第219話 怪しい爺現る - モンスター襲撃事件の犯人!? -
女王様の【死の呪い】を解くべく、俺たちはまず『お店』を作ろうと考えた。繁盛すれば、儲かるし、情報収集も出来るし一石二鳥。
だが、現実は厳しかった――
「スライムの被害がですか」
「そうなんですじゃ。聖女さま。このままでは我々の住む家が……」
俺は、道行く人に話しかけられ……『何とかしてくれ』と懇願されまくった。で、今は頭に謎の痣がある爺さんに話し掛けられていた。う~ん、この『聖なるシスター服』のせいで、救世主か何かと勘違いされているな。つーか、俺じゃなくて、女王様に頼めよッ。
「しかも、あのスライムの一件以来、街にモンスターが頻繁に出没するようになったのですじゃ。お願いじゃあ、なんとかして戴けませんですかの~」
およよよ……と、俺の胸に飛び込んで泣き崩れる爺さん。
ちょ、うわ、やめ!!
つーか、それを口実に俺にセクハラしたいだけじゃねーか、この爺さん!
困ったな、無理矢理引き剥がすのもな。
「っ……。黙って見てないでくれよ、ネメシア……」
「もぐもぐ!?」
「食ってないで助けろー!!」
「んぐっ……分かった。お爺さん、ヘデラから離れて、ね。聖女さまが困っているでしょ」
ネメシアは、俺に泣きついてきた爺さんを引きはがし、なだめた。しかし、引き剥がす際、俺は爺さんから胸を触られた。くっ……あのクソジジイ!
などと憤怒していると――
「きゃあぁぁぁ――――――!?」
「ネメシア! どうした……」
「あ、あのお爺さんがわたしのお尻を触ってきたの!」
「あ?」
あのヘンタイセクハラクソジジイ……。
スライム被害をダシにして、俺たちにセクハラしたいだけだぞ、ありゃ! ふざけやがって!
すると、近所のオバちゃんが――
「ねえねえ、聖女さまたち。
あのお爺さん『ロドス』さんっていうんだけどね、近所じゃ変人で有名よ。かなり変わった人だから気を付けた方がいいわよ。街の若い娘たちもね、ずっとセクハラ被害に悩まされているの。それにね、街の復興はね、女王様自らが率先して執り行っているって聞いたわ。あと、ロドスさんの家だけどね、被害はまったく受けていないのよ。それも毎回よ。変だと思わない?」
――と、貴重な情報提供を受けた。
なに! そんな変人だったのかよ。被害も受けてないんかーい。明らかに怪しいじゃねーか。なにか裏があるな。
てか、女王様が動いていたんじゃないか。
つーことは……あのセクハラジジイ、ロドスっていったか。
嘘をついて!
「おい、ジジイ! って、いない……逃げられたか」
「もー! あのお爺さん何なの!?」
ぷんぷん怒るネメシア。その気持ちには同感だ。今の俺なら、気持ちは痛いほど分かる。こんな気持ちワリィものだったとはな。
「おーい。ヘデラ。朝ごはん買ってきたよー」
頭にエコを乗せたトーチカがテコテコと走って来た。
「ご苦労さん。おぉ、こりゃ『トルティーヤ』ってやつか。具がギッシリで美味そうだ」
「あ、そういえば、さっき変なお爺さんとすれ違った」
「ん? ああ、あのセクハラ爺な」
「そうなの? そのお爺さんがね、怪しい動きをしてたのを見たよ。なんか、城門の方でコソコソと」
「なんだって?」
あの爺が『城門』でコソコソ……怪しいな。
すると、ネメシアが耳打ちしてきた。
「ねえ、ヘデラ。もしかして、さっきのお爺さん……」
「うん、疑いたくはないがな。今回のスライム襲撃事件に一枚噛んでいるかもな。こんな時は猫助の出番だな」
「え~私ですかぁ~。猫使いの荒い人たちですねぇ」
「エコ、お前くらいのサイズが隠密行動に適しているんだよ。頼む、あの変人ジジイ『ロドス』の行動を調査してくれ」
「分かりました。世の為、人の為――それが私のプライオリティーですから」
キメ顔でなんかカッコイイ事を言うエコ。目が輝いているなぁ。あれでビーム出さなきゃまともなんだが。
「じゃ、頼んだぞ」
「うけたまわり!」
ササッっと猫は飛び出していった。
「さて、俺たちは『トルティーヤ』でも、って、もうない!? 俺の分は……」
「ヘデラ、こっちこっち。はい、食べさせてあげる。あーん」
「トーチカ。暴飲暴食のネメシアに食われないよう、残してくれていたんだな、ありがと♪ あーん」
トーチカの優しさに俺はほっこりきた。
うんめええええええッ!
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