第24話 超爆発スキル - 怒りと憎しみの爆拳 -
従妹と名乗る獣耳をもつ巨乳ビキニアーマー少女こと『ハーデンベルギア』――いや、ベルによれば『ポインセチア』というところで、何かあるらしい。
そこへ行けば、きっと皆も。
俺は人混みをかき分けて向かった。
向かっている最中だった。誰かが俺の腰にしがみついた。
「……あん?」
「兄様」
「フォル!?」
フォルがいつの間にか、俺の腰にしがみついていた!
「んなところで何やってんだお前」
「兄様こそ、わたくしを置いていかないで戴きたい! 心配したのですよ!」
「それはこっちのセリフだ。つーか、なんでフォル……あぁ~」
そっか。
フォルのLUK&Cri255(カンスト)だったな。
運に恵まれているようで『フォーチュン』だとかの加護もあるらしいし。
だから、最初にフォルを拾えたのだろうな。たぶん!
「お前は、本当に運がいいヤツだな」
「はい、わたくしは兄様に会いたいって思ったら、会えるんですよ。だって、それが『フォーチュン』の導きなのですから」
「ふむ、よし。残りリースとメサイアだが。なあ、フォルの運で何とかならないのか?」
「出来なくはないですよ~。でも、運は常に変化しますから~……」
「どうした、フォル」
「そ、その、兄様。はぐれないよう手を繋いで戴きたいのですが」
「む。そうか。それもそうだな」
俺はフォルの手を取った。
うお~…小さくほっそりしていて、ふにふにしてやがる。
勢いで手を繋いでしまったが。
……いや、今更何を気にする必要がある。
「……兄様。ありがとうございます。わたくし、今すっごく楽しいです」
「そ、そか。フォルが嬉しいのは良い事だ」
「はい♪」
今日のフォルはいつになく上機嫌だ。
気づけば、腕を組まれていた。
まあ、たまにはいいか。
◆
『ポインセチア』に到着した。
王様のいる『城』の事だったのか。
そこには、中心部のお祭り騒ぎだった『シンビジウム』とはまるで違う、硬い空気が漂っていた。空気が重いなぁ……。
ヒトもちらほら。数十人以上はいる。
どうやら、五グループの『ギルド』が城の前で待機しているようだ。
多いな。なんでこんなヒトが。
そんな中、黒いドレス姿の、どこかでみたような女神がいた。
あんなド真ん中で、ひとりポツンとして……めっちゃ目立ってるじゃないか。あいつは、容姿も目立てば、その服も目立つ。際立ってるなぁ。
「……お、メサイア。メサイアじゃないか!」
「サ、サトル! やっぱり、此処へ来ると思ったわ!」
「なんだ、知っていたのか」
「ええ。これでも私は女神ですから! えっへん」
そこそこある胸を張るメサイア。
少し成長したか? それともパッドか?
「よし、ともかくこれで、あとはリースだけだ。メサイア、リースが見つからないんだが……」
「あ~……それね。それなんだけど」
頭を痛める素振りで、どこかを指さすメサイア。
「あん? なんだその方角にいるって…………?」
いた。
五グループある『ギルド』のひとつ、なんだか一番具合が悪そうな集団の中に。
なんだ……あの世紀末集団。
全員モヒカンで、無法者のような。
あんな輩が城の前にいる事にも驚きだが……つーか、場違いすぎるだろ!?
「あ、あいつら……リースを!!」
リースを恐怖で押さえつけていやがった。
あんなに怯えて……今にも泣きだしそうで。
「メサイア。なんで助けなかった!?」
「うーん……ごめん。私のレベルじゃ低すぎて。だってほら……【Lv.61】だし。ステータスもほとんど振ってないから」
あ~…そうでしたね。
メサイアは【建築スキル】にほとんどの力を回しているから……。そら、あんな厳ついヤツ等に挑むのには無理があるか。
どれ……。
ガラの悪い集団のレベルは……
【Lv.439】
一番高いヤツでこれか。
確かに、メサイアのレベルじゃ返り討ちにされちまうな。
ヤツ等のレベルは高いが……
俺は【Lv.1544】だ。
念のため、自分のステータスをチェック。
サトル:【Lv.1544】
ステータス:ATK1999 DEF1650 AGI800 INT555 LUK&Cri69
主スキル:血の煉獄、ホーリーブレード、ニトロ、ヒドゥンクレバスⅡ
よし。問題ないな。
「メサイア、フォル。二人は此処で待っていてくれ。いや、出来れば遠くにいてくれ。巻き込みたくない。あと、他の関係ないギルドも遠ざけておいてくれ」
「分かったわ」
「分かりました」
なるべく距離を取らせ、俺は、あの世紀末集団の元へ向かった。
「おい、お前ら!」
「あぁん? なんだテメ~? オレたちになんか用かよォ!?」
呼び止めると、ひとりが俺に凄む。
見事なガンを飛ばしたが、それしきで俺が怯むことはない。
「なんだ、おっさん。オレらはヨォ、この可愛いエルフちゃんと今交渉中なんだよ、パーティメンバーがひとり足りてねーんだよ。ついでに、夜のお楽しみも交渉中だぜぇ~…グヘヘ」
赤モヒカン野郎はリースのスカートを摘まみ、ピラッと少しだけ捲った。それに対してリースは赤面し、大粒の涙を目尻に溜めていた。
………………。
「アニキの言う通りだゼ~! こんな金髪の純粋エルフは珍しいよなァ。街に出歩いているなんて、初めてみたぜ。しかも、こんな別嬪ときたもんだ。売れば高くなりそうだぜ」
「バ~カ、売ってどうする弟。こいつぁパーティに入れておくんだよ。じゃなきゃ『聖者』になるための条件が揃わねーんだろ、バカ」
「あぁ、そうだ。そうだったよ、アニキ。すまねぇ。にしてもさ、このエルフの頬……すげぇツヤツヤだぜ~」
……こいつら、リースの頬に気安く触れやがって……。
「さぁてよォ、このエルフちゃん仲間にしたら、下半身のお世話になろうゼェ~」
「あはー! アニキ、それサイコー! なあ、今ちょっとだけ味見しちゃおうゼェ!」
瞬間、俺の堪忍袋の緒がはち切れた。
ぶち殺す。
『サ…………サトルさん助けて』
リースの声が直接、俺の脳内に。
(ああ……今すぐ助ける)
「おい……」
「アァ!? さっきから何だよ、おっさんよォ!? 言っておくが、オレ等ァ、三兄弟……長男のオレが【Lv.439】、次男が【Lv.393】、三男が【Lv.377】だぜ? てめー如き雑魚おっさんじゃ、オレ等に勝てるワケねーだろ」
「うるせーよ」
「アァン!?」
長男だとかいう赤モヒカン男が、俺に掴みかかろうとしてきた……
――その時。
俺は【オートスキル】にセットしてある【超爆発スキル】の『ニトロ』を任意で発動した。
『ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!』
などと、凄まじい爆発が一帯を覆った。
その爆発に巻き込まれた赤モヒカンは、全身丸焦げになり、『ニトロ』の爆風で空高く吹っ飛んでいった。威力を抑えたので、辛うじて死んではいないだろう。全治一年の重症なのは確かだ。
「ア…………アニキィ!? こ、このクソ野郎……よくもアニキを!!」
恐らく次男だろう、青モヒカン男が毒々しいスキルを放ってきた。
動くまでもないが、今の俺は機嫌が悪い。
自身の拳に『ニトロ』を付与し、
「怒りと……憎しみのぉぉぉぉぉおぉぉぉ!!
ニトロフィストォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!!」
俺は、次男の顔面に、毒もまとめて思いっきり『爆拳』を捻じ込んだ。
『ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォン!!』
次男の顔が変形すると同時に、超爆発。
ヤツの身体は吹っ飛び、城壁を何十枚も突き破って、何処かへ吹っ飛んだ。
「……あわ、あわわわわわ……アニキたちが爆発で…………そんな」
「俺を舐めるなよ小僧」
「ひっ……! や、やめてくれ。エルフは返す…………返すから!! 命だけは!!」
「よしよし、分かった。三男のお前は……絶対に許さん」
「え?」
三男――緑モヒカンは、特にリースの頬にベタベタ触れていやがったので――
『血の煉獄』で嬲り殺す……
しかし、
「そこで止めておくのですよ、サトル殿」
「お……王様!」
「この不逞な輩は、この場に相応しくないのは確か。ですので、あとの処遇は私にお任せを」
そう、フリージア王・ミクトランは三男に『追放』と宣言すると、彼の姿は一瞬にして消えた。
「き、消えた……」
「彼と彼の兄弟をこの国から追放しました。ああいった者たちが『聖者』や『討伐隊』になる資格はありません。しかし、参加自体は自由なため……たまにあのような悪しき者もこの場に現れるのです。申し訳なかったですね」
「い、いえ……王様が悪いわけじゃ……」
気づくと、残り四ギルドが王に対して跼蹐していた。
つまり、みんな片膝をついて頭を垂れていたのだ。
んな……俺たち以外の全員が!
「皆さま、気を楽に。
ようこそ、我が城に。あなた方は、これから『聖者』への道を目指すか――あるいは『討伐隊』へ加入し、周辺国を支配する『レイドボス』を倒して戴きます。……ですが、その前に」
――と、王様は空を見上げる。
ん~? 空?
「うわぁ、なんだアレ!?」
空に『大きな黒い穴』が……!
ブラックホール!?
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