第203話 ぼったくりバー - 飲んだくれの墓場 -
ぼったくりバー『えんじょい』は、歩いて二分のところだった。
近ッ!! しかもボロッちぃ!!
ひょんなことで出会った、髪色が一風変わったゴスロリ少女『ネメシア』に導かれ、俺はその店に入った。が……!
臭かった。
「は、鼻が曲がる……こりゃあ地獄よりひでえや。
みんな見事に泥酔いしてんな……。なんかアウトローみたいなおっさんとか……『破産した!』と連呼して人生終わってるヤツとか、あと変な猫耳メイドもいるし……」
「そりゃそうよー。こんな腐った世の中だもの。みんな酔いたくもなるわぁ~」
カラカラと笑うネメシアの手には既にグラスが握られていた。あんな顔を赤くして、アルコール度数の高そうな酒を飲んでやがるな~。つーか、おっさんクサ!
ん……? 『ウルトラスピリタス』ぅ~?
「あー、これ。じゃ、貴女との出会いに」
ネメシアから瓶をそのまま渡される。ん、コイツ左利きか。って、歓迎にしては雑だなぁ。まあいいけどさ。
「せめてグラスには入れてくれないのか」
「えーめんどい。それにね……」
「それになんだ?」
「おえええええええええええええええええ……」
ネメシアはレインボーを吐いた。
「うわ、きたなっ!!
いやそれより俺はこの世界で何をすりゃいいんだ、そこんとこの説明を詳しく求む」
「うおえええええええええええええええええええ」
「わかったわかった。背中くらいは擦ってあげるからさ」
「あんた……見かけに――いえ、口調によらず殊勝なんだね。中身はおっさんくさいけど。でもなんだろ、なんかその乱暴な口調も気にならなくなってきた。不思議ね~。ねえ、ここへ転生する前は何してたの?」
「それについては企業秘密ってことにしておいてくれい。説明に三年くらいは掛かるしな」
「はへー。あんたも苦労してんのね。わかるわぁ~~~その気持ち」
ほろっと泣き出すネメシアは、また酒をガブ飲みした。どんだけ飲むんだよ。酒豪かよ。つーか、酔いすぎだろ。酒くせえ。
あーもう、最初に会った時のイメージが全部砕け散った。俺の純潔返せ。
「わたしは『ネメシア』よろしくね!」
「いや、知ってるし。そんなことより、スペック――ネメシアの職業とかステータス的なものを教えてくれると助かるが。ほら、これから一緒に冒険するならさ、お互いのことを知った方がいいだろう」
「無職」
「は…………? なんだって……?」
「だから、無職だってば」
「そうか、じゃあ達者でな」
「ちょ、ちょちょ、ちょっとぉ!
無職と聞くなりいきなり気が変わらないでよおおおお、わたしを捨てないでえええええええうわあああああああん!! ううおええええええええ……」
「悪いけど、俺はこの異世界にやってきたばかり。手持ちがまったく無くてな。螻蛄なんだ。だから、パーティつーか、無職を養う力は残念ながら皆無。今晩のメシだって、下手すりゃそこらに生えてる雑草とか毒キノコだ」
「養ってならあげるわよ。わたしが一生面倒見てあげる」
「ああ、俺を養ってくれるのか、そりゃーすまんが――――え? え? え!?」
なんか、コヤツとんでもない事を口走りやがった。
ゴスロリ無職が金のない俺を養う? 面倒見てくれる?
無理だろ。不可能だろ。酔ってんだろう!?
ドッキリなら早くタネ明かしをしてくれ。その方がこのモヤモヤがいち早くスッキリする。ていうか、どこにそんな金があるっていうんだ、こんな飲んだくれに。
なんて思っていると、
「あんた、今こう思ったでしょ。こんな飲んだくれの無職じゃ養えるわけないって」
「すまんけど、そりゃまあ……」
「バカにしないでよね~!
こう見えても、わたしはね【ウルチャ】をこの瞬間にもず~~~~~~~~~~~~~っと受けてるんだから!」
へ……【ウルチャ】? なんぞそれ。
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