしたり活気にあふれていた。
「スターカーニバル」
目を輝かせるトーチカは羨望の眼差しであった。あー、そや、トーチカはこの国の出身だから知ってるのか。
ていうか、あの目。お祭り好きそうだな。トーチカの視線をたどると果実を丸ごと飴にした赤い物体に目がいっていた。あれが気になるのか。よし、あとで買ってやるか。
しかし、俺はアレの方が気になった。
「ん~? よく見ると、むっさい男どもが裸になっているな」
「あれは『ハダカ祭り』だよ。ああやって国の安全とかを祈願しているみたい」
なるほど。あのフンドシ集団はそういう催しか。
汗臭いというか男くさいというか……迫力はあった。
「ヘデラ~! この『ポテポテ』すっごくおいしー!」
ネメシアはもうカーニバルに参加していた。頭には謎の宇宙人のお面、右手には『ポテポテ』とかいうポテトの美味そうなヤツ。それと左手にもこもこの『ワタアメェ』だと……!
こいつ、完全に祭りを楽しんでやがる!!
「あと、こんなチラシも貰ったわよ~」
「ん、チラシ~?」
ネメシアから怪しい紙を貰うと、そこにはこう書かれていた。
『聖女コンテスト』
へー…?
聖女コンテストぉ!?
なになに――
『年に一度の聖女を決定します! 自信のある方は、カーニバル最終日に会場にこられたし! No.1の聖女には【スターダスト】をプレゼントだ!」
「なっ……なんだと。おいおい、世界一の聖女ならもうここにいるだろ!?」
「………………」
なんか、ネメシアもトーチカも、ついでに猫もだんまりだった。つーか、そんな目で俺を見るなぁぁ!!
「おい、お前ら! そこは応援するとこだろ」
「まあそうね。じゃ、ヘデラ。そんなに自信があるのなら出場してみれば~?」
「もちろんだ。なんならネメシアも出るか? 世界一の聖女になれるかもだぞ」
「わたしは聖女じゃないしパス」
それもそうか。
「あたしは野菜とか果物をチャージしたい」
「トーチカも不参加っと」
エコは猫だから無視しておこう。
――と無視しようとしたが、なんかスゲェ聞いて欲しそうな眼差し!! あんなキラキラ光線を出されては……! だが俺は!
「ぷいっ」
「がーん!」
深いショックを受けるエコ。
「いやいや、猫じゃどう考えて無理だろ」
「猫にだって人権はあります!!」
「どちらかと言えば……猫権?」
「しゃべれますから!!」
「そういう問題じゃねーだろ……」
「そういう問題です! 出場します!」
「すんな!!」
猫の出場は俺が断じて認めん!
――ということで、カーニバル最終日に『聖女コンテスト』に出場することになった。
★ ★ ★
さて、久しぶりに【貴族邸宅】に到着する。
「なんか遠い過去のような気分だぜ。懐かしく思えるな」
「そうね~。しかも数日しかいなかっし。……ま、わたしはお風呂入りたいわぁ」
「お、奇遇だな。じゃ、一緒に入るかネメシア」
「いいわよ~。ヘデラの背中流してあげる♪」
「おう、頼むわ」
「あたしも入るー!」
「では私も」
なんだ、結局みんないっしょじゃないか――。
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