第145話 大聖戦① - 八万の軍靴・終焉の行進 -
不死身の騎士――『プロキシマ』と『ケンタウリ』は消滅した。
一万人規模の総攻撃を食らい、塵も残らす消え去った。不死身といえど、あれだけの猛攻撃を一時間も耐えられないはずだ。
「助かったよ、みんな」
「サトルさん、ご無事で良かったです」
寂しかったのか、リースは泣き顔で飛びついてくる。
「理くんが心配になってね。ほら、どのみちコンスタンティン軍が攻めてくるんでしょ。だったら、中にいようが外にいようが関係ないかなって」
「てことは、これはベルの発案か?」
「いや、これはレッドスカーフだよ」
なんと!
こんな大胆なやり方は、あいつだったか。
まったく……ナイスだ。
「レッドスカーフ、これで良かったのか」
「ああ、いい。民あってこその聖地だ。我々は最後まで戦う」
夜が明ける――
すると、
とんでもない数の軍靴の音が聞こえ始めた。
次第に、この砂漠一帯に広がる影の群れたち。
これは……、
この空気を圧殺せんとする尋常ではない気配は――まさか。
「来やがったか……コンスタンティン軍!!」
八万のコンスタンティン軍が、砂漠を取り囲むかのように佇んでいた。なんちゅー規模だ。こうして目にすれば、恐ろしいほどの数だ。
これが『聖者の行進』と謳われた軍隊か。
「サトル……」
不安げに俺を見つめるメサイア。
分かってる。
やべー状況だってことは。
こんなにも緊迫感のある状況は、レイドボス以来だろう。
「ああ、ついに来たな。こっちは今のところ一万とちょい。圧倒的に不利だ」
「いやぁ、ここまでとは思わなかったね。理くん」
嫌な汗を垂らすベルは、珍しくぎこちなかった。……こんなヤベー状況を前にすれば誰だって、手汗握るよな。俺なんか、足が小刻みに震えている。
ああ、クソ。身の毛がよだつ。
「兄様……」「サトルさん」
フォルもリースも、険しい顔をしていた。
「た、ただいま僕も到着しました! あれが……コンスタンティン軍ですか……」
「アーサー。君も駆けつけてくれたのか!」
「はい。居てもたってもいられなくて。僕も戦います!」
「……分かった。頼む」
けど、この絶望すぎる『一万vs八万』は、圧倒的に差がありすぎる……!
勝てる見込みは……限りなく低い。
けど、それでも!
「……ここを突破すれば……聖地・コンスタンティンだ! いくぞ……!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」」」」」
全員一斉突撃を開始した!
◆
「くそ……ぜんぜん減らねえぞ!!」
倒しても倒してもどんどん兵が湧いてくる。キリがねえ!
「はぁ……。これはキリがないわね」
連戦のせいか、メサイアは憔悴しきっていた。もう肩で息をしている状態だ。俺も、リースもフォルもベルも――みんなも。
……まずいな。
「あと、何万だ……」
「わからない。多すぎて」
ほぼ防御に撤する俺たち。これでは、なかなか反撃が出来ない。――そうしていると、馬に乗った騎士がやってきた。
「我が名は『ローズ』! 貴様の首貰ったあああああああああ!」
「うるせえええええええ! 聖槍・エクスカリバァ―――――!!!」
俺はここぞとばかりに、槍をブン投げた。
ただ、使用回数はそれほど多くない為、あと精々2~3回が限度だ。
光が将と兵を蹴散らし、数千は殲滅した。
「……よ、よし。なんとか階級の高そうなヤツと兵力を削いだぞ」
それでも数千。まだまだ向こうは万規模。
「きゃああああ!」
「リース!! ……おい、リース! 足に怪我を!」
「……へ、平気です。これくらい」
「あ、兄様! どいてください。治癒しますから!!」
「あ……ああ、任せたぞフォル」
くそっ、どんどん激しさを増してやがる。
敵はスキルを乱れ撃ち。こっちを行動不能にしてやがる。こんな一方的な攻撃をされては、手出しがし辛い。
「ベル、すまない。防御を任せてしまって」
「いいよ、いいよ。フォルちゃんの聖域だってあるわけだし。そうだ、こんな時だけどさ、理くん」
シールドで俺たちを守りつつ、ベルは手招きしてきた。
「なんだ?」
「わたしはね、今すっごく甘いものが食べたい気分なんだ!」
「はぁ!? こんな時に何を……ああ、分かったよ。この戦いが終わったら、いっぱい美味いもん食べさせてやる」
ベルのヤツ、あれで俺を励ましているつもりらしい。不器用すぎだろ。……そこがいいんだけどな。ああ、まったく、恐れ入谷の鬼子母神だよ。
なんとやっとると、レッドスカーフが戻って来た。
「レッドスカーフ、状況は!?」
「……芳しくないな。こちらはだいぶやれた。あと半分だな」
「は、半分……そんなにやられたのか」
「ああ、彼らは勇敢に散っていった。同胞の命を無駄にしないためにも……サトル、絶対に勝つのだ。よいな」
「そうだな。それじゃ、ドーンと行くとするか!」
とっておきを出すしかない……!
これは出来れば、コンスタンティンまで取っておきたかったが――
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