第166話 星の決闘大会 - 受付へ急行せよ -
星の決闘大会『コメット』の会場とやらは、『ああああ』によれば、宿から徒歩30分ほどの場所に【闘技場】があるらしく、そこで開催されるらしい。俺たちはそこへ向かっていたのだが。
「ま~~~たか」
道中で、またも貴族の壁が立ちはだかった。
しかも今度は『マックノート家』、『ヘールボップ家』、『ハレー家』派の貴族たちである。各々が誇らしくそう名乗っていたから間違いない。
「サトル、今度は8人どころじゃないわよ……『100人』はいるじゃないかしら」
「そうだな、それくらいはいると思う……。メサイア、ここは俺に任せて、お前は先に――」
「なに言ってるの。もう受付の締め切り時間まで『あと15分』ってところよ! こんなヤツらを相手にしていたら、出場できなくなっちゃうじゃない! そもそも、この貴族たちはサトルを出場をさせないために妨害をしに来ているのよ!」
おっしゃる通り。
ヤツ等は、俺を力ずくでど~~~しても止めたいらしい。
まったく、勝つためなら手段は問わんということか!!
いやだが、ここで怒りを爆発させている場合ではない。
そんな時間も勿体ないオバケである。
「時間は惜しいな……」
「サトルさん。ここは、メサイアさんとあたしが食い止めますから、どうか先へ」
「リース……けど、二人であの『100人』を相手にするつもりか!?」
「お父さんがよく口癖のように言っていたんです。兵は拙速を尊ぶと。だから、ここは任せて下さい!
なんと言っても、最強の女神と最強のエルフですよ? 全然へっちゃらですっ! あんな 正々堂々のカケラもない卑怯な人たちは、全員まとめて、もぎゅ~~~っと成敗しますから!」
キリッとした涼しい顔で、そうリースは俺の前へ立った。
しかし、『もぎゅ~~~』ってなんだ?
「すまねぇ……! メサイアも平気か」
「ふふっ、サトル。やっと面白くなってきたじゃない!」
「え?」
「1000ある女神スキルをここで全部試してやるわ……!! ヤツ等は生贄よ……サクリファイスよ。ふっふっふ……」
ボキボキ指を鳴らすメサイアの顔は悪鬼羅刹と化していた。おい、そこ! それじゃ、女神じゃなくて邪悪な死神だぞ! 顔怖すぎィ。
「ほどほどにな。それじゃ、俺とフォルは先に向かう! あとベルも来るよな」
「いや~ごめんね、理くん。わたしって優勝賞品のおまけにされちゃったじゃん? だから、これから別の場所へ向かわなきゃ行けないんだ」
「つ、つまり?」
「ここでお別れ。ごめんね」
ベルは手を合わせて謝ると、軽快に飛び立った。
行ってしまった……。
まあ、向こうは向こうで任せておこう。
「二人とも、絶対に勝つのよ!」
「サトルさん、フォルちゃん。必ず優勝してください!」
メサイアとリースはそう俺たちに向けてエールを送ってくれると、100人の貴族たちの方へ向き直った。
……心配だな。物凄く心配だけど、でも、信じるしかない。
そうだ、いつだって俺たちは困難を乗り越えてきた。
「行こう、フォル」
「はい、兄様」
◆
残り時間あと――『10分』もないかもしれない。
急げ、とにかく走って走って間に合わせるんだ。
ええい、まどろっこしい!!
俺はフォルを小脇に抱えた。
「にゃ!? 兄様、そんな……公衆の面前で堂々と……♡」
「そんな場合かっ! 加速する――――!!!!!!」
「え……加速ですかぁぁぁ――――――――――!!!!?」
ニトロの爆発的推進力を使い、移動速度を1000%底上げした。
「うぉぉぉぉぉおぉぉおおおおおおおおおおお!!!!!」
俺は、ギリギリマッハ青年になった。
ようやく見えてきた闘技場。
もうあとわずか!
そうして、受付の締め切り『1分前』に到着した。
「よし滑り込みセーフ!! しかも邪魔はいないな! たぶんさっきのマッハで何十人か吹き飛ばした気がするが、そんな事はどうでもいい。フォル、急いで受付を済ませるぞ!!」
「……わ、分かりました!!」
俺は受付の美人エルフに申し込みをした。
「はい、これで二人とも星の決闘大会『コメット』に出場できます。参加者は待機室にてお待ちくださいね~」
「待機室?」
「はい。左が観客用通路ですので、右の方ですね」
「あっちか。よし、フォルいくぞ」
「あ……あの、兄様」
「どうした、緊張しているのか。まあ、俺もちょっとは緊張しているけどさ」
「あの…………その」
「え……まさか、フォルお前、トイレとか言うんじゃないだろうな!?」
すると、フォルは――
「…………ぐすっ、ひぇぇん……」
内股になるや、泣き出しそうに――いや、咽び泣いていた。
「泣くなー!!! って、さっさと行ってこーい! 待機室で待ってるから! てか、ずっと我慢していたのか……」
「だ、だって、さっきの爆速移動が怖くて……あ、あんなスピードだなんて聞いていませんよ! 危うく漏らしそうに……。
それと、ひとりは嫌です。心細いです。なのでせめて、トイレの前までついてきてくださいましぃ……兄様ぁ……」
「わかったわかった。さっさと行こう。早くしないとダム決壊だ」
「……はい(泣)」
◆
聖女が漏らす……それはそれで、見てみたかった気もしないでもないが、いや、それはフォルのヘンタイに磨きが掛かるだけで、なんのメリットも――――あるか? いや、むしろアリか。アリなのか。
……うーん、いや、やっぱりイカン。ダメ、絶対。
そんなこんなで、待機室へ。
【 星の決闘大会・コメット - 待機室 】
中に入ると、貴族やら何やらで埋め尽くされていた。
「おいおい、何人いるんだよ……待機室狭すぎだろう」
「すごい人数ですね、兄様。ざっと『100人』以上はいますよ」
「くぅ、おしくらまんじゅう状態だな。フォル、俺から離れるな」
「ひゃ!」
「どうした……」
「誰かに、お、お尻を触られました……」
「なんだと……そいつメタメタにヌッコロス!!!」
だめだ……人が多すぎて誰が誰だか分からん。
ひとまず、俺はフォルを抱きかかえることにした。
「兄様……すごく嬉しいです♡」
「……この状況に応じてペロペロしようとすんなよ」
「えへへ……♡」
「えへへじゃねえ! まあいい、もうすぐで大会のルール説明があるはずだ。それまでは、このまま密着だな」
「わたくしは、ずっとこのままでもいいですよ♡」
フォルのいつものヘンタイはスルーするとして、この缶詰状態はなんとかならんのか。……む、あの顔、見覚えがあるな。あいつも、あいつも。
そして、アイツだ……!
ハレー家の奴隷連呼少年『ノヴァ』もいた。あのヤロー、椅子に座って優雅にしやがって。いまいましい。ア~、いまいましい。
しかもヤツと目が合った。
「………………」
『え~、待機中の皆様、お待たせしましたー!! これより、星の決闘大会・コメットのルール説明をいたします!!
え~、まず参加人数ですが……なんと例年より多い『300名』です!!』
おおおお~と声が上がる。
確かに『300人』は多いな。道理でこんなぎゅうぎゅうなワケだよ。
こんな大規模人数で決闘すんのか。
そして、次のルール説明に俺は頭が真っ白になった……。
なんじゃ、そのルール!!!
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