第190話 怒りの覚醒【オートスキル】全弾発射
あと一歩だった。
一斉に突っ込み、ドゥーベをかなり追い詰めたが、あと一歩のところで、ヤツは死神の闇を『暴走』させ、干支ノ助、セイザ、ブラッドの三人を戦闘不能にしていった。
「…………うそだろ」
幸い、戦闘不能で……死者はいない。
けれど……なんて闇の力だ。
「くくく、はははは……これが死神の力! 超人の力! 素晴らしい、素晴らしいぞ!! これで、神を殺す力に一歩近づいたわけだ……」
「ドゥーベてめえ!!」
俺は一撃を決めようと思ったが、メサイアに止められた。
「だめ。まだ……ダメよ」
「三人やられちまったんだぞ! それでもか!?」
「それでもよ。みんなの思いを無駄にしないで」
「……っ。そうだな、俺はヤツを、ドゥーベを倒す」
「倒すぅ!? まだそんな戯言を抜かすか!!
サトルよ、私のこの『暴走』の力で今一度、貴様の心を破壊してやる。今度こそ再生できないよう塵……いや、無にしてやる。……それとも、その女神でもいいんだぞ」
そうドゥーベは口元を歪ませた。
俺の女神をそんな腐った目で見るんじゃねえ!
「ここは俺たちに任せろ、サトル」
「オルクス……」
「そうだよ~☆ ここに本物の死神がいるんだからさ」
「プルート!」
「偽物を倒す」
「モル子」
状況を察したフォルやリースたちは後退した。
死神三人衆は駆けだしていく。
例の死神の鎌を使い、ドゥーベを切り刻んでいく。しかし、敵は手足がもげようとも、体を分割されようともすぐに再生した。
……何が超人だよ。
……アレでは、本物バケモノだ。
「ふはははははは、あははははははははは!! 無駄だ無駄だ無駄ムダムダムダムダムダむだあああああああああああッ!!」
闇と鎌が拮抗する。
その間、メサイアは、女神スキルでフル支援を続けた。
10、20、30と――どんどん支援あるいは補助が増えていく。すごい勢いだ。
それでも、ドゥーベの方もどんどん力を増していった。
――どういうこった!?
どこにそんな魔力がある!? いくら死神の力があるとはいえ……『無限』ってことはないだろう!? ありえない。ありえないってことは……ありえんナニカがあるってことだ。どこかに。
戦況を注意深く見守っていると――
「……くっ!!」
闇がプルートの足をつかまえていた。
そこをモル子が切断したが、プルートは負傷。動けなくなった。まずいな!
「プルート!! よくもプルートを!!」
激しく怒るオルクスはスキルを発動――、
『シュヴァルツヴァルト!!』
大鎌をまさかの弓に変えて、矢を放った。
「リカーブボウだと……!」
しかもそれは、ただの矢ではなかった。
ドゥーベに命中するや、赤い瘴気を爆発させ、闇を貪った。
「闇を食べている?」
「そうよ、サトル。あれはね、オルクスの最強の死神スキルよ。あの魔王ゾルタクスゼイアンとの戦いでも使った大技。まあ、あの時は負けちゃったけど……でも、今は私の支援もあるし、きっと」
メサイアの言う通り、ドゥーベはかなり苦悶の表情を浮かべていた。めっちゃ効いてる……すごいぞオルクス!
「こ、この赤い闇はなんだ……! くそ、これが本物の死神ということなのか……! だが、それでも私は超えてみせる……それこそが超人なのだからな!!」
まだ諦めないのか!
オルクスのスキルがドゥーベを追い詰めていく。
更に、いつの間にか空に飛んでいたモル子も鎌を振るった。
『グラオザーム!!』
天空に数百の死神――あのローブをまとったイメージ通りの死神を召喚した。って、そんな数を一気に!!
すごいな、モル子。
オルクスとモル子のスキルの挟み撃ちとなったドゥーベは、天と地どちらを対処するべきか焦っていた。
「おのれえええええええええええッ!!!」
もうどうしようもなくなった、ドゥーベはそのまま二つの技を食らった。
「うギャああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!」
「みんな、今だ!!」
俺はみんなに指示を出した。
フォルやリース、ベルたちはスキルを一斉にドゥーベ目掛けて放った。
そして、俺も――!!
「メサイア……時は来た」
「ええ、私も一緒に」
これで最後だと願いたい。
いや、最後にするんだ。バトルロイヤルをこれで終わりにして、リースの母さんを……そして、星の都を解放するんだ。
「サトル、全支援フルパワーでいくわ!!」
「っしゃあああああ、み・な・ぎ・っ・て・き・たああああああああああああッ!!!」
全ての条件は整った。
魔法攻撃力の超増幅。そして、女神の全支援を受けて、俺のオールステータスはありえない数値を突破し、もはや計算不能な神の領域に到達してしまった。
『覚醒【オートスキル】――――全弾発射ァァ!!!!!』
更に、
『エンデュランスだあぁぁぁぁぁァァッッ!!!!!!!!』
怒りの光を放ち、辺り一面は真っ白に染まった。
「ぬおぉぉぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」
・
・
・
白い光に包まれた。
これできっと終わりだ。俺たちの勝利で――――
『………………サトル、貴様だけは絶対に許さん!!!』
「なっ! ドゥーベお前!!」
なんてことだ。
半身を失っても、尚、俺の方へ向かってきていたのだ。
『ポイズンマインド!!!!』
――――やべぇ、俺の心に侵入しようとして――――
違う……『毒』だと!?
「がああああああッ!!!」
「ははははは……そうさ、これは猛毒。貴様の心は毒によって死ぬのだ……これは接近攻撃でなければならなかったが、何とか届いたな!」
チ、チクショウ……。
「サトル!!」
メサイアの声が――――。
俺はガクっと意識を失い…………
はっと目が覚めると、そこは虹の空中庭園の例の螺旋階段の頂だった。そこには背を向けた二人の姿があった。
「お前たち……誰だ」
『なんだ、また戻ってきちまったのか』
「そ、その声……ああああか……!?」
『旦那、お久しぶりです。オレはずっとあんたを見守ってきましたぜ』
「お前……チョースケか!?」
死んだはずの二人がそこにはいた。
「ああああ、チョースケ……」
『な~に、しけたツラしているんだ。いいか、サトル。俺はお前のことを恨んじゃいないぜ。むしろ、応援している。だから、毒なんかに負けるんじゃねぇ!!』
『旦那、グースケとパースケを立派にしてくれて、ありがとうございました!! アイツ等あんなまともになるなんて、オレは嬉しかった……! だから、星の都だってまともに出来ると思うんですぜ! オレは死んじまってますけど、陰ながら応援させて戴きます!』
「……お前たち。ありがとう」
『サトル。ドゥーベはある魔力がある限り、再生し続ける。だから、魔力源を断ち切るんだ。それでヤツに勝てる』
「そうか……! それであんな並外れた再生能力を! ああああ、情報をすまない。これで勝てる」
二人はニカッと笑い、消えた。
いずれ、虹の空中庭園で再び盃を交わそうぜ。
今はただ安らかに眠れ、友よ。
「うおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああ、ドゥーベ!!!!!!! てめええの毒なんて効かねえよ!!!!!!」
俺は、最後の力を振り絞り――!!!
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