第138話 血の煉獄と勇猛な竜殺し
かつてを共にしたギルドが協力してくれる事になった。
彼らは一枚岩の団結を誇る。それは、あの戦い『レイドボス討伐』でもハッキリ分かっていた。そうじゃなかったら、世界は今頃、闇に落ちていただろうしな。
さあ、強力な仲間も引き入れたところで――
「よし、俺たち『テラボンバー』は……このまま砂漠を抜け『聖地・モードレッド』へ向かう。ま、道中にお姫さんがいるってのは、マーリンから聞いた。会いに行こうじゃないか」
「さっすが旦那!」「俺たちゃぁ、旦那に一生ついて行いきやす!」
そう賛同したのは、パースケとグースケだけだった。
……あれぇ。
「どうした、メサイア、リース、フォル、ベル。テンション低いぞ……」
「だって、あんなモヒカンたちと一緒だなんて……」
「おい、メサイア。今の彼らにモヒカンははないぞ。ただのハゲだ」
「そうだけどー」
「それにな、おい、パースケとグースケ。ご苦労だったな」
「ええ、旦那。俺たちは、指示通り【情報操作】へ向かいます」
「旦那! 達者で!」
「ああ、任せたぞ」
パースケとグースケは去った。
「え……情報操作ですか?」
真っ先に驚いたのはリースだった。
「ふっ、敵を欺くには、まず味方からってな」
「どーゆーことー?」
「詳しい話はあとだ、メサイア。もうすぐ、モードレッドとエンカウントするだろう。その時が勝負だ」
その通り、いきなり無数の剣が飛んできやがった。
「あっぶねっ!!」
ベルが巨大なシールドを展開し、全てを防いだ。ナイスゥ!
「よくやった、ベル」
「これくらい余裕。それより、わたしはアーサーを守るよ」
「ああ、頼む。アーサー、大丈夫か。このビキニアーマーの姉ちゃんが守ってくれるからな」
「はい……! よろしくお願いします、ベルさん」
さてと――俺は……
歩いて、ヤツのところへ向かう。
『赤いスカーフ』を首に巻いた女のところへ。
「あんたが……モードレッドか」
「ほう、お前が噂の『聖者』か。我が名は『レッドスカーフ』だ。間違ってもその名で呼ぶなよ」
ぐっと顔が近づくと、睨みあう状況になった。
「レッドスカーフ。あんたはどっちの側なんだ? マーリンに聞いたぜ、あんたはどっちつかず……半端者だってな。本当は、アーサーを殺したいんだろう。この際だ、ハッキリ言ったらどうだ」
「くくく……。アーサーを殺したいかだって? 確かに一時の迷いはあった。裏切ろうとしたことも何度もあった。しかし、今はアーサーよりも貴様だ! お前は、我が『ドラゴンキラー』をあっさりと撃ち落としたのだからな。
それに、貴様は我が聖地に無断で踏み入れようとしている。――であれば、それを阻止するのが我が使命だ」
「そうか。それじゃ、アーサーは殺さないんだな」
「それは貴様次第だ――!」
レッドスカーフが体勢を崩し、蹴り上げてくる。俺はそれを回避。おかげで【オートスキル】が発動し、水属性攻撃の『ヒドゥンクレバス』がモードレッドにぶち当たる。
「なっ! 貴様、なんだこれは……!」
「さあな、続けてみれば分かるさ」
距離を取るレッドスカーフ。
ヤツは『ドラゴンキラー』をスキルで生成し、構えた。なんつー覇気だ。それが俺に重く圧し掛かる。
それからヤツは、剣を俺に向けて振っただけで――
「――――ぐっ、なんだこの爆発! そうか『エクサダイト』か!!」
「気づくのが遅かったな!」
連鎖爆発が続く。……くそっ、なんて威力だ。厄介な。けど、その分はヤツにお見舞いできるな。
俺の【オートスキル】――『ダークニトロ』がレッドスカーフの爆発を上回る速度で自動反撃を開始した。
「ぬあっ……! なんだこの黒い爆発は……! 我が『エクサダイト』を凌駕するとだと……! くぅぅぅ!!」
それもそうだ。これは、この世の全ての憎悪。そう簡単には――
「それが、どうしたァァァ!!」
「――――な」
レッドスカーフのヤツ、気合で掻い潜ってきやがった!
なんて、ヤツだ……!
こいつ、まさかこの距離で――!!
必死に『ドラゴンキラー』を伸ばしてくるレッドスカーフ。
こんな勇猛果敢な騎士がいたとはな……! 甘く見過ぎていた……! 認めよう、こいつは半端者なんかじゃない……紛れもない十聖騎士だ。
「はぁぁぁあぁあぁぁ――――!!」
ドラゴンキラーの剣先が俺の腹部に到達する。
「ぐあぁッ!?」
まずい、このままだと腹を貫通し、俺は……
「く……ぅぅぅ!!」
な、なんの……ォ! これしき!
俺は『ドラゴンキラー』の刃を握った……!
「な……! 貴様! 我がドラゴンキラーを両手で抑え込む気か!! このままだと両手がなくなるぞ!!」
「ああ……そうかもな。けどな、おかげで血塗れになれた!!」
活路は開けた。
そうだ、俺はここで負けるわけにはいかない。コンスタンティンをぶっ潰すためにも! みんなの期待に応えるためにも……!
「血の煉獄!」
血潮が炎となり、レッドスカーフを焦がした。
「うあぁあぁぁ――――――ッ!!」
いまだ!!
『聖槍・エクスカリバァァァアアアアアアアアア――――――!!!!!』
「バカな! その輝きは……アーサーの、どうしてそれを! うああああああああああああああああ!!」
太陽の光に匹敵する黄金の輝き。それは、レッドスカーフに命中し、彼女は遥か彼方まで飛ばされていった――。
「……はぁ、『痛覚遮断』スキルを取っておいて良かったぜ……。ただ、不快感は拭えんが」
「サトル! バカ! 無茶しすぎよ!」
「……なんだ。心配してくれていたのか、メサイア」
「当たり前でしょう。もう、まさかあんな苦戦するだなんて」
「……ああ、俺はレッドスカーフを完全に侮っていた。ヤツは強かった」
「サトルさん! 手、手は……!」
青い顔で駆けてつけてくるアーサー。
「大丈夫さ。フォルが治癒してくれる……」
「も、もうなんて危険な真似を……心臓が止まるかと思いましたよ……」
「はは、今回ばかりは俺の甘さが招いたことさ」
「もう、安静にしていてくださいね。……そういえば、モードレッドは……」
アーサーはモードレッドが気掛かりのようだ。
一応でも、心配はしているんだな。
「大丈夫だ。少しだけ手加減しておいた。死にはしていないはずだ」
「そ、そうですか……。良かった」
「さあ、聖地・モードレッドへ向かおう。その道中で、アイツも拾えるだろ」
「はい……。そうしましょう。決戦の日は近いですからね」
俺たちは『聖地・モードレッド』へ向かう。
◆
聖地まであと少しのところで、レッドスカーフはぶっ倒れていた。
「兄様、あの人……」
「ああ、フォル悪い。あの赤い姉ちゃんを治癒してやってくれ」
「え……いいんですか? また襲ってくるかもしれないですよ」
「いいんだ。それに、レッドスカーフの力は必要不可欠だからな」
「え、そうなんですね。分かりました。それでは……」
治癒をフォルに任せた。
しかし、マーリンのヤツ、本当に無茶を言ってくれる。
「…………っ。わ、私は……」
治癒を受けたレッドスカーフが目を覚ます。
「起きたか、赤いの」
「き、貴様っ! くっ……」
「無茶すんな。エクスカリバーをまともに受けたんだぞ。普通は死ぬぞ」
なんて話していると、
「ねえ、サトル。これどういうこと? なんで、あのモードレッド……いえ、レッドスカーフを助けちゃうのよ」
「うん。実はな、別れ際、マーリンから耳打ちがあってな。モードレッドを仲間に入れろだなんて言ってきやがった。必要なんだってさ」
「そうは思えないけど……」
メサイアは納得いかんとしていた。
まあ、そうだよな。俺だってどうして『聖地・トリスタン』を破壊しようとしたヤツなんかを助けるか分からん。
それに、仲間になるとは到底思えなかった。
「く……アーサー、私に近付くな!!」
そうこうしていると、アーサーがレッドスカーフに近付いていた。
おいおい、危ないぞ。
「モードレッド。僕たちに力を貸してくれないか。頼む、お願いだ。僕との『決闘』なら、その後でいいだろう」
アーサーは頭を下げた。
「……アーサー。……ふん。決闘などどうでもいい。だが、聖地を破壊されては敵わん。コンスタンティンの下衆な目論み、叩き潰してくれようぞ」
「ありがとう、モードレッド」
「違う! 私は『レッドスカーフ』だ。いいな」
「うん、わかった。モードレッド」
「おい、分かってないだろ! アーサー!」
どうやら、仲間に入った(?)ようだ。
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