第186話 主の帰還
※フォルトゥナ視点です
「いい顔です。それでこそ……聖女」
地面を思いっきり踏み、向かってくるフェクダ。あんな重量感のある斧を持っているというのに、なんて移動速度。
ならば、わたくしは空へ飛ぶ。
「たぁぁぁっ!!」
「跳ねた……では、私も付き合って差し上げましょう」
フェクダは身軽に追い付いてくる。
『奥義・覇王爆砕拳!!』
「やはり奥義でしたか、もうそれは見切って――――なっ」
わたくしは、シスター服を脱ぎ捨て、フェクダの方へ被せるようにして投げた。
「く、服で私の視界を遮っただと!! 小癪なぁぁぁッ!!」
急いで自身に、自己支援『グロリアスブレッシング』を掛け――
「フェクダ!! あなたに神の裁きを――!!!」
「さぁぁぁぁぁせええええるかああああああああああああッ!!!!!」
服を切り捨て、フェクダは猛進してくる。
ですが!!!
『ダブル奥義!! 冥王風神拳!!! 冥王雷神拳!!!』
「そんなものおぉオオオ!!」
技は呆気なく切り捨てられた。
それでも!!!
『最終究極奥義・覇王武光拳・不知火ッ!!!』
「くどいッ!!!」
これも破られた。
だったら、最後のSPを振り絞り――わたくしは!!
『運命の力……ドゥーム――――――――――!!』
「…………なっ!!! なにも見えな――――うあああああああああッ!!」
ドゥームは、最大9999コンボが可能な最強スキル。
今回は『十干奥義』をコンボとして発動し、フェクダに鉄槌を下した。
「奥義・甲! 奥義・乙! 奥義・丙! 奥義・丁! 奥義・戊! 奥義・己! 奥義・庚! 奥義・辛! 奥義・壬! 奥義・癸!」
奥義を永遠と続け、おおよそ7500コンボを与えた。
「ぐああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!!!」
・
・
・
地面にはすっかり大きな穴ができ、そこにはフェクダが倒れていた。
まだ戦闘不能になっていない……。しつこいヤツです。
ならば、トドメの究極奥義で……
そう行動に出ようとした時だった。
『やめろ。それ以上、フェクダを傷つけるな』
「な、いつの間に……あなたは!」
『我が名はドゥーベ。聖女、お前の心を破壊してやる……』
鬼の形相でわたくしを睨む女は、ドゥーベだった。
「あなたが……ドゥーベ」
『砕け散れ……』
彼女は、わたくしの『心』に触れようとした。
『――――――――――』
ですが、ドゥーベは驚愕していた。
『聖女…………貴様……『心』はどうした!?!? なぜだ、なぜない!! 心がないのか貴様は!?』
「あなたは馬鹿ですか!!」
『な、なんだと……』
「わたくしの心は、すでに兄様のものです。すべては捧げました」
『バカなバカなバカなバカなバカな!!! 心がない人間などいるものか!! 心がなければ、人間は動けぬはずだ!! それがどうして!?』
「あなたには一生分かりませんよ」
『……貴様ァ! 心が破壊できぬ人間が存在したとはな……恐れ入った。私の研究がまだまだ甘かったということか。だが、物理的には破壊できる。聖女、貴様はここで死ね』
フェクダの巨大戦斧を呼び寄せ、ドゥーベはそれを握った。
「なっ……! まず……」
巨大斧がわたくしに迫ってくる。
このままでは首を…………!
「兄様…………!!」
わたくしは強く強く願いました。
星に願うように、強く強く。
「死ねえええええええええええええええええ!!」
斧が首の寸前まで迫った時――。
急に動きがピタリと止まった。
「………………?」
ゆっくり目を開けて、状況を確認してみると……
誰かが斧を素手で掴んでいました。
あの広くて勇ましい背中。
荒々しくも、優しいオーラ。彼は間違いない……。
「ま・た・せ・た・な!!」
そう輝かしい笑顔を向けてくれた。
「兄様!! 兄様なのですね!!」
「帰ってきたぜ!!」
そう強く宣言すると、兄様は斧をグシャリを握りつぶしました。すごい……どこからあんな力が。ベルさんの盾を破壊したあの斧を、あんな紙屑のように簡単に。
でも、それよりも。
それ以上に――
「…………兄様ぁぁぁぁああ!!」
「うぉ、フォル。下着姿じゃないか!
やれやれ……そんなに泣いて、余程寂しかったのか? いいぜ、俺の胸の中で飽きるまで泣きまくれ。
……まあ、俺も寂しかったしよ! ああ、くそ! もらい泣きだぜ……。おっさんはな、涙もろいんだぜ……! フォル、すっごく会いたかったよ」
やっぱり、帰ってきてくれた……!
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