聖なる槍使いと伝説のテイマー①
――聖地巡礼をしていたある日。
もうすぐで全ての聖地を回り切る寸前で、ある男と出会った。
「これはこれは、あなたが噂にきく聖者様ですな」
「あんたは?」
「私はこの先の聖地・パロミデスの代行十聖騎士。ご存じかと思いますが、パロ様はまだまだ未熟でして――この私が代行を務めさせて戴いているのですよ」
へぇ~。
あのパロの代行をね。
確かに彼女は幼いし、どこか頼りない。
けど、槍を持たせたら、十聖騎士では随一と聞く。
「なるほど、それであんたの名前は?」
「申し遅れましたな。私は『ヒーリアス』というもの。よろしければ、すぐそこが聖地です。ご案内いたしますが、どうですかね」
まあ、挨拶に寄るつもりだったし、いっか。
「みんな、いいか~?」
俺はみんなに確認するが、歩き疲れてしまっているようで、反応はない。……いかんな、こんな砂漠地帯が続くと思わなかったからな、みんな脱水症状でヤバそうだ。
◆
【 聖地・パロミデス 】
聖地は一際の異彩を放っていた。
どこもかしこも『宮殿級』で、いやはや古代がそのまま具現化したような街並みだった。なんだこれは!
「へえ、すごいわね。こんな聖地もあるのねぇ」
驚くメサイア。
それに続いて、ベルやフォル、リースもため息やらついた。
「サトルさん。この聖地、なんだかモンスターの気配がするような」
ふとリースは気配に気づく。
それは俺も気づいていた。
「ああ、飼ってるな~。モンスターを」
「その通り、サトルくん……と、呼んでもいいですかな」
「構いませんよ、ヒーリアスさん」
「――ありがとう。それでね、この聖地は『モンスターテイマー』が多く存在するのだよ。だから、ああやって連れ歩いているのさ。どうかね、他の聖地と大違いだろう」
確かになー。
まさか、オークやゴブリン、ドラゴンや様々なモンスターをペットにしてるなんてなー。恐れ入った。てことは、テイムアイテムの取引も盛んなのだろうか。
……ふむふむ、興味深いな。
「興味深いですね~」
フォルが興味津々だった。
「へえ、聖女もモンスターを連れて歩きたいか?」
「テイマー聖女ですか! それも悪くありませんね~…ですが、止めておきます。エサ代が掛かりそうですし、お世話も大変ですからね。特にあんな大きなドラゴンなんて無理です」
しょぼんとフォルは悲しみに暮れた。
そうだな、お金は掛かりそうだ。
◆
宮廷に入り、そこで事件は起きた。
「なっ……どうして、いきなり!? ヒーリアスさん、これはどういうこった!」
「ふふふふ……」
ヒーリアスは不敵に笑うだけ。
周りには、何百もの兵が俺たちを取り囲んでいた。
まさか……嵌められた!?
「ここまで……よくついてきてくれた。
サトル、お前の噂どころか情報は全て筒抜けさ。貴様たちは全員、公開処刑にしてやる――と、言いたいところだがな。……おい」
誰かを呼ぶヒーリアス。
すると、兵の中から同じような顔をしたヤツが現れ、そいつはメサイアたちを人質にした。……くそっ!!
「こいつは『ヒーラック』――弟だ。私と違って血の気の多い男だ」
「なにっ……弟だと!」
「おっと、動くなよ! 動けば女どもは殺す」
「……望みは何だ!!」
「パロミデスの暗殺だ。ヤツは役に立たん無能……それにか弱い少女だ。それでは国は成り立たん!! このままでは、我が聖地はおしまいだ! そうなる前に手を打つ」
そういうことか。
「おい、ヒーラック!」
「任せろ、兄貴」
弟のヒーラックは剣を抜き、ベルに向けた。
「あ~…わたしかぁ。いやぁ参ったねえ」
緊張感のカケラもない、相変わらずの落ち着いた口調で焦る(?)ベル。……たぶん、内心すらもまったく慌ててないな。
「この女を殺されたくなければ、パロミデスを暗殺するのだ」
「……分かった。仲間を危険に晒すわけにはいかないからな」
「理くん……」
「なあに、任せろ。なんとかするって」
◆
仲間を人質にされた状態で、俺はひとり宮廷を出た。
「ちくしょう……。まさか聖地・パロミデスがあんなヤツ等にクーデターされかけて……いや、されていたとはな」
なんとかしてヤツ等を倒し、メサイアたちを救出せねば。
その為には……パロを暗殺……できるわけねえ。
立往生していた時だった。
「そこのお兄さん。お困りです?」
誰かに話しかけられた。
「……ん?」
「キミは……だれ?」
「わたしは『ハーマン』というものです。お兄さん、あの宮廷から出てきたでしょ」
「ん、ああ……そうだけど」
「見たところ、あのヒーリアス卿・ヒーラック卿の兄弟に何かされたと違います?」
「なぜそれを!?」
「私、あの兄弟の秘密を偶然知ってしまったんですよ。ですから、この聖地のためにも何とかしたいと思っていたんです。パロ様は不在ですし」
「そうか、じゃあ国を乗っ取られるって知ってるんだな」
「ええ、その話を三日前に……でも、誰も信じてくれなくて困っていたんです」
「分かった。俺も仲間を人質にされていて困っているところだ。協力し合おう。少なくとも、キミは信用できそうだし」
ハーマンという猫耳と尻尾の生やした少女は、とんでもなく美少女で可憐だった。それだけで俺的には十分に信用に値した。
てか、こんなSSRも同然な娘がウソなんてつくはずがねぇ!!
というわけで、俺とハーマンは協力関係となった。
話をしていくと、どうやら、彼女は『伝説のテイマー』らしい。
ふむ……もしかしたら、何とかなるかもな。
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