第195話 覚醒聖槍・ロンゴミニアド
滞空中、それは突然襲い掛かってきた。
「うわっ!!!」
赤い物体が頭上をかすめた。
ギリギリで回避して、なんとか事なきを得たが――。
「て、てめぇ……!」
「ククククククク、フハハハハハハハハハハハハハッ!!! ようやくこの時がきたぞ、サトル、貴様を殺す時がなァ!!」
空を飛んでいたのは、バケモノだった。
「お前はなんだ!!」
「そうだな、この姿では分からんよな。俺はミザール!! ドゥーベの超人研究とフォーマルハウトの超人研究を盗み出し、それを完成させた!! これが『超人の究極完全体』というわけだ……フハハハハ、アハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
ミザールだと……あの白衣の姿ではなく、完全なバケモノの姿としてそこにいた。……なんだありゃ、ゾンビ実験に失敗した醜いバイオモンスターだぞ、ありゃ。
「理くん。あれは……グロすぎるね」
「ああ……、もう怪人とか怪物の域を超えている」
「そうさ、俺はもう何者でもない……神だ!!!」
そうミザールは、エグすぎる赤い翼を羽ばたかせ、飛行してきた。
なんて速度だ……マッハかよ!
こっちは、ベルを抱えているんだぞ。
「――なんてな、ハンデにもならんぜ。なんせ、俺は覚醒【オートスキル】があるからな。両手が塞がっていようが、関係ねえェ!!!」
突っ込んでくるミザールに対し、覚醒【オートスキル】が発動――。
「っらあああああああああああああッ!!!」
『無限煉獄』――――!!!!!!!!
空全体に炎が舞い踊った。
それは、ミザールを飲み込み……食い散らかしていく。
『ンギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!! 馬鹿なあああああああッ!!! なんだこのレインボー炎はああああ!?』
おお、効いてる効いてる。
が、ミザールは全身が燃えている状況にも関わらず、反撃をしてきた。
『スパイラルウェエエエエエエエエエエエエブ!!!!』
「なにィ!?」
手足が伸びてきやがった。グルグルと!!!
しかも穂先が鋭い……あんなものを食らったら、貫通しちまうよ!!
「理くん、任せて!」
ベルは宙に無数のシールドを展開し、ミザールの伸びてきたグロ手足を防御した。……すげえ! そんなことも出来たのか、ナイスゥー!!
「よくやった。これで反撃を……ごふぁぁぁっ!!?」
しまった。
背後から……!!!
「理くん!? ちょっと、お腹に大きな穴が……そんな……」
「アアアアアハハハハハッハアッハハハ!!! やった、ついにやったぞ!!! これで貴様は終わりだああああああああ~~~~~!!!!」
「……なんてな」
「なんだと!?」
「今のはオートスキル『フェイントニトロ』っていう、残像を作るスキルなのさ」
「残像だとォ!? 馬鹿な、確かに今お前の腹を貫いて……!!」
驚くミザールだが、真実は真実である。
「言い忘れいたけど、フェイント後は大爆発が起きる」
「……え」
『ドドドドドドドドドドドドドドドドドドド――――――!!!!!!』
空がダークニトロで大暴れした。
「うあふえげげげえっげげげげっぎゃあああああああああああああああああああばばばべべべべべえくそおええええええええええええええええ!!!」
・
・
・
ミザールを撃退(?)し、俺たちは、いったん誰もいない地上に降り立った。
「ケガはないか、ベル」
「だ、大丈夫。どこもケガしてないよ」
「いや、心配だ。ちゃんと確認させてくれ」
俺はベルの顔、首、肩、胸、お腹周り、腰、尻、足など丁寧に――――チョップで殴られました。
「い……いくらなんでも細かく見すぎだよ……」
「す、すまん」
「けど、かっこよかったよ」
ニッと笑うベルは、可愛かった。
「お、おう……」
『ドーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!』
ミザールが落ちてきた。
「うわっ、まだ生きてやがったか!! しつけーな!」
「な、なぜだ……なぜ俺は勝てん!! これほどの力を手に入れた俺がなぜ……ぐっ、体の維持が…………」
ドロドロと溶け出すミザール。
「うわっ!! キモッ!!」
「…………」
さすがのベルも目をそむけたくなるほどなのか、俺の方に抱きついてきた。……よしっ、今だけは感謝するぜ、ミザール。
「くそぉ…………やはり、エルフをもっと喰っておくべきだったか……」
「なんだと!?」
「ククク……、膨大な魔力を持つエルフは栄養価が高いからな……そうだな、エルフを全員喰っちまうか……!!!」
まさか、以前、行方不明になっているエルフもいると耳にしたが――ミザールが!!!
「おまえ!!!」
「今頃気づいたのか……そうさ、貴族たちが使い捨てたエルフは研究材料にして、最後には俺が喰っちまったよ。おかげでこの魔力よ。……が、まだ足りんらしい……ああぁ、そうだ、サトル、お前の仲間にすごく美味しそうなエルフがいたよなァ!?」
「…………なんだって。もう一度言ってみろ」
「確か、リースだったか……あいつを喰えば、俺はお前を超える最強になれるかもしれない……くくくくくく、今から喰いにいってやるよ!!!」
「ミザールてめええええええええええええええ!!!!!!!!!」
俺は、怒りのまま『覚醒聖槍・ロンゴミニアド』を放った!!
「――――――!?」
それはほんの一瞬の光だった。
ミザールの姿はもうその場からかき消えており、かなり遠方で核のような爆発が巻き起こり、衝撃がこっちにまで届いた。
「……んぉ! 自分で投げておいてアレだが、ここまでの威力だったとは」
「やりすぎなくらいだけど……理くん、あれなら倒したかもね」
どうやら、一撃で葬ったらしい。
怒りのままだったけど……最強の槍スキルたちが戻ってるな。
てか――『ロンゴミニアド』って確か、アーサーの。なぜ使えたんだろう。思い当たるところとして、以前、アーサーの力で『聖槍・エクスカリバー』を使ったことがあったから、何かしらの影響を受けて発現したのかもしれない。
ま、なんにせよ……!
勝ったし、槍スキルも復活した。
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