第165話 うごめく貴族たち
朝ふと目覚めると、下着姿の女神とエルフと聖女、聖戦士に囲まれているというか……添い寝されていた。
おぉ……みんな天使の寝顔。癒されるぅ~。
それに、この懐かしい光景。
「う~ん、身動きが取れんなぁ」
困ったなぁと腕を組んで、どうするべきか思案していると――
扉が勢いよく開いた。
「邪魔するぜい~サトルぅ!
――って、うわ!!! なんだこれ!! す、すまん……!?」
そこには、アゴが外れそうなくらい驚いている『ああああ』がいた。しかも、腰を抜かしてしまっている。
「おはよ、ボボボボ」
「……わわわわ! サ、サトル……お前ってとんでもねぇ生活してるんだな……。よ、四人もの美女に囲まれて一晩を明かすとか……ありえんだろう、普通。絶倫なのか!? そうなんだな!?」
「バカ、勘違いするなって。もともと俺たちは、長い冒険で小屋生活だったから、習慣が染みついてしまっているんだよ。で、いつも大抵はこうなる」
「いや……ねーよ」
「ねーか……」
で、続いて『ええええ』と『うううう』もやって来た。
「うわァ、何事!?」「にょ、女体まみれ!!」
二人も腰を抜かしてしまった。
「よう、二人とも久しぶり。てか、三人してなんの用だよ。このままだとプライバシーの侵害だぞ。どこに訴えればいい?」
「おっと、すまん。説明がワシがする。ええええとううううは見張りにつけ」
「分かった、兄貴!」「こっちは任せてくれい!」
二人は颯爽と去った。
え……見張り?
「なんだ、朝っぱらから物騒だな」
「……ああ、ついにヤツ等がついに動きだしたんじゃ」
「ヤツ等?」
「この都のバランスだった存在『七剣星』っちゅーやつやな。
ま~、『星の都』の守り神みたいな連中だ。この都じゃ有名でな。
ドゥーベ、メラク、フェクダ、メグレズ、アリオト、ミザール、アルカイド&ベネトナシュちゅーとんでもねぇ力を持つ守護者――いや、星の代行者が七人もおるんじゃ」
その中で聞き覚えのある名前があった。
そや、ミザールは洞窟前にいたような。
都に入った時にはフェクダと遭遇したな。
「で、そいつらが何だよ」
「それがな、『七剣星』がマックノート家についたんじゃ。これはとんでもねぇことになっちまった。驚天動地じゃ!」
「――というと?」
「貴族すらも奴隷になる可能性があるっちゅーことや」
――は?
貴族すらも……?
「もともとこの『星の都』は、醜い権力争いとか領土問題で内紛が度々頻発しておったんや。それを収めるために御三家が誕生した」
それが『マックノート家』、『ヘールボップ家』、『ハレー家』ってことか。
「――で、それだけじゃ心もとないと、バランスを保つために星の力を借り、『七剣星』を結成した。彼らは外界でいうところの『軍』じゃ。けど、少数精鋭でな。たった七人で治安を維持し、マグネターからも都を守護していると聞いておる」
「なるほ。んで、その『七剣星』がマックノート家についてバランスが崩壊しちまって、都はいよいよウ●コ化してるってことか。そのせいで全員が奴隷になっちまうかもしれんと」
「ま、要はそういうこったな」
困り顔でああああは笑った。
「俺にどうしろと」
「まずは大会に勝て。その優勝賞品……とは言いたくないんじゃがな、エルフはお宝らしい。噂によれば、そのエルフがもつ『指輪』が全能なる力を持つとかな。だが、そのエルフは指輪の在り処について一切、口を割ろうとしなかった。その結果、今回の大会の優勝賞品になったちゅー話をハレー家から聞いた」
「そうか、ああああはハレー家派なのか」
「ああ、そうじゃ。でも前に言った通り、ワシはもう関係ない。この『星の都』に戻ったのも、復讐ためじゃ! 復讐じゃ! ヤツら一族郎党[ニャオーン!]や!
でまあ……今はかつてのパイプを使い、ハレー家に潜入し、スパイ活動をしとるってとこだな」
「すげぇなお前。尊敬するよ。よし、分かったよ。俺等は、もともとそのエルフを救出しに来たんだ。それが最大の目的でもあった。
だけど、この『星の都』に来てよく分かった……ここはウ●コだ。
臭すぎる。ひどい悪臭に満ちている。
こんなに可愛いエルフを奴隷にしているとかさ……絶対に許せん」
俺はリースの頭を撫でながら、闘志を燃やしまくった。
「お……おう。サトル、お前の殺気すごいのう。
正気を保っておらんと、ぶっ倒れそうや。
まあ、お前さんには期待しておる。どうか頼む、この腐りに腐りきった都を変えてくれい」
いつかのように土下座する、ああああ。
「サトル、もうひとつ頼みがある」
「なんだ、言ってみ」
「ワシは、フォルトゥナ様のファンでな……そ、その、握手して戴きたい」
「なんだそんなことか。後でな。こいつら叩き起こして支度したら、すぐ向かう。それまで待っていてくれ」
「すまんな。では、ワシらは待機しておる」
清々しい顔でああああは去った。
「さてと……起こすか」
◆
準備支度を済ませ、俺たちは宿を後にした。
「サトル~まだ眠いわぁ」
気だるそうにメサイアは目を擦る。
「姉様、大きなアクビですね」
「そうなのよ、フォルぅ~。あぁ、あんたにおんぶしてもらおうかしら~」
とメサイアはフォルにだる~んと寄り掛かった。
「お、重いですよぉ、姉様ぁ」
「むぅ~。失礼なこと言ったので、このままね」
「えー! そんな、兄様ぁ助けてくださいまし~」
「後でな。それより、宿の前に既に貴族共がこうも殺到しているとはな……めんどくせえ……ああ、めんどくせえ」
どうやら、大会の前に俺を出場不能にしたいらしい。
なるほど……そこまでして俺を優勝させたくねぇか。
「クク……サトルとか言ったな、ここでテメーをやっちまえば……大会も楽になるよなァ」「そうだそうだ! ベル様は俺のモンだ!」「これだけ人数がいるんだ、楽勝だろう」「ああ、こっちの戦力は『8人』もいるぜ」「さっさと闇討ちしちまおう!」「貴族の力を見せてやる!!」
不穏な空気が襲ってくる。
「はぁ~~~…。まいいや、準備運動にはいいだろう」
面倒ながらも俺は、指をバキボキ鳴らし……
新スキルを試してみることにした。
『ダークディストラクション――――!!!!!』
つっても【オートスキル】にセットしたものなので――敵が攻撃してこないと発動しないのだが、物の見事にヤツ等は一斉に向かってきてくれた。
「死ねやああああ!!」「女は俺たちが面倒見てやんよ!!」「優勝は俺のもんだあああ!!」「やっちまええええええええ!!」「ハラワタぶちまけろおおおお」「晒し首じゃあああああ!!!」
条件は整った。
俺自身から小さな、とても小さな『ダークエネルギー』が放出された。なんです、あのビー玉みたいなサイズ。
「ちっさ!」
だが、次の瞬間には――
「うぎゃあああああああああああああ!!!!」「ぬぉぉぉおおおおおあああ!!!」うぉえええええええああああ」「っべべべべべばばばぶぶぶう!!!」「ぶええええええええええええ!!」「ちょりいいいいいい!!!」
黒いビー玉は貴族たちに命中し、大爆発を起こした。
「おわっ……!」
「きゃっ……」「こ、これは……」「うっ……」「ひゃー」
あまりの威力・爆風に俺は仲間たちを守る姿勢に入った。
「こ、ここまでとはな……」
新スキル『ダークディストラクション』は【ニトロ】の付与を前提としたもので、更に爆発的なエネルギーとして放出することができる。言ってしまえばこれは『核エネルギー』に匹敵する。
が、今そんなモン使ったら都が余裕で吹き飛び、壊滅してしまうので、かな~り威力を抑えて発動した――つもりだった。だが、ここまでの威力だったとは。
「まあいいか。どのみち、貴族共はぶちのめす予定だったし」
「サ、サトル……もう少し手加減しなさいよ。危うく死ぬところだったわよ!」
「すまんすまん、メサイア。飯奢るからさ」
「ならいいわ!」
どうやら許してくれたようだ。単純で良かった。
「さあ、兄様。大会に遅れてしまいます。参りましょう」
「そうだな、こんな事している場合じゃねえ。行くぞ!」
「「「「おおおお~~~~!!!!」」」」
邪魔が入ったが、俺たちを止めることなんて誰にも出来ない。
何があろうとも、俺たちは先へ進むだけだ。
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