第25話 リミットブレイク - 守るべきものたち -
上空に『ブラックホール』が発生していた。
吸い込まれるような気配こそないが……
そこからドラゴンが……飛翔してきやがった!!
なんだ、あの黒くて、アホほど巨大なドラゴンは!?
そう立ち尽くしていると、どこかの騎士が、
「お、おい……あれは、聖地・パーシヴァルのあれだろ……! レイドボスの『アルティメット・デス・アナイアレイション・ドラゴン』だぞ!!」
そう慌ただしく説明してくれた……。
「なんだって……!!」
俺は咄嗟に、ドラゴンのステータスを読み取ろうとする――が、
アルティメット・デス・アナイアレイション・ドラゴン:【Lv.XXXXXX】
<< All Status Unknown >>
「んなアホな! 全てのステータス不明!?」
「そうなのです、サトル殿。
言い忘れていましたが、全てのレイドボスのステータスは解析不可能なのです。そして、この『聖者祭』になると、レイドボス一体が必ず『花の都・フリージア』上空に出現して【襲撃】をしてくるのですよ」
「なんだってぇ~…。王様、それって国が滅ぶんじゃ!」
「大丈夫です。私のスキル『ミレニアム』――強固なバリアが都全体を守っているので、どのような攻撃を受けても突破されません。それが例え、レイドボスでも」
王様はそう自信満々に言い切るが……
いや……確かに、さっきからドラゴンが上空で、バリアを破壊しようと大暴れしていたが……『ミレニアム』だとかいうバリアはビクともしていなかった。レイドボス相手に凄いな。
「こ、これなら平気か……」
と、安堵していると、
ドラゴンが突如、グルリと向きを変えた。
その鋭すぎる視線の方向――それは……
俺の『山小屋』だった。
「おい……あのドラゴン、まさか!!」
しまった、あそこは都の外じゃないか!!
バリア圏外っぽいぞ!!
やべえ……ウッカリしていた!
まずいぞ、なんとかして小屋を守らねば――しかし、時既に遅し! ドラゴンが俺の『山小屋』に狙いを定めやがった!!
ドラゴンは、口からブレスと……
更に、両翼からも莫大な、しかも禍々しいエネルギーを急激に溜めはじめ……
最終的に計7つの塊を溜め――
「まずい、山小屋が破壊されちまう!! させるかよぉぉぉ!! 王様、部分的でもいい! バリアを開放してくれ! 頼む、この通りだ!」
「ええ。サトル殿には、家を守る権利があります。承知致しました。では、三秒間だけバリアの一部開放をします」
「ありがとう、王様!」
俺は『ニトロ』の超爆発を利用して、跳躍した!
上手くいった……!
昨晩の『ポルターガイスト』襲撃時に練習しまくった甲斐があったぜ。
そうして、空へなんとか吹っ飛び、一部開放された穴から外へ這い出た。そこから、ドラゴンとの距離を一気に詰め――!
「このクソドラゴン、俺の家を狙うんじゃねぇ!!」
正面からじゃあ……一瞬にしてお陀仏だろう。
だったら、あの巨体の死角で、なおかつ存在がバレにくい、尻尾に!
ガバッ!!
――俺は、見事ドラゴンのゴツゴツの尻尾の先にしがみつく事に成功! 尚、ドラゴンの尻尾に俺という存在がすっぽり隠れるほどなので、ドラゴンがいかに巨体か分かるな。
って、そりゃいい!
「くらい、やがれっぇえぇえぇぇ!! 自爆!!」
尻尾にしがみついた状態で、俺は何度も自爆した。何度も何度も何度も自爆しまくって、ドラゴンのHPを削っていった!
ちなみに、俺自身にダメージは一切ない!
昨晩の戦いで、スキルレベルカンストしたおかげだな。
「これだけ自爆攻撃を食らわせれば……」
あまりに自爆しまくったせいで、煙が充満している。視界不良だ。
その煙が段々と晴れてくると――
『グゥゥゥ……!』
ドラゴンは唸り、傷ひとつなくピンピンしていた。
それどころか、俺という存在にすら関心がないようだ。
気をそらすことすら無理なのか!!
「まじか……クソッ!!」
あれだけの超爆発でもダメなのか!
さすが、世界最強のドラゴンってことか……。
ああ、チクショウ! このままでは、ブレスを放たれ、小屋が!
俺は……、俺はどうすりゃ……!
『サトル……サトル!』
――こ、この声、メサイア! 俺の脳に直接!
(メサイア、お前もリースみたいな『テレパシー』が出来たんだな)
『リースの力を借りたの。ねえ、サトル、家を守らなきゃでしょ。アレは私たちの家なのよ』
(分かってる! でも……敵が強すぎてな……)
『わかった……『力』が欲しいのね。大丈夫よ、あんたには、勝利の女神がついてるのよ。私があんたに力を貸してあげるから』
(メサイア……!?)
『実はね、あんたの【オートスキル】にはリミッターが掛けてあったの。だから、火力もあんまりなかったし、【オートスキル】にセットできる数もたったの四つだった。でも、『リミッター解除』すれば、サトル、あんたの『力』は今の数十倍――いえ、数百倍にも跳ね上がるし、セットできる数も【無限】よ。けどね、身体が耐えきれるかどうか……そこだけが心配ね』
(今は、細かい事を気にしている暇はない! 構わん、やってくれ!)
『……わかった』
『兄様! わたくしも応援していますよ! みんなの家を守りましょう!』
(フォル! よし……!)
『サトルさん。さっきは助けてくれて、有難うございますぅ……』
(リース! いや、いいんだ。俺の方こそ辛い思いをさせてしまって、すまなかった……これが終わったら、デートしよう)
『はい……絶対に!』
(よーし、メサイア。リミッター解除とやらを頼む!)
『まって、サトル。その前に作戦はこうよ――』
まじか! ソレをやるのか! でも名案だ。あんなレイドボスをぶっ倒すよりは、よほど合理的だろう。逃げるが勝ちだ! 命あっての物種だ!
(オーケー。頼むぜ!!)
『サトル、あんたの力を【解放】するわ!!』
「――――――!!」
こ、この『白と黒の光』はいったい……!
それは、俺の身体に溶け込むや……!
<< LIMIT BREAK >>
なにか、よく分からんが【解放】された。
【リミットブレイクⅠ】
効果:全ステータス+3000、全スキルレベル+5、死亡時、一度だけ蘇生できる。蘇生後、【リミットブレイクⅡ】アンロック。
「……こ、これはスゲェ! けど、今はこっちだ」
【運搬スキルLv.MAX】
効果:すべての物体を運びやすいサイズに変換する。個数に関わらず、サイズを自在に変えられる。また、指定した物体を自動的に取得・アイテムストレージへの搬入が可能になる。
「……きたきた! メサイアの言う通りだ……! 作戦通り、これを任意で発動する!」
【運搬スキルLv.MAX】を即座に発動し――、
「今だ!! 『山小屋』をミニチュアに変換し、俺の元へ!!」
それと同時にドラゴンが、
『ヘルインフェルノ・ダークデスブレス(仮)』を放った――!
(仮)ってなんだ!?
……どうやら、スキルでさえ、読み取り不可能らしく、スキルに(仮)が付いてしまうそうだ。多分、そんな感じのスキルだってことだ。
そこまでか……!
などと感心しとる場合じゃない!!
『ヘルインフェルノ・ダークデスブレス(仮)』が猛烈な勢いで迫る中、俺のスキル速度が上回り――、
『山小屋』は瞬時に、ミニチュアサイズに!
そして、それは『自動』で俺の掌に取得された!
「よっし、成功だ!! まさか【運搬スキルLv.MAX】が使えるとはな……こいつぁ便利すぎるぞ!!」
かつて『山小屋』があった場所は、もう何もない更地の状態だ。
そこにブレスが打ち放たれ、暗黒の炎が広がるや、大穴が空き、被害が少ない場所ですら、荒野へと変貌を遂げていた。
「……な、なんつーパワーだ。無茶苦茶だぞ、あのドラゴン! あんなもんが山小屋に直撃していたら……チリも残らずだ」
でもって『ニトロ』の爆発の反動を使って、戻る!!
王様が察してくれたのだろう、バリアが一部開放されている。
目の前でニトロを爆破させ、その衝撃で一部開放されたバリアの穴に入る。上手く自身をホールインワンさせ、すぐにその開放されていたバリアは封された。
なんとか爆風を利用、ジェット噴射の要領で微調整しまくって軟着陸。メサイアたちの元へ戻った。
「っぶねぇ~~~! 死ぬかと思った!」
「サトル! やったわね!!」
わあああぁぁぁ~~~!!
――と、みんな歓喜歓声を上げていた。
メサイア、リース、フォルは俺に駆け寄り、傍で喜び、涙していた。抱きついてきた!
「サトルさぁぁぁぁん! ご無事で良かったですぅ~! あんなバケモノドラゴンを相手に凄かったですよぉ~~~!」
わんわん泣きじゃくるリース。
世紀末共の件といい、いろいろあっただけに仕方ない。
頭を撫でてやろう。
「ご無事でなにより、兄様ぁ!!」
「おいおい、みんな、あんまりギュウギュウしてくれるな。周りからの注目度バツグンすぎて恥ずかしいぞ……! まあ、嬉しいけどさ……。それに『家』が潰れちまうよ」
掌には『山小屋』のミニチュアが。
これで家の移動も、あの薄気味悪い『オッサン』使わなくていいな。
「サトル、よくぞ家を守ったわ!! 頑張った子にはナデナデしてあげるわ!」
俺はリースをナデナデしていたが、メサイアが俺をナデナデしてきた。
なんだ、この光景……。
「じゃあじゃあ、あたしは、ちゅ~してあげるのですよ!」
リースが顔を勢いよく近づけてくる。すると、右頬にちゅ~された。そっちか! いやでも、最高だ……幸せだ。生きていて本当に良かった。
「あぁ~! リースずるいのですよ~! じゃ、わたくしは兄様の左頬を!」
フォルもまた顔を猛接近させ、左頬にちゅ~と。
「………………」
幸せ過ぎて、どうにかなりそう。
つっても……あのドラゴンは健在なんだけどな。
そう、倒してはいない。
あくまで『山小屋』を守っただけ。
……とはいえ、王様のバリアで入ってこれないみたいだし、山小屋は何とかなったからいいけど。
しばらくすると、ドラゴンは諦め――黒い穴へ戻っていった。
帰った……のか。
「終わったようです。皆様、ケガはありませんね。
サトル殿、いろいろあった直後で申し訳ないのですが……『聖者』の道をゆく者が三名おります。その選定を致しますので、こちらへ」
――もっとも、その権利はもう俺にあると、王は小声で耳打ちしてきたが。一応、祭りの形式としてやっておきたいとのことだった。
「まじか……仕方ない。リース、フォル。メサイアも」
「あぁん、兄様~」「サトルさん……」
ふたりとも惜しそうに俺から離れた。
「みんな、行ってくるよ。終わったらどっかに家を戻して、ゆっくりしよう」
「わかった。でも、サトル。これが終わったら話があるから」
メサイアは少し困ったような顔をしていた。
ん~? どうしたんだろうな。
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