第160話 ビキニアーマーに殺到する貴族たち
星の都は、都というだけあって宇宙のように広大だった。
現在、都全体を見渡せる展望台。
今そこで俺とベルは二人きりだった。
「へぇ。こんな絶景を前に、こんな美味いものが食えるとはな」
串に刺さったトルネードだかハリケーンだかサイクロンだか、まあどれでもいいんだけど、そんな『スパイラルなスライスポテト』を俺とベルは頬張っていた。
ただ一点、問題があった。
「ベル。お前さっきから、顔とか体とかジロジロ見られすぎだろう。しかもさ、大半が男連中だし、まあ……ビキニアーマーだから目立つんだろうけどさ」
「う~ん、それもあるかもね。
でも多分だけど、わたしってほら、王様に仕えていたじゃない。それでちょっと有名人なのかもね」
ちょっと、どころじゃないだろう。
はむはむとポテトを食べていると、ベルはナンパされていた。
……いや、されまくっていた。
さすが聖戦士・ビキニアーマー。モテモテだなぁ。
「ベ、ベル様ですよね! よければ、大貴族であるボクとお付き合い戴きたい」
「いやいや、俺でしょう。花の都で父上が騎士長をやっておりましてね!」
「僕は『ハレー家』の者。アーサー王とは懇意にさせて戴いておりますよ。生活もお金も不自由させません」
などなど……貴族が殺到していた。
困惑するベルは俺をチラチラ見てくる。
その度に、俺には男共から殺意の視線も向けられているんだ。
ヤメテ戴きたい。
「では、こういうのは如何でしょう」
ある貴族はこう言った。
「明日、星の決闘大会『コメット』が行われます。それに優勝した者がベル様を我が物にできる……というのは如何でしょうか。しかも、優勝すれば今回はとても価値のある『奴隷エルフ』も贈られるのです。とても名案だと思いませんか」
「「「おおおおおお~~~!!!」」」
貴族とその他は歓声をあげた。
いや、まて。勝手に話を進めるなボケ共。
「おい、お前ら。このベルは俺のだ。勝手に賞品にするんじゃねえ」
「理くん……嬉しいな」
うわずった声でガバッと腕を回してくるベル。注目度は抜群になってしまい、余計に彼らを奮い立たせてしまった……。
「「「「「もう許さねええええええ!! 決闘だああァァァアアアア!!!」」」」」
「……い、いやだから、ベルは俺のだってば」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」」
だめだ……コイツ等。
もう聞く耳持たずだ……まずい。ベルが取られてしまう!
「大丈夫だよ、理くん。要は優勝すればいいんでしょ」
「あ、そっか。その手があったわ」
「でも万が一、誰かのモノになったらどうしようっかな」
「いじわるなこと言うなよ……」
「ふふ、ごめんごめん。……けどね」
ベルは目蓋を閉じ、こう言った。
「星の決闘大会『コメット』……わたしの為だけなく、絶対優勝した方がいい」
「ああ……その為に来たんだろう」
もうすぐ……きっと。
「それでは、僕はこの案件を他の貴族たちにも伝えてくる。その方が公平だし、大会ももっと面白くなる。そうは思わないか」
「なっ、テメェ……。確か『ハレー家』とか言ったな」
「ああ、そうとも。ヘールボップ家を知っているだろう。あのバカ共と並ぶ地位と財力を持っていてね。まあ、ライバルみたいなものさ」
「そういうことか。つまり、俺とお前とは相性最悪だな」
「あぁ、確かに貴様とは馬が合わなさそうというか、こちらから願い下げだ。
そんなワケだ、貴様からベル様を奪ってみせる……。貴様のような平民以下の奴隷には相応しくないんだよ。奴隷は奴隷らしく振舞いたまえ」
と、ハレー家の貴族は嫌味たらしく、薄笑いを浮かべた。
俺はというと……。
ベルのビキニアーマーにある、ふたつのお山に手を置いた。
「なっ――――――――――!!!!!!!?」
貴族は、俺のその予想外すぎる行動に仰天し、ひっくり返った。
他の一同も目を充血させ、愕然としていた。
「………………」
ベルは無表情だった。いつものクール。
「お、憶えてやがれええええ!!! くそおおおおお!!!」
みんな恐れをなして(?)去った。
「理くん」
「うん~?」
「盾で殴り殺したいところだけれど、今回は特別に許してあげる。あのハレー家の男……理くんのことを奴隷奴隷って連呼しすぎ……むかついた」
「だな。アイツは特に気に食わん。いつか泣かす」
「がんばれ」
微笑みを浮かべ、ベルは俺の頭を撫でてきた。
「さて、そろそろ皆のところへ戻るか」
「うん。……あ、まって」
「どうした」
「理くん。口元にポテトついてる」
そうベルは、俺の口元からポテトの欠片を取って、飲み込んだ。
「うん、おいしい。うんうん……キスしたいな」
「なんだ、ベル。お前からなんて積極的だな。けど、それは記念すべき優勝に取っておく。そうだ、俺の優勝賞品はそれがいい」
「へぇ、名案。じゃあそうしよう。約束。ゆびきりげんまんウソついたら、理くんの大事なところ切断~♪ 指切った」
「おう、やくそ――――くぅ!?!? まてまて、なに物騒な約束させてんだよ」
「ああ、今のは負けた場合ね。勝ったらもちろんキスだよ」
そ、そういうことか……てか切断って……。
恐ろしい約束をしたものだ。
大会まではまだ時間がある。
もう少し、都を散策したいところだが――。
いつも応援ありがとうございます。
もしも面白い・続きが読みたいと感じましたら、ぜひブックマーク・評価をお願いします。感想もお気軽に書いて戴けると嬉しいです。




