第18話 聖魔法スキル - あのイカ野郎に天誅を -
なんと【Lv.320】巨大なイカモンスター(ボス)が現れた!!
丁度いい。俺の『新スキル』を試す時がきた。かなりのレベル差はあるが、新しく取得したスキルなら、そこそこ善戦できるはず。少なくとも時間を掛ければ勝利はできる――と、思う。それに、俺には強すぎる、頼もしすぎる仲間もいるんだ。大丈夫だろう!
「よし、みんな! 力を合わせて戦――」
アレ……フォルの姿がない。
どこ行った?
「きゃぁぁぁあぁぁあ~~~~っ!!」
気づけばフォルの悲鳴が上がっていた。
マジか!!
あのイカ野郎、うにょうにょの触手でフォルの体を絡めとって……。とって…………?
「ああッ!! フォルがとんでもない姿に!!」
フォルは巨大な触手で逆さにされ……ぐるぐるの巻き巻きのヌルヌルにされ…………こ、これは。
「イカン! それ以上は絵的にマズい! フォル、今助け――」
「いやゃぁぁぁああッ!!」
今度は、リースの悲鳴が後方で!!
お前もかああああああああ!!
リースも同様、あのウネウネの触手に捕まってしまっていた。手足、体を締め付けられ、謎の液体でヌルヌルのベトベトに!!
「……な、なんて光景に!! おい、メサイア。あとはお前だけが頼り……」
「ひゃぁぁぁぁぁ、くすぐったいぃぃい!! 気持ち悪い~!!」
「だあああっ、メサイアもいつの間にか触手の餌食に!! つーか、お前はいつの間に!」
……ということは、残るは俺だけ!
俺ひとりの力で仲間を助けねばならなくなった。だるいな……でも、これ以上はイロイロとまずい。主に絵面的な意味で!
「こうなったら……俺があの変態イカ野郎に天誅を下すまでだ……!」
次は俺に触手が迫って来る――!
そのタイミングで【オートスキル】が反応。発動しはじめ――円月輪状の『ホーリーブレード』が俺の周囲を取り巻く。
その数、七本!
光属性の魔法『ホーリーブレード』が高速回転しまくってる。それが触手目掛け、飛んでいく! すると、触手は真っ二つに引き裂かれていき、メサイアたちを絡めとっていた触手も簡単に切断した。おぉ、いい感じ!
「よし! いまだ!」
落ちてくるメサイアをお姫様抱っこでキャッチ。我ながら上手くいった。
「サ、サトル……あんた、いつの間にあんな強力な聖属性魔法スキルを!」
「お前がぐっすりと寝ている間にな。というか、すまん、メサイア。あとリースとフォルも助けなきゃだから砂浜で待っててくれ」
俺は、サーフボード程度サイズの『ホーリーブレード』を新たに一本生成し、その上に乗った。そして高速移動。落下しかけているフォルを腕で抱えた。
「あ……兄様! 浮いてますよ!?」
「ああ、浮いてるな。正直、俺も成功するとは微塵も思わなかったけどな!」
通常、俺自身もグルグル回りそうなものだが、それは不思議となかった。スキルの特別仕様らしい。
次だ。
リースは……いたいた。
宙に投げ出され、頭から海に落ちかけている。まだ間に合う!
「っしゃぁぁ、今拾ってやるからな、リース」
しかし、そこで『デビルクラーケン』の触手が襲い掛かってくる。まずい。
まずいと思ったが【オートスキル】の水属性魔法スキル『ヒドゥンクレバス』が自動発動した。氷の渦がボスモンスターを少しずつ凍らせていく!
今度こそ!!
「フォル、キミは奥義『覇王天翔拳』でデビルクラーケンをぶっ飛ばせ! その間、俺はリースを助ける。いいな」
「分かりました! お任せください!」
フォルを宙に投げ――
「フォーチュンの名の下に……成敗致します! 奥義……覇王天翔拳!!」
放たれる拳の一撃。修羅のごとく凄まじい破壊力の波動がデビルクラーケンの体を強烈にえぐる。
相変わらず、トンデモ聖女だぜ。
そして見えた!
ついに、あの蒼白い光の正体が分かった――。
なるほどアレは、龍と虎に見えたが……違った。前はレベルが低くて捉えきれず、一瞬だったが、今はハッキリ見て取れる。
狂猛な『キメラ』!
って、なんでやねん。
なんでキメラのエフェクトなんだよ!
……まあいいか。
疑問が晴れたところで、俺はリースを助けに行く!
「……おし、リース救助完了っと」
サーファーのように『ホーリーブレード』に乗りながら、俺はリースを抱えることに成功した。怖かったのだろうか、俺の胸に顔を埋め……泣いていたようにも見えた。
……その表情はズルい。きゅんときてしまったぜ。が、残念ながらこれ以上、確認している余裕はない!!
如何せん『ホーリーブレード』の上に乗るなんて、雑技団もビックリな芸当は初めてだ。そもそも、このスキルは騎乗スキルでもなんでもなければ、ただの聖属性魔法。乗って遊ぶ代物ではないが、暇つぶしの気分転換で練習しておいて良かったぜ。
そう、俺は夜の眠れない日にこのスキルで練習もとい遊んでいたのだった。
「でも、どう着地すりゃいいんだ!!」
「私に任せて!」
「メサイア!」
よし、我が女神に任せよう。なんたって女神だ。
なにか良い方法がきっとあるはずだ!
メサイアとの距離あと僅か、きっと彼女なら俺たちを受け止めてくれるはずだ。そう信じて――
「あ……やっぱり無理」
……え?
メサイアが頭を抱え、しゃがんだ。
避けた。避けやがった!!
「うああああぁぁぁぁ、バカ女神!! 避けるなよ!!」
「ごめんなさぁぁぁあああい!!」
ごめんで済むか!!
ヤバいぞ、このままだと着地できず、どこかに激突する!! 少なくとも砂浜か大岩に!
それはつまり、死!
……やべえ。
いや、まてまて。落ちつけ俺。
なんとかできるだろう今の俺なら。
ああ、そうだ! 今この瞬間に【オートスキル】を解除すりゃいい! それだ!
「解除……っと!!」
解除されなかった。
「だめだぁぁぁぁ!!」
「サトルさん」
「リース……すまない。このまま『ホーリーブレード』に乗ったまま、俺たちは砂とか岩に激突する運命しかなさそうだ」
「大丈夫です。サトルさんは、あたしが守りますから」
リースは、俺の胸に手を当てると『ディスペル』とつぶやいた。
「おわっ!? ホーリーブレードが消えた!」
今のは魔法解除スキルか。
そのまま砂浜に叩きつけられるかと思ったが、体がフワッと浮いた。これはリースの、エルフのスキルか。おかげで助かった……。
「……デビルクラーケンは?」
体勢を整え、俺はボスモンスターのいる方角へ顔を向けた。状況が確かならフォルがトドメを刺しているはず……!
「ぐ…………ぁ……」
「……なっ! フォル!」
フォルが触手に捕まっていた。
バカな……彼女の『覇王天翔拳』が決まったはずなのに! どうして!?
フォルは再び『デビルクラーケン』に捕らえられていた。
「ど、どうなって……メサイア? 怖い顔してどうした?」
「アレはもう『デビルクラーケン』ではないわ……突然変異した『バスターデビルクラーケン』……【Lv.1320】よ!」
は…………?
【Lv.1320】ぅ!?
「んなアホな……」
そりゃ、フォルの『覇王天翔拳』も効かないはずだが……つーか、なんで、突然変異を!?
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