第21話 三つの選択肢 - 俺たちが世界を救済!? -
花の王ミクトランは、茶を啜って一息ついた。
酷く落ち着きがあり、とても重要そうな話題でもなさそうだが……。
「あなた方には、今、三つの選択肢があります」
「唐突だな、花の王。いきなり俺たちになんの話なんだよ。まず経緯を説明してくれ」
「おっと、そうでしたね。それでは、少しだけ話を戻しますと……まず、メサイアは『元・死神』であるということはご存知ですか?」
「それは知ってる。なあ、メサイア」
俺は、メサイアに話を振るが本人は顔面蒼白だった。
「お、おい、メサイア。まだ腹が痛いのか!?」
「……へ、平気よ。話を続けて」
やっぱり、無理してんな、コイツ。
まあいい。それより話だ。
「元々この世界は『女神』たちであふれておりました。ですが、突然現れた【死の呪い】によって世界は変えられてしまったのです」
「……【死の呪い】? なんだその物騒なモンは」
「ええ。その呪いこそが女神たちを陥れ、死神へと変えたのです。それだけでなく、今のこの『闇の世界』を作り上げてしまったワケなのですね」
え……?
『闇の世界』?
この世界ってそんな暗黒な世界だったっけ。そうでもないような。確かに、少し歩けばそこら中モンスターだらけなのは事実だけど、街に至っては平穏そのものだ。
「あのぉ~、そんなに治安が悪かったでしたっけ。確かに、ボスモンスターの出現は多いような気がしますけれど」
リースがそう首を傾げていた。
それには俺も同意見だな。
ミクトランは話を続ける。
「ですから、あなた方は何度か経験しているはずですよ。モンスターの突然変異を」
突然変異――そういえば、今まで何度か目撃した。
実際に戦闘を交えたことも。
「まさかな」
「察しがいいですね、サトル殿。現在のモンスターは【死の呪い】によって、突然変異するのです。変異することで、モンスターはより強力に。
その中でも最も恐ろしいのが『メタモルフォーゼ』です。ボスモンスターが更にパワーアップするうえで必要な素質といいますか素養といいますか。その『メタモルフォーゼ』によって『レイドボス』が生まれるのですね。それが、これからお話する案件に繋がるのです」
メタモルフォーゼだって? てか『レイドボス』って……。まだ上があったのか。
「いいですか。あなた方には三つの選択肢があるのです」
「はい、ちょっといいですか!」
いいところで、フォルが勢いよく手を挙げた。
「なんでしょう、フォルトゥナ様」
「おトイレ行っていいですか!? もう漏れそうです!」
「ずっと我慢してたのかよ! さっさと行ってこいよ、フォル」
「は~い」
「あ、あのぉ~…あたしも」
「あ、私も」
リースもメサイアも。
緊張感ねぇ~~~!!
……あ、話が長くなりそうだし、俺も行っておこ。
◆
結局、花の王であるミクトランもトイレに行った。遅いな……大きい方か!?
「みんな我慢しすぎだろ~」
「ほら、今季節って冬でしょ。トイレが近くなっちゃうのよね~」
あはは~と笑いながら、メサイアが『醤油煎餅』をバリバリ頬張っていた。毒は抜けたらしい。コイツの胃袋はどうなってんだろうなぁ……。
「兄様、兄様~」
「ん、どうしたフォル」
「明日は『聖者祭』ですよ~。行きますですか?」
『聖者祭』――そいや、以前、メサイアがそんな事を言っていたような気がするな。詳しくは聞いていなかったけど。
「なあ、その『聖者祭』ってなんだ?」
「ああ、ご存知なかったですか。では、お傍で説明してあげますね」
俺の左隣にフォルが座ってきた。ピタっとくっつくようにして。
「あ~、フォルちゃん、ずるいのですよぉ。じゃあ、サトルさんの右側はあたしが!」
エルフと聖女に挟まれた。
狭いなぁ。でも、うん……アリだな。
「メサイアは、俺の膝の上にでも座るか?」
「サトル、それ名案だわ! じゃあ、遠慮なく……」
「って、おい、バカ! 冗談に決まってるだろ! くんな! せめーよ!」
「冗談に決まってるでしょ。さすがに狭いわ。でも、こうすれば私もサトルの隣に座れるわ」
――と、メサイアはリースを抱え、膝の上に乗せて俺の隣に座った。
「きゃぅっ……メ、メサイアさん」
「ごめんね、リース。でも、こうしないと皆で入れないでしょ」
……な、なるほど。
メサイアのヤツ考えたな。この中じゃ一番小柄なリースなら重くもないし……。つーか、俺、今とんでもない状況になっちまったなぁ。
ていうか、メサイアがリースを抱えているっていうのも、なんだか新鮮でいいな。まるでお姉さんと妹のような。そんな微笑ましい光景だ。
「よし、フォル。説明頼む」
「はい。『聖者祭』とはですね~…」
「――おや、皆さん仲が良さそうで」
フォルの説明が始まろうとしたところ、ミクトランが帰ってきた。長かったな。やっぱり、大きい方か。王様だって大きいのくらいするよな。
「フォル、説明は後で。じゃ、王様、続きを」
「ええ。それなんですけども、あとはあなた方に選択して戴くだけです」
「選択……洗濯じゃ、ないんですね?」
「ええ、選択です。決して洗う方じゃありません。選ぶ方です」
選択――なにを選べっていうんだ。
「いいですか、皆さま。心してよく聞いて下さい。
1.死の魔王・ゾルタクスゼイアン
『聖地・アーサー』の支配を強めている魔王です。四人の死神『オルクス』『プルート』『モルス』『メサイア』が魔王を倒す為に向かいましたが、その討伐メンバーの一人であったメサイアが抜けましたので、現在は三人体制で大激闘中です。
2.アルティメット・デス・アナイアレイション・ドラゴン
『聖地・パーシヴァル』で暴れている世界最強のドラゴンです。
現在は、炎、氷、雷のそれぞれの属性を持つ三大騎士達がドラゴン打倒のために命懸けで戦っております。ちなみに、現地の方々からは『名前が長すぎる!』というクレーム多数につき、別名『アルバトロス』の名で呼ばれておりますよ。
3.冥界の死女神・アルラトゥ
半年前『聖地・ランスロット』を落とし、手中にした死の女神。死神でもあれば、女神でもある。両方の属性を合わせ持つ特異な存在。あまりに強力な力を持っているので、手出しできていない状況です。
以上、三つの選択肢です。
どれがいいでしょうか?」
「………………」
俺含め、みんなポカ~~~~~~ンと口をあんぐり開けていた。呆然するだろ、そりゃ。唖然するだろ、そりゃ。
むしろ、圧倒的愕然としている……!
「あの…………王様、それを俺たちにどうしろと?」
「願わくば、全部倒して戴きたいのですが」
「ふ・ざ・け・ん・な」
無理!
無理無理無理!!
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