聖なる槍使いと伝説のテイマー②
聖地・パロミデスを乗っ取ろうとしているヒーリアス&ヒーラック兄弟を何とかせねば。その為にも偶然出会ったハーマンと協力して、みんなを救出せねば。
「ん~、とりあえずパロも見つけないとか」
「パロ様は不在ですから……」
仕方ない、こういう時は超便利スキル『千里眼』だ。
俺は集中して、パロの気配を探った。
「ん~~~」
「……あの、なにをされているのですか?」
「すまん、今、パロを探しているんだ。邪魔をしないでくれると助かる――って、服を引っ張らないでくれ~~~ハーマン」
「あの……わたしは何もしていませんけど」
「なぬっ!?」
よ~~~く見ると、袖を引っ張っていたのは桃色髪の少女だった。
「うわぁっ!!?」
いつの間に……!?
どこかで見たことあるような少女がいつの間にか俺の隣で、しかも袖を引っ張っていたから驚いた。彼女は間違いない――パロミデスだ。
「パロ……久しぶりだな! てか、いきなり現れるなよ、ビックリするだろう」
「すまんのにゃ~~! サトにゃん久しぶりだにゃー」
「で、いつの間に帰って来ていたんだ。不在じゃなかったのか」
すると、パロはハーマンを見た。
「これにゃ」
懐から手紙を取り出した。
「あ、それ……パロ様に宛てた手紙です」
「そうにゃ。ハーマンからの要請があったのだがにゃ! ので、そっこうで飛んで帰ってきたのにゃ~~~!!」
そう今度はハーマンに飛びついた。
「うわぁっ……パロ様ぁ」
頬をスリスリしまくっていた。お前は猫かっ。
いやそれよりだ……暗殺はもちろんナシ、ここはパロの力も借りて――。
「ところで、パロ」
「どうしたのにゃ、サトにゃん」
「お前はどれくらい民から信頼されているんだ?」
聞くと、ハーマンが答えてくれた。
「パロ様の人気は圧倒的です!! 民からの信頼は絶大。ですから、ヒーリアス&ヒーラック兄弟がこの国を乗っ取ったらきっと、みんな大変なことに……」
「の、乗っ取るー!? なんのことだにゃ!?」
「って、パロ。知らなかったのかよ」
「知らないのにゃ! あの兄弟がどうかしたかにゃ……」
俺は事情を話した。
「にゃ、にゃんだってええええええええええ!?」
叫び、飛び跳ねるパロ。
まず、あんまり目立たれると兵が飛んでくる! 俺は、パロの口を手で塞いで、宮廷から距離を取った。
「にゃにゃにゃにゃ~~~!!」
「おっと、わりぃ。けど、叫びすぎだ、パロ。落ち着けって」
「……そ、そうだにゃ。まさか、あの兄弟が……実は、あの兄弟は元奴隷だったのにゃ。パロが拾ってあげたにゃ」
しょぼんと落ち込むパロ。
そうだったのか……てか、そんな恩があって、国を乗っ取るとかなあ。
――って、まて。
「パロ、お前いったい何歳なんだよ!?」
「え……乙女の秘密だにゃ! それに、女性に年齢を聞くのは失礼じゃないかにゃ」
「そ、そか……」
実はけっこう歳、いってるのだろうか。
ま、とにかくだ。
「よし、作戦はこうだ。民たち全員の力を借りる。奇襲作戦でいく」
「にゃ、にゃんだってえええええええええ~~~~~~~~~~!!!!!」
またも叫ぶパロ。
目を皿にして、三回くらい飛んだ。
「サ、サトにゃん。いくらなんでも聖地全員の力を借りるだにゃんて……」
「名案かと思います! わたしは賛成です!」
ハーマンは一瞬の迷いもなく、そう返事した。
あとはパロ次第。
……いや、俺次第か。
こういう時は、頭を下げるのが礼儀だ。
「……パロ。俺からもお願いだ。この聖地である王に頼んでいる。俺の仲間の命も掛かっているんだ……この通りだ」
「……サトにゃん。……分かったにゃ。そこまでされては、もう引き返せないのにゃ!! 全民へ宮廷への奇襲を通達!! ハーマンのペットなら可能だにゃ?」
「ええ。わたしのペットは世界最速の足を持つ『ユニコーン』ですから、伝達係はお任せください」
ドンと現れた『ブラックユニコーン』――あれ。
「黒のユニコーン!? すごいな、普通、白じゃないのか」
「この子は特別なんです。では、行ってきますね」
ハーマンは、ユニコーンに乗り去った。
「えぇ……」
「さあ、サトにゃん。我々は国を、みんなを助けに行くのにゃ!」
「もう!?」
「ハーマンを信じるのにゃ。きっとやってくれるにゃ!!」
なんか燃えてるな~パロのヤツ。
◆
俺は、パロを拘束したふりをして、宮廷へ戻った。
「ほう~、パロミデスをこんなに早く見つけ出すとは――しかし、私は暗殺と言ったがな……まあいい、この手で葬れるのなら、それも一興だろう」
シャキっと剣を構えるヒーリアス&ヒーラック兄弟。
「ちょっとまて! 仲間を先に返してもらおうか。じゃなきゃ、パロは渡さん」
「ふふふふふ……ふはははははははははははははッ!!!」
「なにがおかしい!!」
「貴様の仲間は、すでにこの地下よ。最上級の拷問である水攻めにあっている頃合いだ」
「なんだと!? ヒーリアスてめええええッ!!」
「あとは貴様とパロミデスだけだ……!! これで、聖地は我がモノ……いいや、全聖地は我が兄弟のモノとなるのだ!!! ふははははははははは!!!」
ちっくしょう……。
もう許せん、あの兄弟は俺がブチのめす……!!!
「待つんだにゃ、サトにゃん」
「……っ! パロ……しかし、早くしないとメサイアたちが」
「この声を聞くんだにゃ」
「え、声」
――すると、後方から――
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!」「パロ様をお守りしろおおおおおおおおおおお!!」「聖地をまもれええええええええええええ」「兄弟はぶったおせええええええええええええ!!」「いっけええええええええええええ!!」「ペットを放ち、暴れさせろ!!」
宮廷の外から、怒声が飛び交っていた。
すげえ数の人たちが集合していた。
しかも、建物が破壊されまくっていた。まず……このままだと崩れ去るぞ。
「なんだ、なにが起きているのだ!?」
「兄貴、これはどうなって……」
「パロ、今だああああああああ!! 俺はヒーリアスをやる。パロはヒーラックを!!」
しかし、その前にも民たちは、宮廷へ物凄い勢いで流れ込んできた。
みんな怒りの頂点に達している。
「みんにゃ!!」
「パロ様あああああああああ!!」「あの兄弟だ、あの兄弟をブチのめせええええええ!!」「やっちまえええええ!!」「聖地は我々のものだあああッ!!」
「うあああ、なぜ民たちが!!」「兄貴、これはまずいぞ!!」
テイマーたちがペットを放ち、兄弟たちへ襲わせた。
オークやゴブリン、ドラゴンや様々なモンスターが突進していく。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
「ウギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
・
・
・
◆
メサイアたちは、テイマーの人たちに助けられていた。
みんな、ずぶ濡れではあったけど、ケガはない。
「よかった……みんな無事で。濡れただけか」
「……もうサイアクよ」
メサイアは舌を出し、げんなりしていた。
「兄様~…」
なんだか風邪気味のフォル。大丈夫か?
「サトルさん……散々ですぅ。……くちゅん」
かわいいクシャミをするリース。
「あは……あははは……」
ビキニアーマーで、たいした被害のなかったベルは笑っていた。
「サトにゃん、助かったのにゃ」
「おう、パロ。急な再会でまともに話もできなかったけど、聖地を取り戻せ良かったな」
「これも、サトにゃんがいてくれたおかげだにゃ」
ちょいちょいと手招きされて、俺はパロに顔を近づけた。
すると、キスされた。
「……ぉ」
「お礼だにゃ。ついでにハグもするのにゃ」
「ありがとう、パロ。けど、ハーマンだって活躍したんだぞ」
「うん、彼女は大切な友だにゃ。一緒にがんばるにゃ」
「おう、じゃ俺たちは聖地巡礼に戻るよ」
「また来てくれるにゃ?」
「ああ、いいよ。また回ってくるだろうし、いつかな」
聖地の人たちからも何百、何千も感謝され、俺の気分は最高潮に達した。いやぁ、たまには良いことするものだなあ。
◆
――もうすぐ聖地巡礼は終わる。
俺たちは今、砂漠のど真ん中。
疲れ切った俺は、女神であるメサイアに膝枕してもらっていた。
「サトル、もうすぐね。終わったらどうしようか」
「そりゃ、もちろん、みんなで一緒に暮らすさ」
「うん」
「あっ、姉様! そのポジションはわたくしの……うぅ、ずるいですぅ」
とか言って、フォルは俺に抱きついてきた。おふぅ。
「サトルさーん。コーヒーを淹れ――――え、えええ!? メサイアさんがサトルさんを膝枕して、フォルちゃんが……え!? ででででは、あたしも!」
「いや、無理だろう! 物理的に!」
「ですよね……でもいいんです! 頭くらいは撫でられますから!」
なるほど!
「おや~、理くんとんでもないことになってるねえ」
どこかで、シールドスキルのトレーニングをしていたベルが帰ってきた。入る余地がなくて困っているようだが、ぽんと手を鳴らし、なにか奇策を思いついたようだ。
「じゃ、こうしようっかな」
ビキニアーマーに手をかけ――――。
「ブッ~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!」
俺は、鼻血を大量に吹き出し、出血多量で死亡しかけた。
【 番外編・完 】
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