第178話 禁断の召喚魔法 - ヘルサモン -
驚くべきことに七剣星の中にレズがいた。
その名も『メグレズ』である。
「私はメグレズです! レズです!!」
「なぜ二回も言った!?」
「大事なことなので!!」
――メグレズ。
女だった。メサイアと同い年くらいの少女だった。だが、髪の色がゴールドで、ピンクのメッシュという何とも派手なヤツだった。
ついでにスタイル抜群だ。あと健脚!
「あんた、七剣星だよな」
「そうです! そこのミザールを抹殺しに来たといえば分かるでしょう。ですが、そんなことより――そこの女神!」
「へ……私?」
メグレズは――メサイアを指さした。
なぜ。
「そう、あなたよ! 気に入ったわ! あたしのモノになりなさい!!」
「はぁ!?」
「返事はイエスでしょう!」
「ノーよ」
「なんですって!?」
「私にそんな趣味はございません。それにね、相手ならすでにいるもの。ほら、この疲れた顔した冴えない男」
――と、メサイアは俺を盾にした。
「って、おい! だ~れが冴えない男だ! メサイア!」
「うるさい。でも、このままじゃ私がなんかイケナイ世界に引き込まれちゃうでしょ。そうならない為よ。さあ、サトル、がんばって」
「なにをだよ!」
まったく、とんでもねぇヤツが現れたなぁ……。
「くぅ……。そこの男! あたしとメサイア様の邪魔をするというの!?」
「いや、別に」
「ちょっとー!? サトル、私を見捨てる気!?」
「じゃあ、さっきのを訂正しろ」
「さっきのって……ああ、そんなこと。ただの冗談じゃない。そんな怒らないで。ほらこう、ぎゅってしてあげるから」
メサイアは俺の腕を自身の胸で挟んだ。
「許した!!」
「…………ふ。男って単純よね」
「なに?」
「いえ! なんでも!」
「さ~て、メグレズ! レズなのは分かった! だが、メサイアは渡さん!!」
そう俺が断言すると、メグレズは――
「きぃぃぃぃぃっ!! じゃあ、諦めるわ。そこの聖女で我慢しましょう!」
諦めはやっ!! てか、切り替えはえぇ……。
そこは普通、強引にでも奪ってくる展開じゃないの?
「てことらしい、フォル。相手をしてやれ」
「…………」
「フォル、俺をそんな目で見てくれるな!」
「お断りですよ。わたくしが宇宙一、興味あるのは兄様だけですから」
ぷいっとそっぽを向き、戦闘する意思を見せなかった。だめか。
となると……
「リース、やってみるか? エルフの強さを誇示するチャンスだぞ」
「そうですね、あたしはわがままを聞いてもらっていますから、少しは恩を返さなければなりません。では、僭越ながらあたしが相手を務めさせて戴きます」
おぉ、リースが前へ出た。素晴らしい勇気だ。がんばれ。
「へぇ、あなたがあたしの相手をしてくれるのです? よりによって、エルフ……ふふ、ふははは……面白いじゃないですか。奴隷であるエルフがあたしの相手!? 面白すぎて腹筋崩壊ですよ……あはは」
完全にリースを見下している。というか、侮ってるな。好機だ。
「お前の真の力を見せてやれ、リース」
「分かりました。本気でいかせて戴きます……」
めったに出さない杖を宙から召喚し、リースは構えた。ガチだった。
「言っておくが、アルマゲドンは撃つなよ。殺しちゃうから」
「大丈夫です。あたしが使う魔法は――愛の魔法ですから!」
超展開されるレインボー魔法陣。
「な……エルフがこんな魔力を!? そんな馬鹿な! ありえないです! 星の都のエルフは、弱体化されて、こんなパワーは引き出せないはずですよ……」
信じられないと、メグレズは驚きを隠せないでいた。
「ですが、そちらが愛の魔法というのなら、こちらは同性愛の魔法です」
なにィ!?
メグレズは右腕を挙げて、宙から杖を取り出した。
ヤツも魔法使いか――――!!
先手を打ったのは、リースだった。
『寵愛のプロミネンス、熱愛のエターナルフロスト、情愛のダークサイクロン、博愛のダイアストロフィズム!!』
あれ、なんか前と愛が違うような!
一方、メグレズも――。
「ふぅん、あなたの愛はその程度なの?」
すごい余裕だ。
いったいどんなスキルを……おぉ!?
「ふふふ……」
「リース! 気をつけろ! メグレズのやつ、おかしいぞ!」
「あたしの大魔法なら、きっと倒せます! 信じてください!」
ああ、信じてるさ。けどな、ヤツの動き……どこか変だ。
そこで、ダンッと宙を舞うメグレズ。空高く飛んだが、しかしそれでは、リースの大魔法の恰好の的となるはずだが。
「甘い!! この杖はフェイクよ!!」
「え!?」
リースは驚く。
なっ、メグレズのやつ杖を投げ捨てた! 見せかけだったか!?
「あたしの本当の魔法はコレですよ」
自身の腹に手を突っ込むメグレズ。
ちょ、まて、普通死ぬだろ。――だが出血はなかった。あれは、メサイアの『ホワイト』によく似ている。そうか、腹の中に隠しもっているんだ。暗器を。
そうして、ジャラジャラと金属音がするや否や。
『ヴァージン・チェーン・ディストラクション!』
赤い鎖が出てきやがった。
それはリースに襲い掛かろうとした。
だが、大魔法もすでにメグレズのところへ――――。
しかし。
メグレズは鎖を使い、さらに空高く飛翔した。
「――――んなアホな!!」
やべえ、鎖がリースに絡む!!
「きゃぁぁぁぁ――――――――――!!!」
赤い鎖はリースを亀甲縛りにして、捕らえてしまった。
「リース!!!」
しかも、鎖は意思を持っているようで、リースの服を破り捨てた。
「ア――――――――――ッ!!!」
俺は思わず叫んだ。
リースが丸裸で亀甲縛りに!!
「くっ…………くるしい……」
あの亀甲縛り、リースのHPをじわじわ吸い取っているように見えた。
「まさか……」
「そう、そのまさかです。あたしの鎖は相手のHPを吸い取る能力を持っている。戦闘不能になるまで、じわじわと嬲ってさしあげましょう。あなた方はあの憐れなエルフが力尽きるまで見物しているといいですよ」
んなこと出来るか!
仕方ない、俺の出番のようだな。
「おっと、動かないでください。鎖はあたしの意思で動くのです。つまり、あの鎖に囚われた裸のエルフをパチンとしようと思えば出来るのです」
パチン……可愛く言っているが、ようは殺すってことだ。
そや、七剣星は殺人が可能な裏ルールがあるんだっけな。くそっ。
「へ、平気です……サトルさん。あたしは負けません!!」
「リース……」
「ついに……これを使う時が来ました……『ヘルサモン』!!」
そ、それは……!
ステータスで見ることはあったけど、一度も使うことがなかった召喚スキル。ここでついにお披露目か。
「兄様、あれ!」
フォルが指さす方向には……。
「…………え」
「おぉ~? ありゃ、猫だがやなあ」
ミザールが物珍しそうにその動物の名を口にした。
確かに猫なんて見かけないしな。
「って、猫!?」
しかも『黒猫』である。
普通の、普通過ぎるサイズで、これといって強そうには見えない。
「……猫ちゃん? あの、これは……?」
「あははははははは!! まさか猫を召喚しちゃうだなんて、馬鹿ですね! 馬鹿エルフですね!! さすがです。やはり、エルフなんて所詮はその程度の存在ということなのです。さあ、終わりですよ~! リタイアになってしまいなさいな!!」
メグレズは声高らかに笑ったが――その瞬間だった。
「――――――え」
なんか知らんが、メグレズが地面に倒れていた。
いったい何が起きた!?
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