第196話 モンスター大奇襲
まともな服装のベルと共に都を歩いて回っていると、エルフたちの様子が変というか――変だった。
「ん……どうした」
「みんな、困った顔をしているね」
「ちょっと、聞いてくる」
俺は近くにいた、超絶美人の金髪お姉さんエルフに話を聞いてみることにした。やっぱり、話しかけるなら美女だよなぁ~。
「そこの花のようにお美しいお姉さん」
「あら……! あなたはエルフを救ってくださった……」
振り向くエルフお姉さん。
「――サトルさん。ナンパは許しませんよ」
「げぇっ!! リース!!」
ゴゴゴゴゴ……なんてヤベェ音が聞こえそうなほどにリースの顔は鬼と化していた。
「あ、リースちゃん。やっほ」
「ベルさん。こんにちは」
「どうしてリースがここに!? 他のみんなはどうした」
「メサイアさんとフォルちゃんも近くにいますよ。みんな、各自で休息を満喫しているんですよ~」
周囲を見渡すと、フォルの姿があった。
うわ、こっちめっちゃ見てるー!! めっちゃ我慢してるー!!
今にもこっちに飛び込んできそうだ。
「フォルちゃん、サトルさんとベルさんのデートを邪魔しないようにと、ずっとあんなソワソワした感じなんです」
なるほど……よく我慢できてるなぁ。
面白いので、ちょっと観察していると――
「ふみゃっ!?」
フォルと誰かがぶつかっていた。
いや、一方的にぶつかってきたが正しいな。
ありゃ……まだ貴族がいたのか! しかも人相が悪いな。
「あぁん!? なんだこの女、邪魔だぞ」
倒れたフォルに対し、いきなり踏みつけようとする残党貴族。
むろん、俺は瞬時に移動し、貴族をぶっ飛ばした。
「ぼげえええええええええええええええええッ!!!!!!!」
ドブに激突した貴族。あとは知らん。
「大丈夫か、フォル」
「……兄様ぁぁぁん。ごめんなさい、邪魔をするつもりはなかったのですけれど……本当に申し訳ありません」
「いや、いいんだ。無事なら。てか、まだ貴族がいたのかよ」
――ん。おかしい。
人の往来が極端に減り、明らかに貴族が増えている。
それだけじゃない…………モンスターの気配。
「理くん!! モンスターだ! モンスターがたくさん向かってきているよ!!」
ベルが声を荒げる。
マジだ……この邪悪な気配は間違いない。
そうか、星屑の都を襲いにきたか。だから、貴族が!!
「サトルさん。ブラッドオーク120、ブラッドコボルト130、エクサゴーレム40、ランスゴブリン80、ブラックフェンリル60、ブリザードドラゴン15、地を這う者350……その他、たくさんのモンスターが押し寄せています!!!」
リースが状況を把握してくれた。
――――いや、まてまてまて。
「なんじゃその数!!!」
どうやら、都はモンスターの大群に囲まれたらしい。
いったい、誰の仕業だ……!!
「まったく、安心してデートも出来やしないな。リースは、住民の安全を確保。ベルとフォルは俺についてきてくれ。……で、メサイアはどこに?」
「メサイアさんは、この都で大人気のケーキを食べいにいきました!!」
「そうか!!」
スイーツ食べにいったのかよ!
仕方ない、メサイアは抜きだ。
「みんな、いくぞ!!」
「「「おおお~~~!!!」」」
◆
ベルは、念のためメサイアを守りにいくと向かっていった。
……この埋め合わせは必ずするからな。
「ご、ごめんなさい……兄様」
背中に乗っているフォルが申し訳なさそうにつぶやいた。
今、俺はフォルをおんぶしながら移動している。
「なにを謝る必要がある」
「だって……デートを」
「ぶち壊したってか、気にすんな。これが終わったらまたするしさ。……けど、フォルは我慢してくれていたんだな」
「…………寂しかったのです」
なんか、ぽつりと耳元で囁いた。
……え、寂しかった?? フォルがそんな風に言ってくれるなんて。そっか、そんなに俺といたかったか。
「――――とっ」
適当な屋根に着地して、俺は返事をした。
「フォル。今はおんぶしてやってるだろう」
「……はい。兄様の背中にいられるなんて、とても幸せです」
「だからって、腹筋に手を伸ばしてくるなよ」
「……え♡」
「バレバレだっつーの! それより――」
俺はフォルを下ろし、近づいた。
「あの……なんで、わたくしを見つめるのです。というか、こんな開けた場所で……その……心の準備とか」
「は? 違うってーの!! 支援だ、支援してくれ」
「そうでしたかぁ……」
すげぇ残念そうにするフォル。
何を期待してんじゃ、このヘンタイ聖女!?
とりあえず、グロリアス系の支援をもらった。
「あのっ、兄様」
「ん、準備できたし、そろそろモンスターを倒しに行きたいんだが」
「そ、その……戦闘になる前に、ぎゅっと抱きしめてくださいまし! わたくし、朝から兄様成分が足りなくて……貧血気味なんです」
「…………」
「なんでそんな目でわたくしを見るのですー!? 本当なんですっ。このままだと、本来のパワーが発揮できないのです。お願いですから」
「え~~~~~~~~~」
「え~~~~~~~~~って、そんな! いつものヘンタイ兄様なら、喜んで飛びついてくるじゃありませんか!!」
「ヘンタイはお前じゃい。……まあいいけどさ」
俺はフォルをぎゅっと優しく抱きしめた。
その隙を狙われ、多数のモンスターが四方八方から攻めてきたが。
覚醒【オートスキル】――『ヘルリパルサーレイ』が発動。レーザーが飛び交いまくり、モンスターを八つ裂きにした。
『ギョエエエエエエエエエエエエエ~~~~~~~~~~~~~!!!!』
「おぉ、あっぶね~」
「兄様、これはいったい。……あ、アイテムをたくさんドロップしていますよ、このモンスターたち」
「もうかなり向かってきているみたいだな。む、本当だな、レアアイテムばかり。こりゃ高く売れるぞ」
すごい収集品とレアアイテムの数。
いったいどこからこんなに……? 高レベルモンスターだから、ドロップ率がいいとか。うーん。
まあ、ドロップアイテムだし貰っておくか。
アイテムを拾おうとすると、
「兄様、危ないです!!」
フォルに押されて、俺は倒れた。
頭上に大きな爪がかすめた。
「うわぁっ!! こわっ!!」
「ブ、ブラックフェンリルです……かなり強いモンスターですよ」
「助かったよ、フォル。お前のおかげだ」
「…………」
お礼を述べると、フォルは顔を真っ赤にして沈黙してしまった。
「ん? どうした」
「…………あ、あ、あ……はい」
すげえ照れてる。珍しいこともあるも――――
ビリッ……と、フォルのシスター服が破れ、下着姿に!
さっきの爪攻撃にやられてしまったらしい。
「あああああああああああああああああああああああ!!!」
「いやああああああああああ……でも、兄様になら別に見られても問題ありませんでした!! むしろ見てくださいましー♡」
やっぱり、フォルはフォルだった。
……迫りくる複数のブラックフェンリル。
初めて見るモンスターだな。さっさとぶっ倒すか。
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