第227話 アイテムクリエイト - ミナギール製薬 -
俺はバケモノにビビり、トーチカは恐怖で漏らした。
メイドが漏らす!?
なんだか、いけない場面に遭遇しているような……いや、今は考えるな俺。あのバケモノを何とかしなきゃ!
「く、参ったな……」
ケルベロス戦で俺のSPGは空っぽだぞ……!
スキルを発動できない。
トーチカは漏らしてしまい、それどころじゃない。
だったら、エコは!? ダメだ、さっき追い出してしまった。
俺は、トーチカを守る体勢に入った。
……せめて、トーチカだけでも守らなきゃ。
「このバケモノめ、出ていけ!!」
『グォォォオオ……!」
なんて、おぞましい姿だ。あれは本当にモンスターか。
『グォォォォォォォォォオオオ!!!』
すると、モンスター(?)は恐ろしい声を上げて接近してきた。うわぁ!
『ヘぇ~~~デぇ~~~ラぁ~~~』
――――って。
なぜ、俺の名前を!
ん……まて、よ~~~~~~~~~~~~~く見ると、
「おい……ネメシア。その紛らわしい姿はなんだ!? すげぇビビったぞ!!」
なんと正体不明のバケモノは、ネメシアだった。
ゴミとか何かよく分からないものを頭に巻き付けていた。
しかも……
「うわ、生ゴミ臭ッ!!」
「うあぁぁぁあぁん! ヘデラあああああん!」
「うああああ、抱きつくな汚い!!」
「ひ、ひどーい。苦労して戻って来たのに~!」
「なんだ、何があった……?」
「えっとね……『ライブ配信』していたの。で、リスナーさんに、この国の【幽霊屋敷】を教えてもらったんだけどね。そこにはゴーストモンスターがいるって。それを配信していたの。そしたら、酷い目にあって……うあぁぁぁぁん」
……泣きたいのはこっちなんだが。
「つーか、ネメシア。お前、幽霊ダメなんじゃ」
「そうよ! 最悪よ! でもね、視聴者数を稼ぐには仕方ないじゃない……体張る方が稼げるんだもん」
あー…なるほどね。
それで、リスナーに煽動されて無理して行ったのか。
アホか!!
ベトベトでなんか、ヤベェ刺激臭もするし。
トーチカなんか悲惨な状況だぞ。
「はぁ……お風呂入りなおすか。トーチカ行くぞ。ついでにネメシアも来い……さすがにくせーぞ」
「く、臭いとか言うなー! あーもう、リスナーからも『臭そう』とかコメント大量よおおおお、うわあああああん」
……うん、今のネメシアは臭い。
★
お店、秘密結社、街の復興……そして、【スターダスト】。
俺たちのやるべき事は多い。
「ヘデラはどうしたいの?」
頭に謎のワカメのような植物を乗せたネメシアは、エコにカリカリをあげていた。
「うーん。やっぱり、みんなの家は何とかしてやりたいな。お店はそのあとでもいいと思うし。秘密結社は今のところ謎が多すぎてな。スターダストもすぐは見つからんだろうし」
「そ。じゃ、隣国【クリスピア】へ行くしかないわね。でも、行くには『関係者』が必要ね。確か、この国に王子様がいるんだっけ」
「多分な。俺に惚れてたみたいだし、まだいるだろ」
「なんかやけに自信満々ね」
「――ところで、ネメシア。その頭の奇想天外すぎる植物はなんだ」
「ん。あ、これ。『ウェルウィッチア』よ。ほら、『SPGミナギール』のね、あれの原材料になるのよ。調合に必要なの。ミナギールって買うと高いから。自分で作ってみようかなって」
「へえ! 製薬――つまり、『クリエイト』ってことか。それは面白そうだな。でも、だからって頭で育てる意味はあるのか?」
「それが大いにあるのよ。この植物はね、育つのに通常は20年以上は掛かるの。けどね、わたしの頭の上なら、なんと、たったの半日よ! だからね、こんな風に頭に乗せてるの」
なるほど。それで朝っぱらから、頭に植物を。
「けど、頭に乗せて半日? どういうこと?」
「ふふ。そういうスキルよ。『ホワイト』の中じゃ育たないからね」
ほーん。そんなスキルがあるとはな。
しかし、本当に奇想天外なカッコウだ。まともに目を合わせると、思わず爆笑してしまいそうだ……。なので、俺はなるべくネメシアとは目を合わせないでいた。
ぷっ……。
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