第131話 爆笑の聖戦士
現場は血の海となり、騒然となった。
「なんだこりゃ……あのスタッフ、いきなり血反吐を……」
俺もみんなもただ青ざめるしかなかった。
一体なにが起きたというのか。
「……す、すみません。私は生まれつき体が弱いものでして……この吐血は大丈夫です」
いや、どう見ても大丈夫じゃなさそうな量だったが!?
「……あ! それより、オーナー」
スタッフは話を続ける。
「何事ですか、ネリコ」
「聖地・モードレッドです! 聖地・モードレッドから二人の騎士と……『聖者』が……ごふぁ!! ……『聖者』が…………ぶふぉぁっ!!!」
ネリコという少女スタッフは、吐血しまくりで、話がなかなか進まない。
おい、死ぬだろ普通……。
「……す、すみません。私、貧弱なもので……」
いや、それは聞いたよもう……。
……ん。
まて。
【聖地・モードレット】から二人の騎士と『聖者』?
「まさか……コンスタンティン軍か」
俺は独り言のようにつぶやく、するとイゾルデが――、
「なんてことでしょう。大変なことになりました……私は聖女様と共に『トリスタン』様のもとへ向かいます。ネリコ、こちらの方々を丁重にお返しするのです。いいですね」
「分かりました、オーナー。ごふっ……!!」
フォルは連れていかれてしまった……。
……待ってろ。すぐに連れ戻してやるからな。
「サトル。本当にこれで良かったの?」
「メサイア……。いや、これで良くないな。けどな、ここで暴れたって余計に不利になるだけだ。俺たちは500万プルを払えていないのだからな」
俺とメサイアがコソコソしていると、ベルが耳打ちしてきた。
「理くん。いっそ、フォルちゃんをこっそり奪還した方がいいんじゃない。で、この聖地をさっさと去るの。その方が手っ取り早いでしょ」
「ああ、確かにな。俺もそれを考えていたが……」
「どうしたの?」
「うん。あまりこうは言いたくないんだが」
「うんうん?」
「ムカついたんだよ。あのイゾルデにな」
「――は? はは……ははははっは、なにそれ。おかしい……あははははは!」
ベルは腹を抱えて笑った。大爆笑だ。
うおい!!
いくらなんでも笑いすぎだろ!!
腹筋崩壊してんじゃねーか!! デコピンすっぞ!!
「ベル……お前……」
「あ~、そんな怒らないでよ。だってさ、いつもの理くんだったらさ、もっと冷静な判断していたと思うよ」
「へ……俺、冷静じゃなかったか」
「うん。残念ながらね。キミはちょっと感情的になりやすいからね。あー…なんだか昔を思い出しちゃったよ。……うん、理くんは変わらないな」
昔の記憶を思い出したのか、ベルは感慨深い表情だった。
えーっと……あの、そこ、勝手に思い出に浸らないで戴きたい。俺は、昔の記憶なんて一ミリもないんだからな。
「あのぉ~、サトルさん」
今度は、リースが耳打ちしてきた。
「どうした、リース」
「一度、アヴァロンへ帰りませんか? お金を何とかできると思うので。それに、フォルちゃんのためなら、お金なんて惜しくありませんから……だから」
リース……フォルの為にそこまで……。
そうだな、それが今できる最良の手段かもしれない。
「よし、リース。すまないが、アヴァロンへ……」
……………!!
まて…………。
まてまてまて……。
俺の全身に凄まじい電気がビリビリ走った…………!
まだだ……まだ終わらん。
「あの~、お客様……げぼっ! ……すみませんが、そろそろ……ぶふぁっ」
ネリコが吐血しまくっとるが、そんな事はどうでもいい。
イゾルデ……ヤツの不正の証拠を……あのモンスターレース会場にばら撒いてやりゃいい。
なんで、俺はこのスキルを忘れていたんだ! アホか俺!
さあ……見せてくれ!
真実を――スキル『千里眼』!!
…………。
そうか……やっぱり、不正はあったんだな。
さて、これをどう可視化したものか――うんうん、そうだな。俺には『最高の女神』がついていたっけな。
「なあ、メサイア」
「え……私?」
ポカンと、メサイアは立ち尽くす。
「手始めに……お前の全財産130プルよこせ」
「え…………ええ――――――――――!?」
メサイアは逃げ出した。
逃がさねえええええええええええええ!!!
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