第193話 運命と幸運の神
星の都――いや、『星屑の都・アヴァロン』は復活を果たした。
星の決闘大会もといバトルロイヤルは終幕となり、奴隷だったエルフたちは自由の身となり、それぞれの元々貴族が使っていた家へ戻った。
これで一件落着だな。
「ふぅ。ここまで長かったな。俺たちも帰ろう」
「そうね、すっかり暗くなっちゃったし、今日は一泊しましょうか」
メサイアの提案で、女神専用スキル『ホワイト』の謎の白い空間にある家で泊まることになった。これが便利なもので、いつどのような場面、時でも家の中で暮らせるのだ。
しかも、家はデカくて広くて超快適。
最早、貴族邸宅並みの規模を誇る。
バトルロイヤル中に、こんなものを作ってしまうとはな。
まあ、おかげで野宿にならないだけいい。
◆
「~~~~~~あぁぁ、最高のお湯だ。体中に沁みて気持ちいィ!」
俺は、今日一日の疲れを露天風呂で癒していた。
ひとりのんびり酒をいただきながら。
「かぁぁぁ~~~! キンキンのキンキンに冷えてやるがう~~~!!」
ごくごくと酒を飲み干し、グラスを置くと。
『ドボ~~~~~~~~~~~~~~ン!!』
誰かが飛び込み、大きな水しぶきが上がった。
「だ、誰だ! ここは俺の貸し切りだぞ!?」
「兄様♡」
「ブッ――――――――――!!!!!!!!」
丸裸のフォルがいた。
風呂なので当然だが、なにも身に着けていない。すっぽんぽんである。
「おい、ヘンタイ。なにしてやがる!!」
「あーにーさーまー!!!」
「うわぁあああ!! 裸で抱きついてくるなー!! 腹筋を舐めるな!! ベロベロするなー!!! このヘンタイ聖女ー!!!!!」
「兄様♡ 兄様♡ 兄様♡ 兄様♡ 兄様ぁぁあああん♡♡♡」
『うああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!』
・
・
・
――――俺は意識を失った。
「―――――――ハッ」
意識を取り戻すと、知らない天井だった。
「俺は……いったい…………」
『……サトルよ』
ん? 声が聞こえるような。
『サトルよ、目を覚ますのです』
「いや、もう目は覚ましているけど」
『――わたくしは、フォーチュンです。あなたをこれから導く者です』
スルーかよ!? ……まあいい。
「って、あ……あんた! この前も現れた……!」
『ええ、まだあなたは『星に願い』をしていません。ですから、向かうのです』
「どこへ?」
『神の間です。そこへ向かい、あなたは星の儀式を完成させ、神となるのです』
…………神になるだと?
「まってくれ……あんた本当にフォーチュンか!? 本当は神王・アルクトゥルスなんじゃないのか!! 正体を現せ!」
『………………』
沈黙。
フォーチュンは答えない。
『サトル、あなたは神になるべき存在です。いいですね、神の間へ向かうのです』
そこでスッと気配は消えた。
「くそっ……!」
なにが神だよ。そんなモンに興味はないっつーの!!
それよりだ、それより……。
『あ、ひとつだけ言い忘れていました』
「!?」
『星の都、いえ、星屑の都・アヴァロンが復活した今、本来の七人の脅威が向かってくることでしょう』
「はぁ!? なんだよ、本来って」
『あの七剣星は偽物。ただ力を求め、その空席の座についていただけのまがい物です』
「偽物!? あれが? かなりの力を持っていたし、貴族たちは崇めていたぞ」
『あれは、所詮は借り物の力です。そして、本物の七剣星――いえ……七人の反英雄『スターゲイザー』は眠りから覚め、あなた方の儀式の妨害に向かってくることでしょう。どうか……お気を付けて』
「ま、まて!! なにを言っているのかサッパリ分からない!!」
今度こそ、フォーチュンの気配は消えた。
・
・
・
「――――ハッ!?」
景色がまた変わった。
「あれ……俺はいったい…………。って、うおわぁっ!? フォ、フォル!!」
そうだ。俺は露天風呂に浸かっていたんだっけ。
で、フォルに襲われて――。
そのフォルが裸のまま俺にくっついていた。
当の本人は眠ってしまっていた。
まるで状態異常の『深い眠り』状態のような……そんな感じだ。
指で頬を突いても、ぜんぜん起きる気配がないし。
「ん~……プニプニしてる。ほうほう、こっちは……へぇ、柔らかいな。そうすると、こっちは――」
「なななな、なにやってるのよ!」
「え?」
声の方へ振り向くと、メサイアが入ってきていた。
「なんだ、メサイアか。お前も風呂か」
「サトルの戻りが遅いから心配になって来てみたのよ……。まあ、こんなことだろうとは思っていたけどね、フォルの姿もなかったし」
「あはは……」
俺は笑って誤魔化した。
「で、メサイアも一緒に入るか? なんかもうバスタオル巻いて準備できてそうだし」
「う……そうね。そうしたいのだけど」
「どうした」
「サトルさーん♪」「理くーん。わたしも入るよー」
リースとベルもやってきた。
なんだ、いつも通りじゃないか。
「じゃ、みんなで仲良く入りますかぁ」
「結局こうなるのね」
はぁ~とため息をつくメサイアは、ちょっと残念そうだった。
しかし、俺は重要な何かを誰かに教えてもらったような気が……。
ま、いっか!!
思い出すのも面倒クセーし、なんとかなるさ~!!
いつも応援ありがとうございます。
もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ぜひブックマーク・評価をお願いします。感想もお気軽に書いて戴けると嬉しいです。




