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【コミカライズ】全自動攻撃【オート】スキルで俺だけ超速レベルアップ~女神が導く怠惰な転生者のサクッと異世界攻略~  作者: 桜井正宗
第三章 星屑

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第184話 星の記憶

※メサイア視点です

 サトルの心は破壊されてしまった。

 けれど、全てを破壊されたわけではない。心のカケラは残っている。


 でも、バラバラに砕け散ってしまった心の修復なんて……どうすれば。

 今の私には、こうして彼の残滓(ざんし)(すく)い取ることしかできない。包み込むことくらいしか――。



「――――」



 ……いえ、私はまだ本領を発揮(はっき)していない。


 彼の(・・)女神としての力を出し切っていない。

 そうよ、私は彼の、彼だけの女神。



 こんなところで(くじ)けるわけにはいかない。



「サトル……今、助けにいくわ」



 女神の力を全力で使い、白の力で『理』の中へ――入った。



 ・

 ・

 ・



 ――――ここは何処(どこ)だろう。



 見たこともない風景。

 見たこともない建物。

 なにかが発展し、とても多くの人々が行き()っていた。



 人間(ひと)

 人間(ひと)だ。



「――――君、大丈夫?」



 不思議な世界に圧倒されていると、誰かに話しかけられた。



 ……え。まさか。



「サ、サトル……。サトルよね!?」

「え? 君、なんで俺のこと知ってんの!? 君とは初対面だよね。ていうか、その格好すごいね。コスプレ?」


「こ、こすぷれ? 違うって! 私よ、私」


「え? オレオレ詐欺?」


「だーかーらー違うってば! 私よ、メサイアよ」

「めさいあ? 知らん。あー…なんかの勧誘とかなら()してくれ」


 そう、彼はまるで初対面であるかのような反応をして、()ろうとした。


 ……ダメ!


 ここで逃がしたら、もう二度と会えないような気がしていた。だから、私は彼の腕を思いっきり引っ張った。



「うわ――――――!?」



 サトルに抱きつかれる形となったけど、今はすごく嬉しかった。

 いつものように、もっと優しく抱きしめて欲しい。


「え……君。泣いて、いるのか……」

「うれしくて……」

「うれしい?」

「うん、サトル……あなたに出会えて本当に良かった」


「…………君、なんで俺の名前を。ああ、分かったぞ! この先にある『サクリファイスオンライン』のイベントね! だから、そんなコスプレを。

 聞いてくれよ。これからさ~従妹(いとこ)(あおい)と――――」


 そこで彼は何か(・・)を思い出した。



「………………いや、違うよな。なにか違う気がする。俺はもっと大切な何かを……」



 思い出そうとしている。

 サトルは、己の心を修復しようとしている。



「う~~~~~ん……舌先現象(したさきげんしょう)っていうヤツかね。あーほら、喉まで出かかっているのに思い出せないアレだよ」



 腕を組み、記憶を()り起こそうと必死だ。

 もしかして、もしかすると……!


「お願い。思い出して、私と過ごした日々を。仲間もいたでしょ。レイドボスを倒したり、聖地を巡礼したり、いろいろあったじゃない」


「レイドボス……聖地巡礼? うーーん。でもそれって、サクリファイスオンラインの要素そのまんまじゃないか? でも、でもなんかなぁ……すごく違和感がある。心に引っかかるものがある」


 ――心に引っかかる?


 まって、それって……少しずつ元に戻りつつあるということ?


 そう希望が持てそうな時だった。


「……だめだ」

「だ、だめって……そんな」

「ごめんな」


 そう彼は悲しそうに頭を下げて――去ろうとした。



「………………」



 …………まだよ。



 私は、諦めが悪い女神で有名なんだから!



 もう怒った。



 叩いてでも思い出させてやる。



「このバカサトル~~~~~~!!!」



 思いっきりグーで彼の後頭部を殴ろうとした――けど。


「ちょっと、そこのあなた。わたしの理くんに何をするつもりかな」


 なんかすっごく見覚えのある少女が現れた。

 髪色こそ違うけど、あの淡白な表情の彼女は――ベルだ。


「ベ、ベル……」

「あ、うん。『ハーデンベルギア』はわたし。でもさ、それ言わない約束でしょ。リアルバレするのは嫌なんだよね~」


「え……約束?」


「ん? どうしたの、桜さん」

「え、さくら?」

「ちょっと大丈夫? あなたの名前でしょう。それ、コスプレだよね。理くんの気を引こうとしたのかい。でもそれじゃ、わたしには勝てないよ~なんてね。理くんは、桜が好きみたいだし……」


「え、でも、サトルはわたしのこと覚えてもなかったけど」


「え~? そうなのかい。それじゃ、わたしが貰っちゃおうっかな」


「…………」


「冗談だよ。

 わたしはね、これから『サクリファイスオンライン』のテスターをしにいくの。理くんと共にね。よかったら来る?」


 そんなお誘いがあったけど――


 なんだか、その先は、地獄を見るような気がして……わたしは首を横に振った。



「……そう。それが正しい選択」



 ベルがグネグネと、いや世界もグネグネと(ゆが)む。



『――――メサイア様』

「……神王様、どうして」


「あなたが今見たのは、かつての私の『星の記憶』です」

「どういうことですか」

「理は――彼は、私であり、彼もまた私なのです。つまり、もとから(・・・・)神様なんです。この世界が出来た理由もなにもかも、すべて」


「そんな……」


「彼は、私の魂の半分で出来ています。不完全(・・・)ということです。――ですが、人間(ひと)は誰しもが不完全です。完璧な人間などおりません。

 神王などと(あが)められているこんな私でも、失敗は多くあった。特にあの『サクリファイスオンライン』は悲劇的であり、世界を一度は死滅させた程ですから」


 まるで懺悔(ざんげ)するかのように、神王は話をつづけた。


「ただ、言えることは、あれは――星の運命だった。

 どちらにせよ、世界は滅びる運命だったのです。宇宙は時間と共に絶えず変化し、いずれは寿命を迎える。それらは、私たちや住んでいた世界も例外ではなかった。

 万物の寿命、太陽の死期、銀河同士の衝突、超新星爆発、ブラックホールの蒸発、暗黒の時代、宇宙の熱的死、ビッグクランチ、ビッグリップ、真空崩壊――そう、始まりがあれば終わりがあるのです。

 しかし、私は新しい世界を選んだ。なぜそんな能力が得られたのか今でも分かりませんけど、それが運命だった。受け入れるしかなかった。でも、おかげでこの素晴らしい世界を(つく)り上げられたのです。一度も後悔をした事はありません」


「あの、神王様。理解が追い付かないんだけど……」


「ああ、要約するとですね――昔の世界は滅びたけど、異世界として(つく)り直して、楽しすぎた!! ……ってことです」


「なるほど!! ……そ、それでサトルは元に戻るんですか!?」


「ええ、心の修復はだいぶ進んでいますよ」

「本当に? よ、よかった…………」


 そう神王様から聞いて、私はホッとした。

 神様が言うのだから、間違いはないだろう。


「私は、もしかしたら……あなたに見て貰いたかったのかもしれません。かつての世界では、私はあなたが好きだったのですから」


「え……」


「……さて、時間ですね。私は更に魂の半分を生贄(サクリファイス)にし、彼に(ささ)げようと思います。それで『心』は完全に修復される。……いえ、それどころか神王へかなり近づきます。また、【オートスキル】の覚醒も可能でしょう」


「で、でも、そんなことをしたら神王様が――」

「いいのです。これは楽しみすぎた罰です。神でも代償を支払わなければならない時があるのですよ。

 ……メサイア様。彼を迎えにいってやってください」


「本当に大丈夫なんですか……」


 どうしてか、私は神王様が酷く心配になった。


「大丈夫。私はまだ消えませんから」


 そう神王は微笑み、姿を消した。



『あなたは、理の救世主(メサイア)



 そう言い残して。



 ――――闇は晴れた。



 するとそこは、虹の空中庭園(ビフロスト)だった。



 そこに()はいた。

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