第136話 聖槍・エクスカリバー
こちらに『ドラゴンキラー』が飛んできているらしい。
いや、それは確かだ。
『千里眼』で見た光景は、間違いなかった。
信じ難かった。
なんだ、あの超巨大な大剣!!
「サトルさん、僕の力を使ってください!」
アーサー少年が訴えかけてくる。
「わ、分かった。だが、どうすりゃいい!?」
「僕の【聖剣】の力をお貸しいたします。ですから、この力を何かの『武器』に付与させて下さい……!!」
それって、つまり――
「まさか【聖剣・エクスカリバー】の力を俺に貸してくれるってことなのか……。アーサー少年、君は……」
「説明はあとです。武器を!」
俺は――そうだな。
『聖槍・覚醒アルメニア』を召喚した。
「こ、これは凄い槍ですね。これ単体でも奇跡に相当するものです。素晴らしい……いえ、見惚 れている場合ではありませんね。では、付与しますね!」
アーサー少年は目を閉じ、唱えた。
おお、なんか知らんが、膨大な力が湧き出始めている……!
「エクスカリバーの力よ……その光を示せ……!!」
「お……おおおおおおおおおお!?」
俺の槍が光っている……。
黄金の光を常に放ち、まぶしいくらいだ。
「おいおい、スゲェな。これじゃ……【聖槍・エクスカリバー】だぜ……」
「その通り。今のサトルさんの槍はまさに【エクスカリバー】そのものです」
マジかよ……そのものって!
なんて力だ……負ける気がまるでせん!
「よし、接近してきているドラゴンキラーを叩き潰す……!」
俺は深呼吸をし――
「っらああああああああ!!!」
思いっきり助走をつけ――――
『聖槍……エクスカリバ――――――――――!!!!!!』
槍をブン投げた。
金の軌道が一直線に引かれていく。
やがて、全てが黄金一色になった。
これが……アーサーの、伝説の剣の力。
【聖槍・エクスカリバー】は、大剣『ドラゴンキラー』と激突。
呆気ないほどに空中分解し、
砕け散った。
それと同時に、大爆発を起こし――
あまりの規模の爆発に、みんな目を覆った。
「うあああああああああああああああああ!!」
……な、なにも見えん!!
・
・
・
『聖地・トリスタン』は守られた。
なにひとつ被害がなく、無事だったのだから壊滅は回避できたようだ。
「やったな、アーサー」
「ありがとう、サトルさん。また聖地を救って戴きましたね」
アーサーは謙遜し、俺の手柄にしたいようだ。なんでだか。
「私からもお礼を言わせて下さい。ありがとう、サトル様」
トリスタン、お前もか。
二人とも感謝でいっぱいだった。なんか照れるつーか……まいっか。
◆ ◆ ◆
「――――――」
レッドスカーフは感じていた。
『ドラゴンキラー』が破壊された――と。
「やりおったな。噂は確か――ということか」
「はあ……。あのレッドスカーフ姫、そろそろ『聖地・トリスタン』へ向かわれましょう」
「そうです。コンスタンティン王のためにも、アーサーを抹殺し、【聖剣・エクスカリバー】を破壊するんです。そうすれば、王は大変喜びになられる」
プロキシマとケンタウリは、姫に必死に説得した。
――――――だが。
「バカか――――――!!」
剣を瞬時に抜いたレッドスカーフは、猛スピードでプロキシマとケンタウリに接近した。そして、剣を振るい――
「ぎゃあああああああああああああああああ!!」
「ぬああああああああああああああああああ!!」
二人を殺害した。
「…………コンスタンティン如きにアーサーは渡さん。それに、ヤツの命運はとっくに尽きている。アレの命は風前の灯。なれば……」
レッドスカーフには、『ドラゴンキラー』を破壊した男の正体の方が気がかりだった。
◆ ◆ ◆
またマーリンの強制【テレポート】が発動した。
今度は『聖地・トリスタン』へ戻ったようだが。
「ん……ここは【大聖堂】の前じゃないか」
俺は、ぽつっとつぶやく。
すると――
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」」」
なんか大歓声が巻き起こっていた。
すごい人の数だ……! いつの間にこんなに集まった!
「何事ですか!?」
リースが俺の分まで、めいいっぱい驚いてくれた。
「どうやら、先ほどの聖地防衛を見られていたようですね」
そうアーサーは説明してくれた。
ま……あれだけド派手にやりゃあ、嫌でも気づくわな。空が黄金に光っていたし。
「あのアンちゃんがやったのか……!」「おお、あのモンスターレースの不正を暴いたヤツか!」「確か、サトルって言うらしいぞ」「噂じゃ、聖者様らしいぞ」「なに! それは本当か! すげえじゃねぇか!」「奇跡じゃ、我々は今奇跡を目の当たりにしているのじゃ!!」「お兄さんカッコイイー! デートしてー!」「きゃああ、今わたしを見た!」「どうしよ……告白したい」
おお……!?
なんか知らんが、俺の良い噂が勝手に広まっていた。
つーか、俺、可愛い女の子たちに大注目されているじゃないか。
しかも、告白だって? ウェルカムだ!
「さーて、どの娘にしようかなぁ……」
などと吟味していれば、メサイアが俺の顔を両手で抑え――
「なっ、なにを」
キスしてきた……。
「…………ふん。こうしておけば、余計な虫が寄ってこないでしょ」
「おまえ、人前でよくもまぁ……恥ずかしいだろうが」
「私だって恥ずかしいわよ。けどね、他の『女神』に取られるくらいならって思ったの!」
「なんだ、あの女の子たちの中に『女神』がいたんだ。ほ~、道理でむちゃくちゃ可愛いと思ったんだよなぁ……んー、惜しいな」
「それ以上、興味を持ったらコロス」
「へい……」
まったく、少しくらい夢を見たって――。
「サトルさん! あたしも!」
「え? リース?」
今度は、リースが飛び込んできて――キスを。
ちょ、おま!
「これで、エルフの女の子は寄ってきませんもんね!」
「……あ、ああ……」
「ああ! リースずるいです。じゃあ、わたくしも! 他の聖女が寄ってこないように、対策を!!」
「フォル、お前はただ単にキスしたいだけだろ!」
「あたりまえです!!!」
「なんでお前は、そんなに欲望に忠実なんだよ、ヘンタイ聖女め!!」
ぴょ~~~んとフォルが飛んでくる。
そして、俺は唇を奪われた。
……いや、いいんだけどね。
「これで他の聖女は寄ってきませんよ!」
「……むぅ」
で、まだ視線を感じた。
そうだな、コイツを忘れちゃならない。
「理くん。なにを期待しているのかな?」
「なんだ、ベルはしてくれないのか。残念」
「いや、そうでもないよ。わたしは毎晩、理くんが寝たあとにしてるから」
「……なぬ!? していたの!? って、前にもそんな事言っていたような……」
うんうん頷いたベル。
でもどうせなら起きている時にしろよな!
なんてことをしていれば――
「あの~、サトルさん」
「どうした、アーサー」
「女性比率が圧倒的に減りましたよ」
「あ……本当だ! ほとんど男しか残っていない……。そんな、俺の夢が!! モテモテの夢がああああああ……!!!」
がっくし…………俺は項垂れた。
「い、いいではありませんか。メサイアさん、リースさん、フォルトゥナ様、ベルさんと美しい面々がいるのですから」
アーサーは俺を慰めてくれる。
優しい少年だなぁ本当。
「アーサー…、ありがとう。キミだけだよ、俺を慰めてくれるのは……ん。よく見たら、アーサーは顔も整っているし、なんか中性的つーか、女の子っぽいよな」
「え?」
「アーサー…、アーサー!!」
「え! えええ!! サトルさん何を!! うあああああああああああああああああああ!!」
「バカ、俺にそんな趣味はねえよ! 冗談だ」
「な……なんだ冗談でしたか……。ほっ」
俺は、アーサーから離れた。
すると、近くにいたマーリンは、慌てて何処かへ【テレポート】しようとしていた。
「まて、マーリン」
「なっ……。あなた、まさか私の【テレポート】をロックして……!」
「まあな。それより、そろそろ話してもらおうか、アーサーのこと。あと、コンスタンティンのこともな」
「ええ……。そのつもりです。これから『コンスタンティン』を討つべく、こちらから反撃を開始します」
なんだって……!?
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