第202話 異世界の中心 - 少女との奇跡の出会い -
新しい世界の名は『パロブ・サンディエゴ・ホセ・フランシス・ステラ・パウラス・ホアン・ネポムセイノ・マリア・デイ・エロス・レメディオス・クリスピア・クリスティーナ・デン・ラム・サンデシマ・トリニダート・ルイス・イル・ヒカソ』という。
「なげぇよ!! 名前長すぎィー!!」
どうやら最後の【ヒカソ】が異世界の名のようだ。
そんな【異世界・ヒカソ】の中心に位置する王国……
【レメディオス】に俺はいた。
「へぇ、活気に満ちあふれた王国じゃないか。人口も多そうだな。おお、噴水とかキレイだな。あっちはイベントでもやってるのかな」
国を見渡すと、多くの冒険者が街を闊歩し、クエストをしたりギルドメンバーを募ったり、露店で何かを売り買いしていた。
ここが新しい異世界! いいね!
なかなか良いスタートが切れたんじゃなかろうか。
この体の底から湧き出る高揚感、おぉ、なんかワクワクしてきた!
で――感動とかに浸っていれば、なんか急に話しかけられた。
「おやぁ、シスター服のお嬢ちゃん、ひとりか~い? 良かったら、おじさんと楽しいことしないか~い」
「黙れ。俺に近寄るな」
「だっ……黙れだと!?
これでも私はね、この辺りじゃ名高い貴族なのだよ。いいか……ん。俺? なんだ、君……男なのかね? なるほど、そっちか! そっちなのか! いいぞ、おじさんますます興味が湧いた! どうかね、見返りは弾むぞ」
うわっ、ヘンタイだ!!
「きゃー! ヘンタイですー。誰か助けて~」
俺は棒読みで叫んだ。
「なっ! キミ、よしたまえ!! くっ……おのれ、憶えておけ!」
ヘンタイは去った。
……まったく、いきなりあんな悪趣味なヘンタイとエンカウントするとはな。幸先の悪い。どうせなら『可愛いエルフ』とか『お姉さん系の盗賊とか』そういう美女が良かったね。
性別が『女』になったといえ、まあやっぱり仲間にするならそっちの方がいい。
さて、もうちょい王国を散策しようかなと思ったが――
「……ん?」
正面から、とてもヘンな髪色をした女の子がこちらへ向かってきていた。
なんだ、俺を見ている?
すると……女の子は俺の目の前で、静かに足を止めた。
へぇ、なんだかお嬢様っぽい雰囲気で……つか、服装がなんかの召喚儀式で使うような紋様の入ったゴスロリで、近寄りがたい感じだ。
人形のような娘だなと俺は思った。
ルビーのような――いや、あれはそれ以上だ。この世のモノとは思えない美しくも儚げな赤い瞳を流し、真っ直ぐ見てくる。……明眸だ。
目と目が完全に合ったことすら忘れてしまうほどに、彼女は可憐だった。なんだろう、この高嶺の花のような存在。思わず俺は感動しちまった。
こんな可愛い女の子と冒険できたら楽しいだろうな。
などと思っていれば、
ヘンな髪色の女の子は突然吐いた。
「うぉえええええええええええええええ……」
「ぬわ!? レインボーの物体を俺に向けて吐くな!!」
「いや~昨日、飲みすぎちゃって。
あ、自己紹介が遅れたね。わたしは『ネメシア』っていうの。あなたが女神さまの言っていた…………カルボナーラ……?」
「それじゃあ『ラ』しか合ってないじゃないか! ヘデラだよ!」
「ああ! そう、ヘデラ。あなたが七度目の転生者ね。ずっと待っていたわ」
頭が弱い子なのかなぁ。なんか頼りない。つーか、俺の第一印象返せ! 人ってーのは、第一印象が大事だからな。もう一気に長時間放置していた激マズコーヒーのように冷めたよ。
ま、何にしてもこの子が俺を導いてくれるらしい。
「じゃ、よろしく」
「却下」
「――は? 却下ってどういうこった」
「わたしより肌白すぎ。まつ毛長すぎ、小柄で可愛すぎ! あぁ、手もこんなにスラっとしてるし羨ましいわぁ。って、なによ、そのいかにも神様の恩寵受けてます~的な服。絶対隠しアイテムよね。ていうか、あんた本当に女? 言葉遣いといい……怪しいわ」
まず!!
「え……。わたくしなにか粗相を?」
「バカっぽい」
「うるせーよ、縞馬みたいな髪色しやがって。しかもなんで右目を前髪で隠してるんだ?」
彼女の髪型はワンサイドアップで、髪色は基本ベースは『黒』だが、金と銀のメッシュカラーを拵えていた。で、ポイントの高い右目隠し。いや、でもそれ見辛いだろう。
――とまあ、只ならぬ雰囲気を醸し出していたのだった。
なんであんなド派手な髪色してんだか。すげぇ目立つし、周りの人からも結構ジロジロ見られているんだよな。本人はまったく気にしていないようだけど。
この国の流行りのファッションか何かだろうか。
「わたしは『ネメシア』よ」
「それは知ってる。その髪の色の謎には答えてくれないんかい。まあいいや、よろしく」
「まー、わたしの髪のこれはほぼ地毛よ。
って……あ、そうそう、これからの事を話さなきゃね。近くの居酒屋でもどう~? この奇跡(?)の出会いに一杯くらいなら奢るわよー」
他に頼れるヤツもいないしな。
ヘンタイ貴族を頼るよりは数億倍マシである。
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