第207話 スライム大量襲来 - はいてない聖女 -
――翌朝。
「おぉふぅ……。頭いてー…なにがあったっけ」
飲みすぎて何も覚えていない。激しく記憶喪失だ。
えーっと……『ヘンな髪色のゴスロリ無職女』と『ヘンなコックの銃使いメイド』と……。あ、あと『喋る不気味猫』か。そんな愉快な仲間たちと宴会していたら、いつの間にか寝落ちしていたんだった。
みんな逆さまぶっ倒れ、ゴミのように散乱していた。あるいはゴミ箱につっこんでいた。ネメシアが。おいおい、寝相悪すぎだろう。
「はぁ……。なんで、どいつもこいつも裸に近い状態になっているんだか」
俺も人のことは言えんけど。
あ……そういえば、俺は下着すらつけていなかった。
今更過ぎるが下は全裸だった。
「うわっ!! 昨日は泥酔いしてたから気づかなかったけど、こ、これは恥ずかしい……くっ、あのNPC女神、下着くらい用意しておけよな……ケチくせえ」
なーんか、ずっとスースーすると思ったが、装備品が『聖なるシスター服』だけだったとは。……まいったな、一文無しだし……下着をどう調達したものか。
ヨダレを垂らし、幸せそうに寝ているネメシアを見つめた。
「下着が欲しい……。しゃーない。デコピンして叩き起こすか……」
――その瞬間だった。
『た、大変だーーーーーー!!!! 王国に大量のスライムが侵入してきたぞ!!』
必死の叫び声がした。
外でなにかあったようだな。ん、スライムだって?
「まじかっ! そりゃヤベーな。この異世界の聖女として【討伐クエスト】を……でも、下着がほしぃ~……スースーするんだよぉぉぉ……!」
なんだ、この圧倒的な羞恥心…………。
く…………一応、腐っても女だからか、俺。
大量のスライムも大変だが、俺も大変だった。
「おはよー。ヘデラ。……って、なんでハダカ!?」
「うわ、いきなり目を覚ましやがった! ……み、見るなよ……恥ずかしいだろうが…………」
「あ、あ~~~…うん。あんた本当に女だったんだ。ごめん。その裸を見るまでオネエなんじゃないかと、ずっと疑ってた。てか、形も綺麗だし、大きいわねェ……」
「お前な……。ああもうジロジロ見ないでくれよ、恥ずかしい。……それより、悪いんだが下着を買えるだけの金を少し恵んでくれないか……さすがに、スースーして困っている」
「え、下着持ってないの? う~~~ん。そうね、でもヘデラとわたしって、そんなに体形に差がなさそうだし~」
ネメシアは、ごそごそっと例の『ホワイト』に手を突っ込む。
するとそこから女性物の『下着』を取り出した。
「え、それストレージにもなるのか。便利だなー」
「うん。これがわたしのアイテムボックス的な。はい、貸してあげる」
「おう、わりぃな。…………えーっと、すまん。つけ方が分からん」
「!? え……え? あんた、やっぱり……」
この上ない疑いの眼差しが向けられる。
あ、まずい。
「違うって。この世界に来たばかりで記憶が曖昧つーか……昨晩飲みすぎて、ちょっとボケてんだ俺。だから、頼む」
実は女神に記憶を【消去】されてるとは言えなかった。基本的な知識はあるけどさ。つっても女の方の作法なんてまるで記憶にない。
「なんだ、そゆーこと。仕方ないわね~」
納得し、しぶしぶとネメシアは俺に下着を丁寧につけてくれた。
「むぅ? ちょっと胸が……苦しいぞ」
「う、うっさいわ! あんたがちょっと大きいのよ……なんかムカつくわね」
「嫉妬はよせ。……ぉ、ありがと。やっとしっくりきたわ。ちょっと胸がきついけど」
「くぅ~~~…ちょっと可愛いからって! はい、これね」
「あん?」
「お小遣いよ。これで下着でもなんでも買えるでしょ」
「……ありがとう」
「なんでそこだけバカ真面目なのよ。調子狂うわね」
少しくらい感謝しないとバチが当たるってもんだ。
だから――
『ぴんぽんぱんぽ――――――――――ん』
そこで謎の放送が入った。
「お? なんだ?」
『緊急事態です! スライムが王国を破壊しています。居住区にお住いの方は至急、避難してください。繰り返します――んぎゃああああああああああああァ!!』
って、襲われてる――――――――――!?
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