第147話 大聖戦③ - 聖地・コンスタンティン -
全聖地、ほぼ全ての【円卓の騎士】が集結した。
その規模――300万はくだらない。
見渡せど、人、人、人。
人間だらけ。
俺は、空から見渡しているから、余計にその足のすくむような人の波に、ただただ圧倒されるばかりだった。……マジですげぇよ。
「アーサー王! 我ら全聖地、あなたと共に!! どうかご命じ下され!」
集う騎士たちを前に、アーサーは、
「みんな、一緒に戦ってくれ!!」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉぉ――――――――――!!!!!!」」」」」
300万人が一斉に『円』となり、
コンスタンティン軍を逃がすまいと、押し寄せた。
ようは『◎』って感じだな。
中の円がコンスタンティン軍で、周りの囲っている円が俺たちだ。
俺は、その隙にアーサーの元へ。
「アーサー!」
「サトルさん! こちらはお任せください! 僕たちが請け負いますから……ですから、サトルさんはコンスタンティン王を!」
「分かった! 俺たちは、【聖地・コンスタンティン】へ向かう。直接乗り込んで、王を叩く!」
「ええ。その前に先ほど『テラボンバー』ギルドから有力な情報を戴きました」
「なんだって!?」
「彼らによると、裏切者がいたようです。気を付けて、誰が裏切っているか分かりませんから!」
「……やっぱりか。そんな気はしたんだよな。ま、直接乗り込めば分かるだろ」
「はい、お気をつけて」
あとは、メサイアたちを。
……どこだ…………人が多すぎて。
まて、ここで『千里眼』の出番だ。
いた!!
俺は、激戦の合間を潜り抜け、全力で向かった。
「……よし。到着っと」
「サトル! よかった……飛び出して行ったときは、どうなるかと……」
「すまん、心配せたな」
「あたりまえじゃない……!」
メサイアは、抱きついてきた。
……いや、リースもフォルも、ベルもだ。
俺は……
「みんな、本当にすまない。でも、もう直ぐだ。
これから【聖地・コンスタンティン】へ乗り込む!! この戦闘は【円卓の騎士】たちに任せて、俺たちは向かうぞ」
「分かった。これで最後の戦いってことね」
「そうだ。メサイア。この戦い、もう終わりは近い」
俺たちは――この大聖戦の激突の隙に、
【聖地・コンスタンティン】へ向かった。
◆
【 聖地・コンスタンティン 】
久しぶりにこの聖地へ入った。
思えば、『聖地巡礼』以来だろう。
街並みがそのままだった。当然といえば当然だけど。
「変わりは……いや、あるな」
「ええ、静かすぎるわね。まるで人の気配がない」
メサイアの言う通り、人の気配もなければ――兵の姿もない。
どうやら、残るは『王』だけらしい。
そうだな、あんな大規模な戦争が起きたんだ。みんな疎開するわな。
このまま王のいる『城』へと向かった。
その道中もびっくりすくらい兵と遭遇しなかった。
これではまるで誘い込まれているような――ま、まさかな。
罠か?
そう思ったのも束の間――
『ゴ――――――』と、結界が広がった。
「これは……なんだ?」
「兄様。これ、グロリアスサンクチュアリより強力なヤツですよ!」
「なっ……。そうか、俺たちを逃がさないってわけだ」
そのまま『城』まで来いって意思表示に違いない。
いいぜ、コンスタンティン!
「いくぞ! どのみち、戦いは避けられん」
走って城を目指した。
長い長い道を走り続け――
・
・
・
やっと城の前へ。
「でかいな……」
「サトルさん。このお城、すごく嫌な感じがします」
リースは恐怖で顔がひきつっていた。
ああ……ここは混沌に満ちている。
「みんな、準備はいいか」
みんな、静かに頷く。
覚悟は出来たようだ。
◆
【 王の間 】
王座に堂々と構える老体。
白髭を優雅にさすり、俺たちを殺意の波動で睨む。
なんてプレッシャーだ。
あの時の光景が目に浮かぶ。
「くっ……」
けど、
あの時はやられたが、今度は負けねえ!!!
「理くん。あれ!」
ベルが指さす。
「え……おい、お前……!」
王の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
あれは見覚えのある顔だぞ。
そうか……『裏切者』は、お前だったのか――――――!!
「村雨……! どうしてだ!」
「どうして? それは全て兄の『ぽむぽむ』が悪いんだ……」
「ぽむぽむが?」
「そうだ、アイツはふざけた名前をしているクセに、俺の兄だ。しかも、強く、誰からも頼られ、好かれ、慕われている!!」
「そんな事で裏切ったのか!!」
「そんな事だと!? アイツはな……俺のエイルすらも取ったんだぞ!!!!!」
エイル――ギルド『サンフラワー』に所属しているあの女の子か。確かに、ぽむぽむとは良い雰囲気だったな。
「だからって、ぽむぽむを……みんなを裏切るなんて!!」
「うるせぇ!! 俺はやりたいようにやる……! これは、俺を理解しないクズ共への復讐だ!!」
……コイツ。
あの目つきは本気だ。
「そうか、なら仕方ない。それにお前の裏切りのせいで、俺はヒデェ目に合った……。だから、ぶっ倒す!!」
「ククククク……。やれるもんならやって――――――――」
俺は、瞬間的に移動し――村雨の顔面をブン殴った。
「なっ……がああああああああああああああああああああ!!」
ゴロゴロ転げまわって、村雨は倒れた。
「か……かはっ……。な……なぜだ……。王よ、俺に聖者に匹敵する『力』を与えてくださったのでは……!?」
だが、王は……村雨を見すらしない。
俺だけを睨んでいた。
「おろかな情報屋よ。貴様の役目はとうに終わったのだ。
あとは我がいれば十分ということ。最初から貴様の力に期待などしておらぬ。所詮、貴様は有益な情報を握っていただけの道化よ」
――その言葉に、村雨は絶望した。
悔しそうに涙を流していた。
……同情はできないな。
「待たせたな、コンスタンティン」
「よい。先ほどは余興にすぎぬ。――しかし、よくぞ我の策を見破ったな。本来であれば、我が『聖地・モードレッド』へ直接向かうはずだった」
――そうさ、そのせいで俺は一度死にかけた。
けど、メサイアの【女神のネックレス】に付与したループスキル【インフィニティ・オーディール】のおかげで助かったのさ。そんな事は、口が裂けても言えないけどな。
「こっちには、幸運に恵まれた……最高の聖女がいるからな」
俺は、もっともらしく理由をつけておいた。
「あ、兄様……! それでは、わたくしが狙われませんか!?」
「大丈夫。アイツは、俺にしか興味ないらしい」
「……ふむ。まあよい」
コンスタンティンは立ち上がる。
マントをゆっくりと外し、咳払いすると――
「勝負は決した」
「ごばあぁぁぁ!?」
――――か…………まて、なんだ…………。
お、おれ……
「サトル!! そんな!!」
「あ、兄様!!」
「サトルさん!!」
「理くん……目が……!!」
あ…………おれ、視界が……まっくらだ……。
なにが起きて……
―――――グシャア。そんな嫌な音がした。
ああ――俺、両目を、眼球を奪われ、潰されたのか……。
「ぐ――――――!」
遠くへ突き飛ばされ、俺は倒れた。
……また、負けるのか。
ふざけるな……!
俺はもう負けるわけには……
ん…………
なんだこの感触。
ポケットに……、以前、ガチャで手に入れた……
【 封印されし者の邪眼 】
……あぁ。まさか、このヌメヌメが役に立つ日がくるとはな。
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