第229話 建築スキルを求めて - 旅立ち、隣国・クリスピアへ -
盗賊共に絡まれる、というプチトラブルはあったものの、隣国【クリスピア】の王子『ラナン』を発見した。これは好機だ。
「聖女さま。助けていただき、本当にありがとうございました」
ペコっと礼儀正しく頭を下げる王子。
「いいよ。俺は王子に用事があったんだ」
「え、僕ですか……?」
「そ。ラナン、俺たちは隣国【クリスピア】へ行きたいんだ。どうにかならないかな」
「隣国【クリスピア】へ!? ……そうですか、なにか事情が?」
すると、ネメシアが割り込んでくる。
「わたしたち、【建築スキル】を買いに行きたいのよ。王子、なんとかならない?」
「け……【建築スキル】ですか。それはまた……うーん」
考え込むラナン。
あの難しい表情は、もしかして厳しいのだろうか。
「分かりました。助けて戴いたお礼もしたいですし」
「やった! ありがとな、ラナン」
俺は、つい王子の手を取っていた。
「………………あ」
「ん?」
王子の顔が真っ赤だ。
なんか震えてるし、ぎこちない。
「ヘデラ、王子が困ってるよ」
「お、トーチカ。そっか、俺のせいか、すまん」
「い、いえ……。その、ヘデラさまは大変お美しいので……」
なんか、ラナンが小さな声でつぶやいた気がするが――
「んあ? なんか言った?」
俺は、よく聞こえなかった。
「いえいえいえ! なんでもありまふぇん!」
噛んでるなぁ。動揺しすぎだろ。
★ ★ ★
俺たちは隣国【クリスピア】へ向かうことになった。王子を連れて。
「出発する前に、僕の目的をお話しないとですね」
ラナンは唐突に足を止めた。
なんだ?
「どうした」
「実は、僕がこの国へやって来た理由なんですが……とある【秘密結社】の情報を入手するためなんです」
「なんだって!?」
「僕の国は【秘密結社】のアジテーション、大量のモンスターの襲来よって荒らされてしまったのです。その度重なる攻撃を受けた結果、国は疲弊し、疑心暗鬼の渦に飲み込まれ、誰も信用できなくなってしまいました。だから、外界の者を完全に拒むようになったのです。
それからです。【クリスピア】は、止む無く『鎖国』という苦渋の選択を下したのです。ですので、僕は国のためにも【秘密結社】の密謀を暴き出し、真実を解き明かし……国を救いたいんです」
アジテーション――そそのかすとか煽動のアレか。
つまり、【秘密結社】が大量のモンスターを何らかのスキルとか、あるいは、それに準ずる教唆をし、送り込んでいるってことだな。
だろうとは、思ってたけど!
「なるほど、そんな深い事情があったとはな。俺たちの国【レメディオス】も最近は、モンスターに襲われまくりだしな。本当に厄介な連中だな……【秘密結社】ってヤツら」
王子は頷く。
「ええ、なにせ、彼らの情報は一切掴めない。どんな組織で、どれだけの人数がいて、どんな企てをしているのか――まったく分からないんですから」
そう、恐ろしいことに何も分からない。
だけど、どこかで尻尾は出すはずだ。そこをいつか握り掴んでやる。
「よし、分かった。とりあえず、隣国【クリスピア】へは入れるんだよな。王子がいれば」
「はい。僕がいれば問題ありません。ただし、僕からは決して離れないこと」
俺含め、みんな頷いた。
さあ、出発だ!!
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