第225話 建物を直したい聖女 - 建築スキルは何処にある? -
毎度ながら、王国にモンスターが侵入している。
これは明らかに意図的だ。
「やっぱり、あのクソジジイか」
「うん、でしょうね。けど、決定的な証拠がないわ。ああいう人だと、現場を押さえて問いただしたとしても、知らぬ存ぜぬで白を切るでしょうね」
ネメシアの言う通りだ。
決定的な証拠がなければならない。うーん……。証拠、証拠ね。
それにしても――。
「また、家屋に被害が……これじゃ、いつまで経っても復興できねえな」
「便利な【建築スキル】があったらいいのになー」
ぼうっとしていたトーチカが、そんなことをつぶやく。
え、まてよ。
「なあ、ネメシア。【建築スキル】はないのか?」
「そんな都合の良いもの――あ、あるわ。隣国【クリスピア】にそんなのが高額で販売されてるって噂を聞いたことがあるわ」
「へえ、スキルって売ってるものなんだな」
「うん。一部の特殊なスキルは売買されていることもあるのよ。前にも言ったけど、【スターレベル】を上げると、最大三つまで【極スキル】を覚えられるのよ。けどね、リセットする全部と消えちゃうし、憶える際は慎重にね。リセットするのにも、一生遊んで暮らせるほどの大金が掛かるから」
はー…そういうことか。納得。
「てことは、それさえ覚えればいいんだな」
「そうね。――って、ヘデラ、隣国へ行くつもり?」
「ああ、俺はこの国を守るためにも【建築スキル】をゲットしたい。頼む、手伝ってくれ、ネメシア」
「あー、うん。いいけど、隣国【クリスピア】はつい最近、鎖国したみたいよ。だから、入るには関係者がいないと難しわね」
「は? 鎖国? なにがあったんだよ」
「さあ~? あ、じゃあ『リスナー』に聞いてみるかな」
――と、ネメシアはブツブツと独り言を始めた。ちょっと不気味だ。
俺は、その間に――
「トーチカ」
「ん? ヘデラ、どうしたの。ぅ……なんで、顔触る。恥ずかしい」
「いや……ケガとかないかなって。大丈夫か。ほら、ケルベロスの爪で引っ掻かれてないか見せてみ」
「へ、平気。腕ちょっと擦りむいたくらい」
「あ……。トーチカ、すまない。お前に前衛をやらせたばかりに……」
「なんで謝るの~。あたしはこの国出身だから、当然のことをしただけ。みんなを守る、その気持ちは一緒だよ」
なんという志。ボケっとしているようで、割かし考えていたんだな。
「よし、トーチカ。ちょっと腕を貸せ」
「え~?」
トーチカは、嫌々ながらも右腕を差し出してくる。
俺は擦りむいた傷口を――
「ひゃ!? なんで舐める~!」
「いやーほら、傷口は舐めれば治るっていうだろう」
「…………」
あら。トーチカ、なぜか石になった。動かん。
顔がなんか真っ赤だけど……大丈夫かこれ?
「分かったわ!」
「うわ、びっくりした。どうした、ネメシア」
「分かったのよ。鎖国の原因!」
「あ、そうだ。隣国【クリスピア】……なんで、そんな閉鎖的になったんだよ?」
「リスナーによるとね、王子様が行方不明みたいなのよ。それで、国は喧喧囂囂の大騒ぎ中。大混乱みたいね。で、自体が収束するまで『鎖国』という措置を取ったみたいね」
「王子様……。はて、どこかで見たような――――え。あれか! あの時の青年!」
「え、ヘデラ。王子様を見たことあるの?」
「ああ、ちょっと身に覚えがある。明日、探してみるか」
「うん。そうね、今日はもう遅いし帰りましょう。ところで、トーチカはどうしたの? なんか石みたいになってるけど。石化してくるモンスターなんていたっけ?」
「ああ、ちょっとな……」
しゃーない。トーチカは俺がおぶっていくか。
★ ★ ★
石化メイドを部屋に放り投げ、寝かせた。
「ふぅ」
「にゃー」
「あ、エコ。お前、家にいたのか」
「お手伝い出来なくて申し訳なかったです。ごめんなさい」
エコは腹痛に悩まされ、今回の戦闘には参加できなかった。ま、あんだけサーモンをバクバク食ってりゃーな。
「いいよ。それより、天井直してくれよ。寒く敵わん」
「あ、そうでした。あの、私は猫ですし、この肉球で直すのはとても困難なので……その、ヘデラさまご自身で【建築スキル】を取られるなりして戴けると幸いなのですが。もちろん、全力でサポートさせて戴きますから」
申し訳なさそうに猫の性能の限界を示す、エコ。
そうだな。猫だし、仕方ないか。
「――――ん。エコ、今なんて?」
「その、肉球で工具を持つなんて芸当は出来かねますと――」
「いや、その後だよ」
「ああ~、【建築スキル】ですか?」
「そう、それ!! エコ、詳しいのか!?」
「ええ……はい。隣国【クリスピア】に売られていますね。ただ、お値段が少々……」
「い、いくらなんだ!?」
「詳しい値段までは。スキルというのは貴金属類と一緒で、時価ですから」
かっー! 時価かよ。てことは、下手すりゃとんでもない額だな。
「大体の値段は分からないのか?」
「うーん……。私が見たのは『150年前』のことですから――」
「へ……150年前? お前、何歳だよ……!?」
「あ、その私、猫ですから!」
「やっぱり化け猫だったんだな」
「あはははは~」
「笑って誤魔化すな! まあいい、明日はその隣国【クリスピア】の王子様を捕まえる。この国にいるはずなんだ」
「そうなのですね。分かりました。明日は私も捜索をお手伝い致します」
「おう、頼む」
エコは自室に戻った。
俺は~お風呂へ!
ルンルン気分で、浴場へ向かった。俺は聖女になってから、すっかり綺麗好きになってしまったのだ。というか、あの浴場、見晴らしもいいから好きなんだよね。
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