第240話 ネメシアを救い出し - 貴族の野望を打ち砕け!! -
【闇オークション】から帰還し、裏路地から表へ出ようとした時だった。
それは突然起きた。
三人……いや、四人か。
――の女たちにネメシアが捕まり、人質にされてしまった。
「きゃぁぁ!? 何、なんなの!?」
「ネメシア!! おい、お前ら俺の仲間になにしてんだ!」
……って、あの女の子たち。
闇オークション会場にいた貴族の『奴隷』じゃないか!!
まさか、これを仕掛けてきたのは……
「くくく……。よくも私の【建築スキル】を奪ってくれたなァ!!」
「てめぇ! ネメシアを放せ!」
「おぉん? 放せはマズイと思うがなぁ!?」
貴族は、奴隷の女の子に指示すると……ネメシアを用水路に突き落とそうとした。
「やめろ!!」
「……ふっふふ、イイ顔だ。そうだ、それでいい。
言っておくが、用水路に落ちれば最後。溺れ死ぬわけだが、その死体は永遠に流され続けるのだ。たとえ運よく引き上げられたとしても、水死体はそれは同情してしまうほどに無惨だ。こんな滅多にいない可愛らしい娘を、そんな凄惨な姿には変えたくなかろう……?」
ゴミ貴族はニヤリと笑い、俺たちを脅してきた。
なんて卑劣! 卑怯! 鬼、悪魔!!
許せん、絶対にだ!! だが、ネメシアを救うのが最優先だ。
「なにが望みだ」
「分かっているだろう?
【建築スキル】だ。『パープルスター』を寄越せ。それで娘は無傷で返してやろう。だが、拒否すれば用水路に落とす。あるいは、私の『奴隷』にしてもいいかもなァ……。これだけの美人を水死体にしてしまうのは、私としてもいささか心苦しいのでな。
……ふむ、そうだな。気が変わった。この娘は、私の『奴隷』にする。もちろん毎日、私ために尽くしてもらう。どうだ、それが嫌なら早く渡すんだ」
俺は…………
懐から『パープルスター』を取り出した。
「ほう。そんなところに隠し持っていたとはな。
聖女、お前もかなりの美人だな。だが、生憎、私の好みではないのでね」
そりゃ良かったよ。
気に入られていたらと思うと、ゾッとするし。背筋が凍るね。いや、すでに凍っている。マジでドン引き。サイテーサイアク。
「トーチカ。あとは頼むぜ」
「うん。ネメシアは任せて。エコ、貴族をお願いね」
「了解しましたよ、トーチカ」
トーチカにすべてを任せた。
さて、俺は『パープルスター』を持って、貴族に近づく。
「よしよし、素直でいい子だ」
「…………」
スキルが貴族に手渡される……
その時だった――。
わずか数秒でトーチカは【アパッチ・ナックルダスター・リボルバー】を『リボルバー』に変形完了させ、即魔弾を連続ショットした。
放たれた魔弾は『奴隷』の女の子たち四人のそれぞれの足に完全命中。威力は抑えていたようで、彼女たちはよろめき、そのまま地面にペタンと腰をつけた。
さらに、
エコもダッシュで貴族に向かっていた。
そして、
「ギャアアアアアアアアァ!!
なんだこのクソ猫は!! うああ、やめろ! 私は猫アレルギーなのだああ、うあああ、私の顔面をひっかくなぁぁぁ!!! ンギャアアアアアアアアアアアアぁ~~~~!!!」
エコは、容赦なく貴族の顔面を鋭い爪で攻撃しまくっていた。あのひっかき攻撃、想像以上に威力ありそうだな!
いまだ!!
「ネメシア!! こっちだ! 手を伸ばせ!!」
「ヘデラ! うん……!」
今にも用水路に落ちようとしているネメシアを、俺は引っ張り上げた。
勢いで俺の胸に飛び込んでくるネメシアを捕獲し、誰にも奪われないようぎゅっと抱きしめた。
あっぶねぇ~…。
もうすぐで頭から落ちるところだったぞ。
肝を冷やした。身も凍るくらいにヒヤヒヤしたぜ。
「ネメシア、無事か!? どこにもケガはないよな!?」
「うん、平気。ヘデラ、ありがと……みんなも」
安心したのか、ネメシアは少し震え、若干涙目だった。
やっぱり怖かったんだな。
「ヘデラぁ…………」
「うん。ネメシア、好きなだけ俺の胸の中で泣いていいぞ」
「……くぅ~~~!!!!!」
「……へ?」
ネメシアは唐突に唸り声をあげた。なにごと!?
「ちょっと! ヘデラ、また胸大きくなった!?」
「そっちかよ!! って、知らんがな。自分じゃ分からんって」
「こ、こんなことって……」
「っておい、バカ。揉むな! 人前で恥ずかしいだろうが……うぅ」
その時、ゴトリと嫌な音が。
「アッー!! 王子が大量の鼻血を噴出してぶっ倒れた―――!!!」
ラナンは地面に仰向けでぶっ倒れ、鼻から大量出血していた。体はピクピクと痙攣し、ヤバソーな感じだった。
ていうか、地面が血塗れになっていた。
これちょっとした殺人事件になっとるぞ!?
なんとやっとると、
「おーい、ヘデラ。奴隷と貴族どーする。捕縛したけど」
「おう、トーチカ。ナイス。そうだな、奴隷の女の子たちは解放してやれ。貴族はラナンがなんとかしてくれるさ」
「了解した。……でも、王子死んじゃいそう」
「そうだな、ヒールでもしておくよ」
なんとか危機を回避したが、王子が倒れるとはな。
てか、なんで倒れたんだろう……?
ん~…思い当たる節が…………あ、俺か。
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